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ラウンジにて。 1話
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落ち着いた雰囲気のラウンジにつくと、お父さまたちに勧められるまま椅子に座る。
夜景を眺めながら、ノンアルコールのカクテルをいただくことになった。
お父さまたちは普通にカクテルを頼んだけれど、わたくしたちは学生だから……クロエはお酒を飲める年齢だけど、ノンアルコールカクテルを選んだみたい。
「それでは、今日出会えた奇跡に、乾杯」
乾杯、と軽くグラスを上げてから、一口飲む。甘い桃の香りと味がした。
お父さまは上機嫌そうににこにこしていたけれど、お母さまはツンとした表情でカクテルを飲み、お兄さまはそんな二人を見て肩をすくめる。
「そういえば、カミラ嬢は一緒ではないのですね」
「ああ……あの子は、やることがあると言ってね。誘ったけれど、来なかったんだ」
嘘ね。
たぶん、また閉じ込められたんだわ。あの部屋に。
成績が落ちるのも目に見えているし、なにより魔術師学科にいながら魔法が使えないんじゃ、落第になってもおかしくない。
「……公爵さま、マティス殿下は、わたくしのことを……?」
そう尋ねると、お父さまは「ああ、そうだった」とカクテルを飲んでから、口を開いた。
「とても可愛く、清廉な少女だ、と。心の芯が強く、めげずにがんばっていると……そう、聞いている」
「そうですか……」
……べた惚れね。マティス殿下に必要なのは、そういう人なのかもしれない。どう考えたって、わたくしよりもマーセルのほうが、彼とお似合いだし。
「めげるようなことが、あったのかい?」
心配そうなお父さまの言葉に、思わず言葉を失う。
……わたくしに対して、そんなふうに接してくれた一度たりともなかった。
なにも言えずにいると、レグルスさまが辺りを見渡して人差し指を口元に立てる。
「ここでは少し……言いづらいと思いますよ。誰が聞いているかもわかりませんから」
それだけで、お父さまは察したようだった。
わたくしは曖昧に微笑んでみせると、お兄さまが近付いてきて、そっと手を伸ばして頭を撫でた。――まるで、慰めるように。
目を瞬かせてお兄さまを見ると、彼はバツが悪そうに視線をそらした。
……知っているのね、マーセルが、自分の本当の妹だと。
「そう、大変だったのね……」
ぽつり、とお母さまが言葉をこぼす。
あの鋭い視線はなんだったのかしら、と思うくらい優しい声色だった。思わず、お母さまを見つめてしまう。
……マーセルと同じプラチナブロンドがふわりと揺れて、扇で口元は隠れているけれど、その視線から温かさを感じた。憐れむような、その言葉にわたくしはやっぱり、曖昧に微笑むことしかできなかった。
「……カミラさまは、どんな方ですか?」
きっと今なら、素直な気持ちを話してくれるのではないかと思い、そう尋ねる。
お父さまたちから見たわたくしのことが知りたくなったの。お父さまはふっと目を伏せて「よくできた子だよ」と答えた。
夜景を眺めながら、ノンアルコールのカクテルをいただくことになった。
お父さまたちは普通にカクテルを頼んだけれど、わたくしたちは学生だから……クロエはお酒を飲める年齢だけど、ノンアルコールカクテルを選んだみたい。
「それでは、今日出会えた奇跡に、乾杯」
乾杯、と軽くグラスを上げてから、一口飲む。甘い桃の香りと味がした。
お父さまは上機嫌そうににこにこしていたけれど、お母さまはツンとした表情でカクテルを飲み、お兄さまはそんな二人を見て肩をすくめる。
「そういえば、カミラ嬢は一緒ではないのですね」
「ああ……あの子は、やることがあると言ってね。誘ったけれど、来なかったんだ」
嘘ね。
たぶん、また閉じ込められたんだわ。あの部屋に。
成績が落ちるのも目に見えているし、なにより魔術師学科にいながら魔法が使えないんじゃ、落第になってもおかしくない。
「……公爵さま、マティス殿下は、わたくしのことを……?」
そう尋ねると、お父さまは「ああ、そうだった」とカクテルを飲んでから、口を開いた。
「とても可愛く、清廉な少女だ、と。心の芯が強く、めげずにがんばっていると……そう、聞いている」
「そうですか……」
……べた惚れね。マティス殿下に必要なのは、そういう人なのかもしれない。どう考えたって、わたくしよりもマーセルのほうが、彼とお似合いだし。
「めげるようなことが、あったのかい?」
心配そうなお父さまの言葉に、思わず言葉を失う。
……わたくしに対して、そんなふうに接してくれた一度たりともなかった。
なにも言えずにいると、レグルスさまが辺りを見渡して人差し指を口元に立てる。
「ここでは少し……言いづらいと思いますよ。誰が聞いているかもわかりませんから」
それだけで、お父さまは察したようだった。
わたくしは曖昧に微笑んでみせると、お兄さまが近付いてきて、そっと手を伸ばして頭を撫でた。――まるで、慰めるように。
目を瞬かせてお兄さまを見ると、彼はバツが悪そうに視線をそらした。
……知っているのね、マーセルが、自分の本当の妹だと。
「そう、大変だったのね……」
ぽつり、とお母さまが言葉をこぼす。
あの鋭い視線はなんだったのかしら、と思うくらい優しい声色だった。思わず、お母さまを見つめてしまう。
……マーセルと同じプラチナブロンドがふわりと揺れて、扇で口元は隠れているけれど、その視線から温かさを感じた。憐れむような、その言葉にわたくしはやっぱり、曖昧に微笑むことしかできなかった。
「……カミラさまは、どんな方ですか?」
きっと今なら、素直な気持ちを話してくれるのではないかと思い、そう尋ねる。
お父さまたちから見たわたくしのことが知りたくなったの。お父さまはふっと目を伏せて「よくできた子だよ」と答えた。
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