死にかけ英雄譚は黒髪美少女と共に。

まくしみりー

文字の大きさ
5 / 10
一章 辺境の黒疾風

05.散らせ、巨龍の栄。

しおりを挟む
「ほんとに助かった、やっぱ調子乗っちゃダメだなぁ……」

「いえいえ、人助けも狩人の仕事ですから」

 短剣二刀流で茶髪の青年。……短剣の二刀流。かっこいいな、どう戦うんだろう。スピードで翻弄して急所に攻撃、って感じだろうか。

「……なぁ、ユーヤ」

「ん?」

「アルテミアって本当は凄いヤツなんじゃねぇか?」

「そうだな、『加速』を極めすぎた結果だよ」

「あー、道理で」

 店長との戦闘の後、若い店員にアルテミアに秘密でこう言われたのだ。


『彼女の能力については公言しないようにした方がいいかと思います。烈迅の身駆はその魔術の性質自体が何も分からないので何とも言えないのですが、あの蒼い雷は間違いなく藍雷閃の学術。存在と性質の判明はすれど、肝心の中身が全く解明できない完全な未解明学術』

『それを使える時点で、彼女の存在は異質そのもの。……世の中にまだこんな人がいたのかと私も驚いています。彼女──アルテミアさんの事が広く知れてしまったら、間違いなく、あらゆる人を巻き込む大惨事になるでしょう。こちらも情報を秘匿します、ユーヤ様もご協力をお願い致します』


 要約すると、「アルテミアはヤバい奴だから隠せ」ってこと。烈迅の身駆を「加速」に置き換えれば、疑われるようなこともあるまい。

「それにしてもキミ、物凄く速かったな! 何を使ったんだ?」

「烈迅の身──「『加速』だよ!」

 咄嗟に塞いで割り込むように喋った。なぜかはもう分かるだろう?

「加速か……。僕も練習してはいるんだけど、中々速くならなくてね。店長に負けてばかりだよ……」

「へぇー、そうなのか。まぁ店長は強いからな。頑張れよ」

 うむ、危なかった。あと少しでまた変に疑われる所だった。……塞いでいた腕を離し、なんとなく空を見上げてみる。

「ア、アルテミアさん!」

「けほっ、なんでしょう?」

「学術が上手く出来るようになるためにはどうすればいいんですか!?」

 平均的学術使い、ラニーちゃんが口を開いた。その言葉に対し、アルテミアは顎に手を当ててしばし考える。

「うーん……うぅー……よく分からないです。小さい頃から無意識で使っていたので」

「無意識で!?」

「えぇ、まぁ」

「そんなぁ……」

 彼女達の会話を傍らに聞きながら、もう一度上空を確認する。……んん、あの巨大な影は一体。翼と尻尾、ということは飛竜か? 

「お、おいラニー、あれ……」

「ふぇ? ──あっ」

 雲の上から透けて見える。それほどの高さに居るのに一目で分かる尋常ではないほどの大きさ。




「アルタードレイゴスが出たぁああ! 逃げろぉぉお!」

「う、嘘でしょ!? 国が終わっちゃうよ!」

「クローバーと店長を! 早く! 呼んできて!」

「烏合の衆にも連絡しろ、他の狩人も全部!」



「ユーヤ、アルテミア、ラニー、あとそこのアンタ! 早く逃げるぞ!」

「え、なんで?」

「他の皆を見て分かんねぇのかよユーヤよぉ! アルタードレイゴスはなぁ、たまーに目を覚ます超巨大竜、その度に大災害が起きて色んな所が被害を受けてる! 本気出したら世界が終わるバケモンなんだぞ!」

「へぇー……。本に書いてあったのは覚えているのですが、本当に存在していたんですね!」

「呑気な事言ってる場合か!」


 竜、竜か! やっぱり、あれは竜なんだな! アルタードレイゴスっていう竜なんだな! うっひゃー、興奮してきたぁ!


「ユーヤさん、逃げますか?」

「いや。ちょっと試してみたいことがある」

「はぁあ!? 死ぬぞお前!」

「み、みんなもう逃げてます、はやくしないとっ……」

「そうだよ! いくら君達が強くてもあの竜には勝てっこない! Ⅰ級狩人が集団で戦って誰も帰ってきてないんだぞ!」

 焔の学術……あまり効かなそうだな。竜は火を吐くのが通例だし。

 嵐の学術……大規模な範囲攻撃ができるけど、敵は一体のみ。効果があるとは思えない。

 烈迅の身駆……そもそも相手の場所が高すぎる、論外。

 となるとやっぱり、藍雷閃の学術しかないわけか。


「ふー……よし、行くか」

「何をするんです?」

「藍雷閃で落とせないかなーって思って」

「いいですねそれ、私も協力します!」

「おう、頼む」

 

「は? 藍雷閃? おい、ユーヤ」

 
「あっ……ちょっと静かにしててくれるか?」

 しまった、口が滑った、……まぁ、「極めた」とでも言えば何とかなるだろう。さて、学術を使うにはどうすればいいのか。えーっと、詠唱? 無理、アルテミアから共有された知識に詠唱はない。じゃあ指で魔法陣を描いてみよう。人指し指でスーッと──あれっ!? 描けない!? なんで!? クソ、何か他に手段は──


 
 
 ……イメージ、そう、イメージだ。そうだよ、「イメージ」があった。現代世界じゃ全く役に立たないファンタジー知識がここで活きてきたな。

 ──イメージ先は店長と戦ったときのアルテミアのアレ。蒼い雷の槍。だがあれでは細すぎる。あの巨大な飛竜を倒すにはもっと、もっと巨大な槍が必要だ。

 
 もしかしたら貫くだけじゃ倒せないかもしれない。竜の体に「刺さり」、槍が爆発する。巨大な雷の槍が刺さり、爆発する。竜の内部から破壊できる。これなら倒せるな。 
 
 なら「刺さる」ようにするにはどうすればいい? ……恐らく「返し」が必要だ。ならば形はトライデント。巨大な雷のトライデントだ。




 巨大な雷のトライデントが、竜の体に刺さり、爆発し、体内にダメージを与える。




 想像しろ。自分はどうやって発射する。発射された槍はどんなスピードで竜に刺さる。





 
「つっ……」



 全てがイメージし終えた時、頭に鋭痛が走った。


「こっちに向かってるぞ! ユーヤ、アルテミアァァア!」


 知ったことか。邪魔をするな。


 右足を大きく踏み込んで地に着ける。そして上半身を後ろに捻る。左手を竜にかざし、狙いをつけた。利き手である右手は天高く。


「ユーヤさん、行けそうですか?」

「あぁ、大丈夫だ。『せーの』で撃つぞ、遅れるなよ」

「心配は要りませんよ」


 構え終わった瞬間、先ほどイメージしたものが右手に現れる。バリバリと、アルテミアのソレの非ではない程のスパークが弾ける。トライデント自体の光によって周囲が青白く、ぼんやりと輝く。








「「せえぇぇ……」」








「「のっ!」」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~

イチイ アキラ
ファンタジー
生まれ変わったら飛べない鳥――ペンギンでした。 ドラゴンとして生まれ変わったらしいのにどうみてもペンギンな、ドラゴン名ジュヌヴィエーヴ。 兄姉たちが巣立っても、自分はまだ巣に残っていた。 (だって飛べないから) そんなある日、気がつけば巣の外にいた。 …人間に攫われました(?)

処理中です...