竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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1章:旅人として

海の近く街で ☆10☆

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 彼女が傷つくことなく過ごしてほしいと、願っている。

 しかし、あの村のことで自身が人間たちから『恐れられる』存在であることを知っただろう。自分にも覚えがあることだった。

 力のない者にとって、力ある者は恐怖の対象になるのだと――……

 だからこそ、人間の怯えた瞳に彼女が傷ついていないかと不安に思っていたが、どうやらシュエはルーランが思っている以上に心が強いようだ。

「わらわは大丈夫じゃ。リーズもいるしの」

 ちらりと彼を見上げるシュエ。

 視線に気付いたのか、リーズも彼女へ視線を向ける。

 ルーランが「ふふっ」と笑い出し、立ち上がった。そして、二人の顔を交互に見てから、頭を下げた。

「王宮の万屋ルーラン、また姫さまにお会いできる日を、楽しみにしております」

 ぱちんと片目を閉じるルーランに、シュエは「わらわもじゃ!」と元気よく言葉を返す。

 ルーランはそのまま国に帰るために歩き出し、その背中が見えなくなるまでシュエとリーズは彼女を見送った。

 やがて完全にその姿が見えなくなると、リーズの服を引っ張り、

「行こう、リーズ。宿屋で一休みしたい気分じゃ」
「……あれだけ食べましたからね」
「リーズのれたお茶が飲みたいのぅ」
「食後の一杯は格別ですからね」

 ぽんぽんと会話を交えながら歩き出す。宿屋を探すために。

 いろいろな人が、いろいろなことを話しているのが耳に届く。

「楽しそうな街じゃの」
「ここまでの賑わい、なかなか見ませんよ」
「そうなのか?」

 王宮で百年ほど暮らしていたシュエは、外の世界がどうなっているのか、兄たちから聞いた話や書物でしか知らない。

 だからこそ、このように自分で経験を得るのは、好奇心を大いに刺激してくれる。

「次はどんなものを食べようかの?」
「さっき食べたばかりでしょうに」

 まだ食べるつもりですか、とリーズの視線がシュエに刺さる。それを気にせずにリーズの手を取りぎゅっと握った。

 リーズもシュエの手を握り返す。この人の多さだ。はぐれてしまったら大変だろうと考えて。

「それにしても、本当にいろんな人がいるもんじゃな。こんがり焼けている人も多い」
「体格のよい人も多いですね。力仕事が多いのでしょうか」
「村と街でこんなに違うんじゃなぁ……」

 感心したようにつぶやくシュエに、リーズは辺りを見渡して宿屋らしき場所を見つけ、彼女に声をかける。

「様々な文化が混じっているみたいですね。あちらに宿屋らしい建物がありますかから、いってみましょう」
「良い文化はじゃんじゃん取り入れるべきじゃな! ところで、その建物はどこじゃ?」

 リーズよりも背の低いシュエには、街を行き交う人の腰から足までしか見られない。

 人が多いとこういうこともあるのか、とまた新しい発見だと肩をすくめた。
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