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1章:旅人として
食欲はいつも旺盛 ☆5☆
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「ちなみになにが一番おいしかったですか?」
「……トマトと卵の炒め物」
「一番塩分を感じないものを選びましたね」
「好みじゃ、好み!」
百年生きてきて、城の料理を食べてきていたのだ。
そりゃあ自分で料理し、失敗してえらく塩辛いものを作ってしまったこともあったが、そこは料理長がうまく料理を作り直してくれて、食べられるものになった。
「じゃが、こういう味の違いを知るのも楽しいからの」
「旅を楽しんでいるようでなにより。……姫さまは旅に出ないのかと思いましたよ」
「食を堪能するのに忙しかったからのぅ」
竜人族は旅に出る。
自分の国だけではなく、他国を自らの目で見て、歩き、いろいろなことを学び、自分の帰る場所がどこなのかを心に刻む。
そして、五十歳から八十歳のあいだに旅に出る竜人族が多い。だが、シュエは違う。
すでに三人の兄が旅から帰ったあとに生まれた、竜人族の姫。
それはもう、可愛がられた。溺愛といってもおかしくないくらいに。
旅の話は聞いていたが、そのたびに兄たちから『まだいかなくていい』、『まだ早い』と言われ続け結局この歳になってしまった。
「兄上たちは口をそろえて『まだ城にいて』と言っておったがの、父上と母上からああ言われてはのぅ?」
「皇后陛下、お強い」
「……本当にの」
母が賛成しなければ、シュエはあのまま城に留まっていただろうし、外の世界を知らずに育っただろう。
もしかしたら、竜人族初の『旅に出ない皇族』になっていたのかもしれない。
「まぁ、わらわも旅に出てみたいとは思っていたんじゃ」
「おや、そうだったのですか?」
「そうじゃ。兄たちから外の世界の話を聞いていたからの。いつか自分の目で見てみたいと思っていたんじゃ!」
満腹になったお腹を擦り、兄たちから聞いた話を思い出しながら天井を見上げる。
家族と離れて一週間ほど経ったが、今のところ帰りたいとは思わない。
「城の料理はちっと恋しくなるが、こうしていろんな場所で食べるのも楽しいものじゃし、リーズもいるからの。なんというか、本当にただ食べ歩きの旅をしているじゃな。ちなみにこの町で一番うまいのは、あの牛肉の串焼きじゃと思う」
「本当に気に入ったんですね」
「シンプルな串焼きじゃったからの。あれは相当自信がないと出せんぞ」
「なるほど」
リーズが紙と筆を取り出して、シュエの言葉を綴っていく。
「……ところで、なんで紙にわらわの言葉を書いていくんじゃ?」
「姫さまの食に関して、報告してほしいと皇帝陛下に頼まれていまして」
彼の言葉を切って、シュエはぽかんと口を開けた。
目を数回瞬かせて、軽く頬をかく。
「ち、父上……」
「良かったですね、姫さまの好みの料理を作ってもらえますよ」
「末っ子だからかの、この待遇」
「唯一の姫ですし、それもあるかと」
おそらく、シュエが溺愛されていることを知らない国民は一人もいない。
そのくらい、家族はシュエを堂々と愛でていた。
「……トマトと卵の炒め物」
「一番塩分を感じないものを選びましたね」
「好みじゃ、好み!」
百年生きてきて、城の料理を食べてきていたのだ。
そりゃあ自分で料理し、失敗してえらく塩辛いものを作ってしまったこともあったが、そこは料理長がうまく料理を作り直してくれて、食べられるものになった。
「じゃが、こういう味の違いを知るのも楽しいからの」
「旅を楽しんでいるようでなにより。……姫さまは旅に出ないのかと思いましたよ」
「食を堪能するのに忙しかったからのぅ」
竜人族は旅に出る。
自分の国だけではなく、他国を自らの目で見て、歩き、いろいろなことを学び、自分の帰る場所がどこなのかを心に刻む。
そして、五十歳から八十歳のあいだに旅に出る竜人族が多い。だが、シュエは違う。
すでに三人の兄が旅から帰ったあとに生まれた、竜人族の姫。
それはもう、可愛がられた。溺愛といってもおかしくないくらいに。
旅の話は聞いていたが、そのたびに兄たちから『まだいかなくていい』、『まだ早い』と言われ続け結局この歳になってしまった。
「兄上たちは口をそろえて『まだ城にいて』と言っておったがの、父上と母上からああ言われてはのぅ?」
「皇后陛下、お強い」
「……本当にの」
母が賛成しなければ、シュエはあのまま城に留まっていただろうし、外の世界を知らずに育っただろう。
もしかしたら、竜人族初の『旅に出ない皇族』になっていたのかもしれない。
「まぁ、わらわも旅に出てみたいとは思っていたんじゃ」
「おや、そうだったのですか?」
「そうじゃ。兄たちから外の世界の話を聞いていたからの。いつか自分の目で見てみたいと思っていたんじゃ!」
満腹になったお腹を擦り、兄たちから聞いた話を思い出しながら天井を見上げる。
家族と離れて一週間ほど経ったが、今のところ帰りたいとは思わない。
「城の料理はちっと恋しくなるが、こうしていろんな場所で食べるのも楽しいものじゃし、リーズもいるからの。なんというか、本当にただ食べ歩きの旅をしているじゃな。ちなみにこの町で一番うまいのは、あの牛肉の串焼きじゃと思う」
「本当に気に入ったんですね」
「シンプルな串焼きじゃったからの。あれは相当自信がないと出せんぞ」
「なるほど」
リーズが紙と筆を取り出して、シュエの言葉を綴っていく。
「……ところで、なんで紙にわらわの言葉を書いていくんじゃ?」
「姫さまの食に関して、報告してほしいと皇帝陛下に頼まれていまして」
彼の言葉を切って、シュエはぽかんと口を開けた。
目を数回瞬かせて、軽く頬をかく。
「ち、父上……」
「良かったですね、姫さまの好みの料理を作ってもらえますよ」
「末っ子だからかの、この待遇」
「唯一の姫ですし、それもあるかと」
おそらく、シュエが溺愛されていることを知らない国民は一人もいない。
そのくらい、家族はシュエを堂々と愛でていた。
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