ドラゴン・キル・ソード

空野 一春(あくや ひとはる)

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3話「地獄の特訓」(11)

「さぁ、ジャック。大剣を持て。今から1週間以内にここにあるドラゴンの木を全て切り倒すんだ。全部で1000本だ。もしできなかったらドラゴンキラーは諦めろ」

子供ドラゴンとの鍛錬を終えてから約1時間後。俺はドログさんと一緒にとある山奥にやってきていた。人気どころか動物の気配さえまったく感じられない。

(なんか、毎回諦めろって同じ事を言われてる気がするな......)

「この木はドラゴンキラーの修行の為に私が全て植えた木だ。とりあえず普通に1本切ってみろ」

「はい」

俺の前には大量の金色に輝いたよく見る太さの木がズラリと並んでいる。俺は近くにあった木に大剣を持って近づく。

そして、腰に大剣を構えた。

「よし、早くこの修行終わらせて次の段階に行くぞ!」

そして俺はそのまま横に構えた大剣を目の前にある木に向けて精一杯に叩く。しかし、黄金に輝く木は無傷で俺の大剣を止めた。

「き、斬れない!?なんだこの木は、皮すら切れていない!硬すぎる!」

「わかったか?それが今のお前の実力だ。つまりどれだけドラゴンの攻撃を交わせても討伐が出来なければ剣士にはなれない。今のお前はただの逃げ足が早いだけの役立たずだ」

(そ、そんな。あんなに必死に鍛えたのに。ここで諦めてたまるか!)

俺は再び大剣をドラゴンの木に向かって何度も叩き続ける。しかし半日経っても皮に傷一つつけられない。

「なんで?どうして?夕日が沈んでも1本も切れない......」

俺は大剣を力一杯、100回以上も叩き付けた。しかしついに体力が尽きて、大剣を地面に突き刺して、そのまま地面に倒れ込む。身体中は知らない間に汗まみれになっていた。するとドログ師匠がため息を吐いて、俺に声をかける。

「お前はまだ大剣をまったく扱い切れていない。まぁまだ初日だ。斬れなくても仕方ないな」

そしてドログさんは歩き始めた。

「とりあえず今日はこれで終わりだな。早く家に帰るぞ」

「は、はい......」

俺はとりあえずゆっくりと起き上がり立つ。そして自分の包帯を巻いた右手を見つめる。

(俺は今のままで、本当にドラゴンキラーになれるのか?)

俺は焦る気持ちを深呼吸と額の汗を服の袖で拭って無理矢理に落ち着かせた。

「とりあえず今日はもう精一杯やったんだ。ゆっくり家に帰って休もう」

俺は大剣を左手で引きずりながらドログさんと一緒に家に帰る。そして、またマネラさんの食事を動物のように貪り尽くしていた。

「ジャック、今日の料理はどうかな?味は薄くない?」

「はひ、ほへもおひしいせす」(はい、とてもおいしいです)

「それなら良かった。今日もたくさん食べてね」

マネラさんは満遍の笑みで俺の汗臭い頭を優しく撫でてくれた。

「ふひ、はひはほうごはいまふ」(はい、ありがとうございます)

しかし、今日は珍しくドログさんも食卓にいた。そして自分の目の前で木のコップに入った酒を飲む。

「めふはひいふてふね、ひっひょひひょふひほふりはふて」(珍しいですね、一緒に食事をするなんて」

「食いながら喋るな。汚い」

「確かに!ジャックがここに来てからもう半年が経つけど、アナタが一緒に食事をするのは初めてだわ!一体どうしたの?」

「今日はお前に伝えたい事がある、ジャック」

真剣な表情でドログさんはそう言った。俺は喉を詰まらせる前提で、口に入れた肉を無理矢理飲み込みドログさんに尋ねた。

「な、なんですか?」

すると、普段よりも優しい眼差しで自分に突然こうあっさり言ってきた。

「お前はドラゴンキラーを諦めろ」

俺はドログさんの突然のその発言にびっくりして両眼を大きく見開く。

「なんでですか?」

「な、何を言ってるの貴方。修行は順調なんでしょ?」

俺とマネラさんが同様しながら尋ねる。そしてドログさんは机に木製のコップを置いて下を向きながら答える。

「今日の木を切り倒す修行を見て感じた。お前にはやはりドラゴンキラーになる才能はない」

「なぜ?なんで、そうやって強く言い切れるんですか?」

「私がドラゴンキラーを目指して修行していた若い時に、同じあの木を一撃で切ったからだ。しかもお前と同じ年齢でな」

「うっ......」

俺は冷や汗を1滴テーブルに垂らした。

「だから、諦めろ。帰る場所がないなら私達と一緒に暮らせ。私達と静かに平和に暮らすんだ」

俺は頭に血が少し上り、両手の拳を脇で握り締めた。

「もしドログさんより才能がなくても諦める気はまったくありません。俺は絶対にドラゴンキラーになります」

「お前は迷いが出てるんじゃないのか?さっき右手を見ていた時に不安な表情が出ていたように見えたが?」

「い、いや、そんな事はないです」

「とにかくだ、明日からは修行も何もしなくて良い。私達と普通に暮らそう」

「いいや、やります。やらせてください。俺はどうしてもドラゴンキラーにならなきゃいけないんです」

「本音は言いたくない。ただ私はお前の死体だけは見たくない。それだけだ」

「俺は絶対に死にません。俺はこれからも貴方を信じて努力します」

「ムキになってるだけじゃないのか?」

「はい、もちろんムキです。俺は死んでも復讐を成し遂げます。そうじゃなきゃ天国でドラゴンに殺された母と妹に合わせる顔がないです」

「2人とも、ちょっと落ち着いてよ。せっかく楽しい食事の時間なのに」

俺は食事が済んでいないのに、テーブルに自分が座っていた椅子を丁寧に差し込む。

「とりあえず明日も修行をよろしくお願いします。おやすみなさい」

ジャックは怒り気味にそう言って部屋から出て行った。

マネラはドログと2人っきりになった。そしてマネラはドログに心配そうに尋ねた。

「アナタ、もうちょっとジャックを信じてあげられないの?」

「ジャックが私達の息子のようになっても良いのか?」

「そういう事じゃないの。私はジャックにちゃんと戦士になってほしいから言ってるのよ。ジャックは特別なんでしょ。普通の人なら既にアナタとの修行を諦めて戦士になるのを辞めてる筈でしょ」

「マネラ、力がない奴はどれだけ努力をしてもダメなんだ。アイツより腕があった私は片腕と片目を失い、大事な息子はドラゴンに襲われて死んだ。だから私が頑張って育ててもジャックを無駄死にさせるだけだ。今のジャックはもし戦場で生き延びても周りの足を引っ張る迷惑な存在でしかない。アイツは剣士になっても誰からも信頼されない。どんなに普通の人より才能があってもドラゴンを討伐できなければ、剣士としてはただの役立たずだ」

「だからこそ私達が信じるのよ。ジャックを」

「もし、ジャックが死んだら?お前は悲しまないのか?」

「私だってたくさん不安だよ。でも私はあの子を信じる。いや、信じてあげたい。だって大事な家族だから。1人の愛する息子だから。自分の家族が他人を助ける為にしてる努力を否定する方がおかしいでしょ。だからきっと大丈夫。信じてあげましょう。ジャックを、私達の息子として」

「......................私ももう休む」

ドログはコップをテーブルに置いて席を立つ。

「アナタ、まだ話は終わってない......」

そしてドログは扉を強く閉めて出て行った。マネラは2人が出て行った部屋で1人で佇む。


____________



その頃、ジャックは部屋で1人泣いていた。

(なんでだ?なんでだ?俺は力がないからなのか?諦めろだなんて、そんな事、あんなにあっさり言わなくても良いじゃないか。力のない奴がドラゴンキラーになったらダメなのか?力のない奴はどんなに不満があっても普通に生きるしかないのか?復讐をするチャンスすら貰えないのか?)

俺は突然、ドログさんに言われた言葉を思い出して、ベッドの上で泣いていた。泣き過ぎて頭の枕が濡れている。

(俺は、やっぱりドラゴンキラーになれないのか?いままでの努力も全部無駄だったのか?メイ、母さん、キリノコ村のみんな、やっぱりごめん。俺は剣士になれないよ)

俺は悔しくてたくさん泣いた。だが疲れていたからか、知らないウチにグッスリと寝てしまった。



_________




「ジャック、早く起きろ」

ドログさんの声が聞こえた。そして目を覚ます。

「ドログさん?どうしたんですか?こんな朝早くから......」

「修行だ。死んでもドラゴンキラーになるんだろ?なら黙って私についてこい」

そう言ってドログさんは部屋から出ていき、俺は後を追うようにベッドから勢いよく立ち上がる。

「は、はい!もちろんです!」

俺はドログさんの昨日との温度差にちょっと動揺したがすぐにベッドから飛び起きた。

(よし、今日もやるぞ!)

そして、俺は家の玄関の壁に立てかけておいた大剣を手に取り、それを肩に背負ってあとを追いかけた。











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