【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

秋月一花

文字の大きさ
51 / 116

ラウンジにて。 1話

しおりを挟む
 落ち着いた雰囲気のラウンジにつくと、お父さまたちに勧められるまま椅子に座る。

 夜景を眺めながら、ノンアルコールのカクテルをいただくことになった。

 お父さまたちは普通にカクテルを頼んだけれど、わたくしたちは学生だから……クロエはお酒を飲める年齢だけど、ノンアルコールカクテルを選んだみたい。

「それでは、今日出会えた奇跡に、乾杯」

 乾杯、と軽くグラスを上げてから、一口飲む。甘い桃の香りと味がした。

 お父さまは上機嫌そうににこにこしていたけれど、お母さまはツンとした表情でカクテルを飲み、お兄さまはそんな二人を見て肩をすくめる。

「そういえば、カミラ嬢は一緒ではないのですね」
「ああ……あの子は、やることがあると言ってね。誘ったけれど、来なかったんだ」

 嘘ね。

 たぶん、また閉じ込められたんだわ。あの部屋に。

 成績が落ちるのも目に見えているし、なにより魔術師学科にいながら魔法が使えないんじゃ、落第になってもおかしくない。

「……公爵さま、マティス殿下は、わたくしのことを……?」

 そうたずねると、お父さまは「ああ、そうだった」とカクテルを飲んでから、口を開いた。

「とても可愛く、清廉せいれんな少女だ、と。心の芯が強く、めげずにがんばっていると……そう、聞いている」
「そうですか……」

 ……べた惚れね。マティス殿下に必要なのは、そういう人なのかもしれない。どう考えたって、わたくしよりもマーセルのほうが、彼とお似合いだし。

「めげるようなことが、あったのかい?」

 心配そうなお父さまの言葉に、思わず言葉を失う。

 ……わたくしに対して、そんなふうに接してくれた一度たりともなかった。

 なにも言えずにいると、レグルスさまが辺りを見渡して人差し指を口元に立てる。

「ここでは少し……言いづらいと思いますよ。誰が聞いているかもわかりませんから」

 それだけで、お父さまは察したようだった。

 わたくしは曖昧に微笑んでみせると、お兄さまが近付いてきて、そっと手を伸ばして頭を撫でた。――まるで、慰めるように。

 目をまたたかせてお兄さまを見ると、彼はバツが悪そうに視線をそらした。

 ……知っているのね、マーセルが、自分の本当の妹だと。

「そう、大変だったのね……」

 ぽつり、とお母さまが言葉をこぼす。

 あの鋭い視線はなんだったのかしら、と思うくらい優しい声色だった。思わず、お母さまを見つめてしまう。

 ……マーセルと同じプラチナブロンドがふわりと揺れて、扇で口元は隠れているけれど、その視線から温かさを感じた。あわれむような、その言葉にわたくしはやっぱり、曖昧に微笑むことしかできなかった。

「……カミラさまは、どんな方ですか?」

 きっと今なら、素直な気持ちを話してくれるのではないかと思い、そうたずねる。

 お父さまたちから見たわたくしのことが知りたくなったの。お父さまはふっと目を伏せて「よくできた子だよ」と答えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます

あみにあ
恋愛
私の婚約者は第二王子のクリストファー。 腐れ縁で恋愛感情なんてないのに、両親に勝手に決められたの。 お互い納得できなくて、婚約破棄できる方法を探してた。 うんうんと頭を悩ませた結果、 この世界に稀にやってくる異世界の聖女を呼び出す事だった。 聖女がやってくるのは不定期で、こちらから召喚させた例はない。 だけど私は婚約が決まったあの日から探し続けてようやく見つけた。 早速呼び出してみようと聖堂へいったら、なんと私が異世界へ生まれ変わってしまったのだった。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ――――――――――――――――――――――――― ※以前投稿しておりました[聖女の私と異世界の聖女様]の連載版となります。 ※連載版を投稿するにあたり、アルファポリス様の規約に従い、短編は削除しておりますのでご了承下さい。 ※基本21時更新(50話完結)

処理中です...