冷たい檻の中のΩくん

ゆあ

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冷たい檻の中のΩくん

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窓から見える中庭で、仲睦まじく寄り添う二人が見える
僕と彼も、あんな風だったのに、な…

左腕には血が滲んだ包帯が巻かれ、両手首はそれぞれベッドの端の拘束具に繋がれている
度重なる自殺未遂の末、このベッドに拘束されてどれくらい経つだろう

舌を噛み切ろうとしたのが先日見つかり、猿轡をされてしまった
舌を噛み切っても死ねないというのは、こないだ先生に言われたからもうやらないのに…

こんな、無意味な生なんて、早く終わらせたいのに…



「一条さん、起きてますか?」
担当医が声を掛けてくるのをめんどくさいと思いながら視線だけ向ける

爽やかなイケメン
普通の病院なら人気なんだろうな…
こんな、死にかけしか居ない、Ω専用の精神病棟じゃなければ…

「今日は良い天気ですね
先週は大雨の日も多かったから、気が滅入っちゃいますよ
あ、カテーテルも交換しますね」

明るく話しかけてくるのを無視して、外を眺める

晴れていようが、雨だろうが、台風だろうが、この部屋から出ることも許されない人間が外のことを言われても興味がない

早く、早く…死んでしまいたい


「今日も顔色が悪いね
また死にたくなってるんでしょ?
発情期ヒートもそろそろだろうから、その時はいつもの部屋に移動しましょうね」

僕の頭を撫でる手が気持ち悪い
誰にも触られたくない
彼、以外…誰にも触られたくないのに…






「一条センパイ、俺と付き合ってくれませんか?」
βだった彼
背が高くて、いつも一生懸命で、僕に懐いてきていた2個下の彼
彼からの告白は本当に嬉しかった

二つ返事で交際がスタートし、少ししたら同棲も始まって、仕事も私生活も順風満帆って感じだった

彼が営業部に転属してからも、帰宅時間は少し違っても週末の休みにはいつもデートに行ったり、二人で家でゴロゴロしたり…
本当に、一緒に居るだけで幸せで、このままずっと続くんだと信じていた



「んっ…大丈夫だから、キツめに噛んで…痕、ずっと残るようにして…」
発情期ヒートが来ると、いつも頸を噛んで貰う
番にはなれないけど、僕が陽太のモノって印を身体に刻みたくて…
何度やっても消えてしまう印だけど、発情期ヒートの度に番になれる喜びはあった

彼の服で巣作りをし、満たされるまで何度も何度も、中に出して貰えて…



「βとΩでも子供って出来るらしいよ。
樹に似た子とかめちゃくちゃ可愛くって、性別関係なく結婚するって言われたら揉めそう」
子供好きの彼から言われる将来の夢に、つい笑ってしまった
βとΩでは妊娠出来る確率は本当に少ないけれど、ゼロではない
いつか、番としては難しいけれど、結婚して家族3人で幸せな家庭を作ろうって2人でよく話していた






「一条さん、おはようございます。
そろそろ発情期ヒートが来そうだから、今日の午後から部屋を移動しましょうか?
10日程部屋を取ってるので、欲しいモノとか使って欲しい道具とかあれば言ってくださいね」

担当医である佐藤の爽やかな笑顔が気持ち悪い

「抑制剤」

欲しいモノと言われ、素気なく外を眺めながら薬だけを所望する

「それはダメだよ。一条さんの身体に負担が掛かっちゃうからね
オレの心配をしてくれるのは嬉しいけど、ちゃんと樹の為に仕事の調整も出来てるし、安心していいよ」

僕を頭の先から指の先まで舐めるように見つめる視線が気持ち悪い

「今回もオレがずっと一緒にいるし、樹が満足するまでしっかり相手をするから安心していいよ
午後から移動するからそれだけ、忘れないようにしてね」


ヒラヒラと手を振って出て行く彼を睨みつける
此処に僕が来て、もうすぐ1年が過ぎようとしていた
「陽太、忙しいのかな…もうすぐ、発情期ヒートが来ちゃうよ…」







彼の帰りが遅くなることが増え、一緒に食事をする頻度も減ってしまった
営業部でも頑張っていて、周りからも期待されているという噂を聞いている
「おかえり、お疲れ。ご飯出来てるけど食べれそう?」
日付けが変わる少し前に帰って来た陽太
疲れているだろう彼の為に夕飯を用意して、陽太と少しでも話しがしたくて、どんなに遅くなっても起きて待っているようにした

「ん~、接待だったから食事はいいや。疲れたし、風呂入ってくる」
今日も作った料理には一切手を付けて貰えず、そのまま残されて僕のお弁当になる
陽太のお弁当も作ろうか?って聞いたら、出先で食べれない日が多いからって言われたから僕一人分だけ…

いつからだろう、最近はこんな日ばかりで、休みの日も一人で居るのが当たり前になったのは…

彼の脱いだスーツをハンガーに掛けていると、知らない甘い香りがする
香水変えたのかな…

「陽太、香水変えたの?この香りもいいね
もうすぐ発情期ヒートが来ちゃうから、また陽太の服貸してね
休みはいつ頃取る?」
お風呂から上がってきた彼に微笑み、次の発情期休暇について提案する

僕のことを一瞬見て考え込み、疲れているのか溜息を付いて僕に背を向けて寝始めた

「ごめん、疲れてるよね…。おやすみ」






「おめでとうございます!もうすぐ12週目で安定期に入りますよ」
嬉しかった
ずっと、ずっと憧れていたこと
やっと、陽太の夢を叶えてあげれた!

嬉しくって、病院で泣いてしまい、看護師さん達からもお祝いして貰えて、嬉しくて更に泣いてしまった
早く、早く、陽太に報告したい
やっと家族が増えるんだ!

結婚するのは後になっちゃったけど、これを機に一緒になろうって僕からプロポーズしよう!

その日は役所に寄ったり、いつもより豪勢な食事を作ったり、彼に喜んで貰えるよう、忙しなく準備をした

『伝えたい事があるから、絶対、今日は早めに帰ってきて』

最近は休日でも仕事に出ないと行けない陽太にお願いメールを送る
返信はないけれど、きっと見てくれてるはず
もしかしたら、ちょっと期待して何か買ってきてくれたりするかな?
「早くパパに教えてあげたいな…」
優しくお腹を撫でながら、まだ鼓動もわからない愛しい存在を確かめる




「はぁ…もうすぐ、11時…何かあったのかな…」
連絡を入れたのに、一向に返信が来ず、冷め切ってしまった料理にラップをしていく
「どうしよう、事故とか事件に巻き込まれててたら…」
不安になりながらお腹を摩り、ただひたすら彼の帰りを待つ

深夜1時を過ぎてやっと彼が帰ってきた
「陽太!遅いよ!!何かあったの?大丈夫?怪我とかしてない?」 
彼の安否を確認し、ホッとしていると何処か怖い雰囲気で「話しがある」と言われた


「別れて欲しい」


信じられない言葉に思考が回らない
「え?冗談だよね?笑えないよ」
「彼女に子供ができた」 

頭が真っ白になっていく

彼女?子供?何、言ってるの?

「俺が子供好きって知ってるだろ?
βの俺とΩの樹では、やっぱり難しいし、俺の事をいつも支えてくれる彼女と一緒になりたい
だから、別れて欲しい」

お腹が痛い…
頭がガンガンする…
気持ち悪い…
お腹が、ズキズキして…




「残念なお知らせですが、お腹の子はもう…」
陽太からの別れ話の後、倒れたらしい
病院で言われたことは、精神的ストレスによりお腹の子は流産してしまった事実

12週未満だったこともあり、お腹の子の死亡届もない…
僕には、もう何も残っていなかった…


あれから、何度も何度もリストカットや薬を飲んで死のうとしたのに、全て失敗に終わってしまった
度重なる自殺未遂が原因で、このΩ専用の精神病棟に隔離


僕が生きていても、仕方ないのに…






発情期ヒートのΩを隔離する部屋
他の病棟からも離れており、匂いや声が外に漏れないように強固に造られ、他から隔離された部屋

佐藤に車椅子に乗せられ、その部屋に連れて来られるのももう何度目だろう…

「オレも今日からずっと一緒に居れるようにしたから、安心していいよ」
部屋の扉を閉め鍵をかけられると、佐藤のαのフェロモンの香りがする
「樹も早く愛し合いたいでしょう?いつもの誘発剤を飲んで、今回もドロドロになるまで愛し合おう」

逃げたくても筋力の落ちた身体では逃げれないし、αのフェロモンのせいで動けない

口移しで誘発剤を飲み込まされ、すぐに発情期ヒートが強制的に起こる
濡れたくないのに、アナルは濡れ始めヒクつくのがわかる

心と声は嫌だと叫んでいるのに、身体はαを求める

「んぐっ…嫌だ!!触るな!はぁっ…はぁっ…お前なんて、嫌いだ!!嫌いだ!僕に触るな!!」
必死に抵抗してもペニスは勃起して先走りを垂らし、ズボンにシミが出来て行く

「樹、服脱ごうね。空調もしっかり管理してるから寒くないし、汚れちゃうから」
服を剥ぎ取られ、ベッドに連れて行かれる
身体に力が入らないのに、ナカを早く犯して欲しいと身体が訴える


「樹の身体はもうオレを受け入れる準備が出来ているね
そんなに早くオレのが欲しいって言わなくても、すぐにいっぱい注いであげるよ」
胸の突起を口に含まれ、舌で転がすように弄られると熱い吐息が漏れてしまう
アナルに指を当てがわれると簡単にクチュッと音を立てて指を簡単に飲み込み、もっとと言うように締め付ける

「気持ち悪いっ!抜けっ!抜けよっ!」
口では嫌だと叫んでも、身体はもっとと言うように愛液を垂らし、咥えた指を離さない


指を抜き差ししてナカをゆっくり解し、指を増やされていく
時折乳首を噛まれるとビクンッと身体を震わせる

「いやぁー!陽太っ!陽太っ!助けっ…」
叫んでも口付けで声を抑えられ、前立腺を潰すように擦られると簡単に射精してしまう


「いっぱい出たね。樹の好きなところ、オレはいっぱい知ってるから何回でもイッていいよ」
イッたばかりのペニスを咥えられ、舌を絡められたり、吸われたりするとすぐにまた勃起し、何度も甘イキを繰り返す

「ひぃうっ!やだっ!やらっ!やらぁっ!!」
首を横に振って快楽から逃げようとするも、腰をがっしり掴まれて逃げる事ができない
フェラされながらもずっとナカを指で犯され、指を抜かれるころにはトロトロに溶かされヒクついてもっと太いモノを挿れて欲しそうにしている


「あ、元カレ、前回の発情期ヒートの時期に、子どもが産まれたって連絡があったよ。可愛いΩの奥さんと可愛い子どもと3人で幸せになるから、樹もオレとお幸せにって言ってたよ」

何度もイカされ、酸素の回らない頭でも言われた事がわかった…

Ωが嫌だって言ってたのに…
僕が男だから?
女の子じゃないから…?
ずっと、一度も来てくれなかったのに…
アイツにはなんで…

スゥーっと、心が死んでいくのがわかる

抵抗する力もなくなり、涙だけが止め処なく溢れ出る

「樹、愛してるよ」
太く熱い塊がアナルに押し込まれる
身体がぶつけられる音が室内ぬ響くほど、何度も腰を打ち付けられ、奥に白濁を注ぎ込まれる

「うっ…んああぁっ!ひっ…やぁああぁっ!!」
何度目かの精液を吐き出し、ガクガクと痙攣する

不意に首のチョーカーを外されるのがわかり、頸を隠すように手で押さえて抵抗するも、イキ過ぎて疲れ切った身体では簡単に手を退けられ、頸を噛まれてしまう
「いっ!!?イヤァァァァッ!!」
全身に甘い痛みが走る
嫌なのに、嫌いなのに、身体は番になるのを喜んでしまう

「樹、これでキミはオレのモノだよ。愛してる。あのニセモノとは違って、オレが一生大切にしてあげる。子どももいっぱい作ってあげるよ
オレだけの愛しいΩ」

抜かれぬまま腰を打ちつけられ、室内には僕の鳴き声と肌がぶつかる音だけが響きわたる
いつ終わるのかもわからない強烈な快楽
身体をこのαだけのモノに変えられていく不快感

泣いても、鳴いても、失いても、終わりのない時間



7日間、朝も夜もなく好きなように犯される
そんな発情期ヒートがやっと終わり、明け方までドロドロに犯されたせいで精液や愛液、色々なモノで汚された身体をシーツを羽織って隠す

ベッドからふらふら抜け出し、鏡に向かって歩き出すとナカに出された精液が脚をツゥーと垂れてくる感覚が不快感でならない
身体が軋むように痛むのを堪え、鏡に映る自分の姿を見て涙が溢れる
頸にはいくつもの歯型がくっきりと付き、全身至るところにキスマークと歯型、拘束された痕が痛々しい

「早く、殺して欲しい…」

終わらない地獄に自嘲的に笑っていると、背後からふわりと優しく抱きしめられる

「樹、大丈夫?昨晩もいっぱい愛し合ったから身体がツラいだろ?ほら、こっちにおいで。またいっぱい注いであげるから
樹、愛してるよ」



逃げられない檻の中で、艶かしい嬌声だけがいつまでも響いていた
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みんなの感想(1件)

カミヤルイ
2023.12.09 カミヤルイ

こちらかなり性癖でした。
何もかも、ベータの陽太のキャラさえ好きすぎる。
闇の多さに乾杯🍻

ゆあ
2023.12.09 ゆあ

カミヤ ルイ先生、闇BLイケる人だったのか∑(゚Д゚)
陽太、何気にクズです笑
気に入ってもらえて嬉しいです♪

解除
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