目は口より愛を語る

こうらい ゆあ

文字の大きさ
3 / 22

3

しおりを挟む
「パパ、お父さんってやっぱり王子様だったんだね!」
学校から大慌てで走って帰ってきて、興奮が冷めないまま大好きなパパに抱き着いて報告した

肩で息を切らし、耳まで真っ赤になりながらも、目はキラキラと輝いていたと思う
今まで知らなかった大発見をしてしまったから
大好きなお父さんの秘密を知ってしまったから
絶対、パパも驚いてくれるって思っていたから


小学校の帰り道、少し離れた場所に見えるメルヘンなお城
遊園地みたいなキラキラした場所で、学校の帰り道とは違う方向だから近くに行ったコトがない
でも、帰り道に遠くに見えるお城を友だちと眺めながら、どんなアトラクションがあるんだろう?って遠目に見てワクワクしていた

ジェットコースターとかあるかな?
プールは?メリーゴーランドは?
もしかしたら、鏡がいっぱいの迷路とかもあるかも!

友だちとどんな乗り物やアトラクションがあるのか、こんなのあればいいな!っていつも話していた場所

いつか連れて行って貰いたくて、幼かった僕は何度も両親に「連れて行って」とお願いしては困らせていた場所


いつもよりちょっとだけ早く学校が終わって、何となく今日はまだ帰りたくなくて…
友達と別れた後、コッソリお城の前を通って帰ることにした

いつも通る道とは違う景色
知らないお店屋さんの隣を通って、初めて会った猫と遊んで、急な坂道を息を切らしながら登った
遠くに学校の校庭が見えて、なんとなく上級生のお兄ちゃん達が走っているのが見えた

空も青くて、ソフトクリームみたいな雲や飛行機雲が見えて…
僕にとっては大冒険だった
目指すはお城の遊園地!
中に入るのは子どもだけじゃダメだから、そっと入り口から中を覗くだけ
次にお父さんとパパと3人で来た時に、どんな乗り物に乗りたいのかすぐに言えるようにするために、ちょっとだけ覗くだけ…


小高い丘の上にやっと辿り着き、額から流れ落ちる汗を腕で拭う
お城の門には、カーテンみたいな布みたいなモノが掛かっていて何だか思っていた感じとちょっと違った
軽やかな音楽や楽しげな声は聴こえてこない

「遊園地じゃないのかな?」
残念な気持ちになりながらも、中を覗こうと柱の影に立って中を覗く
奥には何台か車があるだけで、それ以外はわからなかった

「お城の中に入らないとわからないのかな?せっかくここまで来たのに…」
唇を尖らせて拗ねていると、一台の車が門から出て来た

見たことのある車
僕の家の車と同じ、夜空のような深い青色の車
僕が「この色がいい!」ってお父さんに言って、二人で選んだ車

何となく、見つかっちゃダメだって思って、建物の周りの植木にしゃがんで隠れた
隠れて、コッソリ車を見ていた

車の運転席を見て僕はビックリしちゃった
お父さんにそっくりな人が運転していたから…
お父さんはお仕事に行ってるはずだから、お城には居ないはずなのに…
お父さんのお仕事の会社はココじゃないはずなのに…

驚いて目をまん丸くして、去って行く車を見つめた
「ん~……すっごい!お父さんすごいっ!!」
お父さんがお城から出て来たことに僕は興奮していた
何だかドキドキして、ワクワクして…
早く帰ってパパに教えてあげなきゃっ!って思ってたんだ

この時、僕は何も分かってなかったんだ

此処がどういう場所で、助手席に座っていた知らない女の人が、お父さんとどういう関係だったのか…
お父さんが何をしていたのか…
小学生だった僕には、何もわからなかった

ただ、今度ココに僕とパパを連れて行ってくれるんだって思っていた
今日はきっと遊びに行く前の下見で、家族三人で遊びに連れて来てくれるんだっ!って…
きっと近々あの憧れの場所に連れて行ってくれるんだっ!って期待していた
だから……走って家に帰ったんだ

期待で目を輝かせながら、息を切らしながらも、パパに抱きついてそのコトを話したんだ
きっと、パパも喜んでくれるって信じてたから…
パパも「楽しみだね」って嬉しそうに笑って言ってくれるって信じてたから…



でも…パパは僕の話を聞いて、目を見開いて驚いていた
僕が「お城まで行って見たんだ!」って言ったら、何故かポロポロと涙を流して泣き出しちゃって…
悔しそうに唇を噛み締めて、畳んでいた洗濯したてのお父さんのワイシャツをギュッて握り締めて…
声を出さずに泣いていた


サプライズだったのかもしれない
僕に見つかっちゃダメだったのかもしれない…
僕が寄り道をしちゃったから…
パパに先に言っちゃったから…


パパは、泣いた後何も言わなかった
黙々と洗濯物を片付けて、僕と二人だけで晩御飯を食べた
いつもだったらお父さんが帰って来るのを待つのに…
二人っきりでご飯を食べて、いつもより早くお風呂に入った

それから、「ごめんね。お父さんとお話し合いしなきゃいけないから、先に寝てて」
笑ってるのに、今にも泣きそうな顔でお願いしてきた
「ごめんね。出来たら、耳をギュッて手で押さえてて…怖い声、聞こえちゃうかもしれないから…」
僕の両耳に手を添えて、何度も「ごめんね」って言って寝室の扉を閉めた



僕が寝ている部屋の隣で、パパとお父さんは喧嘩してた
パパがすっごく怒って泣いてる声が聞こえた

僕は悲しくって、パパとお父さんが喧嘩してる声を聞きたくなくて、パパの言いつけ通り両手で耳を塞いでいた
でも、パパの泣く悲しい声がずっと聴こえてくる
お父さんの怒鳴り声が怖かった

いつも優しいお父さんの声とは全然違った

頭から布団を被って、何度も「ごめんなさい」って謝ったけど、喧嘩の声は酷くなるばかりで…
泣きながら早く仲直りしてくれるのを願った


ごめんなさい
僕が、サプライズを邪魔しちゃったから…
ごめんなさい
僕が、パパに秘密を教えちゃったから…
ごめんなさい
僕が、お城に行っちゃったから……
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

婚活アプリのテスト版に登録させられたら何故か自社の社長としかマッチング出来ないのですが?

こたま
BL
オメガ男子の小島史(ふみ)は、ネットを中心に展開している中小広告代理店の経理部に勤めている。会社が国の補助金が入る婚活アプリ開発に関わる事になった。テスト版には、自社の未婚で番のいないアルファとオメガはもちろん未婚のベータも必ず登録して動作確認をするようにと業務命令が下された。史が仕方なく登録すると社長の辰巳皇成(こうせい)からマッチング希望が…

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

白花の檻(はっかのおり)

AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。 その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。 この出会いは祝福か、或いは呪いか。 受け――リュシアン。 祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。 柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。 攻め――アーヴィス。 リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。 黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。 王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

処理中です...