死にかけ英雄譚は黒髪美少女と共に。

まくしみりー

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一章 辺境の黒疾風

05.散らせ、巨龍の栄。

「ほんとに助かった、やっぱ調子乗っちゃダメだなぁ……」

「いえいえ、人助けも狩人の仕事ですから」

 短剣二刀流で茶髪の青年。……短剣の二刀流。かっこいいな、どう戦うんだろう。スピードで翻弄して急所に攻撃、って感じだろうか。

「……なぁ、ユーヤ」

「ん?」

「アルテミアって本当は凄いヤツなんじゃねぇか?」

「そうだな、『加速』を極めすぎた結果だよ」

「あー、道理で」

 店長との戦闘の後、若い店員にアルテミアに秘密でこう言われたのだ。


『彼女の能力については公言しないようにした方がいいかと思います。烈迅の身駆はその魔術の性質自体が何も分からないので何とも言えないのですが、あの蒼い雷は間違いなく藍雷閃の学術。存在と性質の判明はすれど、肝心の中身が全く解明できない完全な未解明学術』

『それを使える時点で、彼女の存在は異質そのもの。……世の中にまだこんな人がいたのかと私も驚いています。彼女──アルテミアさんの事が広く知れてしまったら、間違いなく、あらゆる人を巻き込む大惨事になるでしょう。こちらも情報を秘匿します、ユーヤ様もご協力をお願い致します』


 要約すると、「アルテミアはヤバい奴だから隠せ」ってこと。烈迅の身駆を「加速」に置き換えれば、疑われるようなこともあるまい。

「それにしてもキミ、物凄く速かったな! 何を使ったんだ?」

「烈迅の身──「『加速』だよ!」

 咄嗟に塞いで割り込むように喋った。なぜかはもう分かるだろう?

「加速か……。僕も練習してはいるんだけど、中々速くならなくてね。店長に負けてばかりだよ……」

「へぇー、そうなのか。まぁ店長は強いからな。頑張れよ」

 うむ、危なかった。あと少しでまた変に疑われる所だった。……塞いでいた腕を離し、なんとなく空を見上げてみる。

「ア、アルテミアさん!」

「けほっ、なんでしょう?」

「学術が上手く出来るようになるためにはどうすればいいんですか!?」

 平均的学術使い、ラニーちゃんが口を開いた。その言葉に対し、アルテミアは顎に手を当ててしばし考える。

「うーん……うぅー……よく分からないです。小さい頃から無意識で使っていたので」

「無意識で!?」

「えぇ、まぁ」

「そんなぁ……」

 彼女達の会話を傍らに聞きながら、もう一度上空を確認する。……んん、あの巨大な影は一体。翼と尻尾、ということは飛竜か? 

「お、おいラニー、あれ……」

「ふぇ? ──あっ」

 雲の上から透けて見える。それほどの高さに居るのに一目で分かる尋常ではないほどの大きさ。




「アルタードレイゴスが出たぁああ! 逃げろぉぉお!」

「う、嘘でしょ!? 国が終わっちゃうよ!」

「クローバーと店長を! 早く! 呼んできて!」

「烏合の衆にも連絡しろ、他の狩人も全部!」



「ユーヤ、アルテミア、ラニー、あとそこのアンタ! 早く逃げるぞ!」

「え、なんで?」

「他の皆を見て分かんねぇのかよユーヤよぉ! アルタードレイゴスはなぁ、たまーに目を覚ます超巨大竜、その度に大災害が起きて色んな所が被害を受けてる! 本気出したら世界が終わるバケモンなんだぞ!」

「へぇー……。本に書いてあったのは覚えているのですが、本当に存在していたんですね!」

「呑気な事言ってる場合か!」


 竜、竜か! やっぱり、あれは竜なんだな! アルタードレイゴスっていう竜なんだな! うっひゃー、興奮してきたぁ!


「ユーヤさん、逃げますか?」

「いや。ちょっと試してみたいことがある」

「はぁあ!? 死ぬぞお前!」

「み、みんなもう逃げてます、はやくしないとっ……」

「そうだよ! いくら君達が強くてもあの竜には勝てっこない! Ⅰ級狩人が集団で戦って誰も帰ってきてないんだぞ!」

 焔の学術……あまり効かなそうだな。竜は火を吐くのが通例だし。

 嵐の学術……大規模な範囲攻撃ができるけど、敵は一体のみ。効果があるとは思えない。

 烈迅の身駆……そもそも相手の場所が高すぎる、論外。

 となるとやっぱり、藍雷閃の学術しかないわけか。


「ふー……よし、行くか」

「何をするんです?」

「藍雷閃で落とせないかなーって思って」

「いいですねそれ、私も協力します!」

「おう、頼む」

 

「は? 藍雷閃? おい、ユーヤ」

 
「あっ……ちょっと静かにしててくれるか?」

 しまった、口が滑った、……まぁ、「極めた」とでも言えば何とかなるだろう。さて、学術を使うにはどうすればいいのか。えーっと、詠唱? 無理、アルテミアから共有された知識に詠唱はない。じゃあ指で魔法陣を描いてみよう。人指し指でスーッと──あれっ!? 描けない!? なんで!? クソ、何か他に手段は──


 
 
 ……イメージ、そう、イメージだ。そうだよ、「イメージ」があった。現代世界じゃ全く役に立たないファンタジー知識がここで活きてきたな。

 ──イメージ先は店長と戦ったときのアルテミアのアレ。蒼い雷の槍。だがあれでは細すぎる。あの巨大な飛竜を倒すにはもっと、もっと巨大な槍が必要だ。

 
 もしかしたら貫くだけじゃ倒せないかもしれない。竜の体に「刺さり」、槍が爆発する。巨大な雷の槍が刺さり、爆発する。竜の内部から破壊できる。これなら倒せるな。 
 
 なら「刺さる」ようにするにはどうすればいい? ……恐らく「返し」が必要だ。ならば形はトライデント。巨大な雷のトライデントだ。




 巨大な雷のトライデントが、竜の体に刺さり、爆発し、体内にダメージを与える。




 想像しろ。自分はどうやって発射する。発射された槍はどんなスピードで竜に刺さる。





 
「つっ……」



 全てがイメージし終えた時、頭に鋭痛が走った。


「こっちに向かってるぞ! ユーヤ、アルテミアァァア!」


 知ったことか。邪魔をするな。


 右足を大きく踏み込んで地に着ける。そして上半身を後ろに捻る。左手を竜にかざし、狙いをつけた。利き手である右手は天高く。


「ユーヤさん、行けそうですか?」

「あぁ、大丈夫だ。『せーの』で撃つぞ、遅れるなよ」

「心配は要りませんよ」


 構え終わった瞬間、先ほどイメージしたものが右手に現れる。バリバリと、アルテミアのソレの非ではない程のスパークが弾ける。トライデント自体の光によって周囲が青白く、ぼんやりと輝く。








「「せえぇぇ……」」








「「のっ!」」





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