竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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1章:旅人として

海の魔物 ☆2☆

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「わらわが守ってみせるから、そなたは安心して身を任せよ」

 にっと笑うシュエと、ふっと口角を上げるリーズを交互に見て、それから「お、おう?」と困惑しながらもうなずいた。

 そんなやり取りをしていたら、クラーケンがその姿を現す。

「おおー、とても大きいのぅ!」
「イカでしょうか、タコでしょうか」
「不思議なことにどちらにも見えるのぅ」

 考えてみれば、イカもタコもその姿を見たのは書物で、実物を見たことはない。

「あ、海が黒くなった」
「墨を吐いているんだ」
「ほーぅ。……なんかあんまり襲ってくる気配がないのぅ」

 むしろ船を引きとめてからかっているように見える。

 巨大な頭に大きな目、多数の触手。とりあえず、船を掴んでいる触手の一本を切り落とすと、黒いもやになった。

「む、やはり消えるか」
「あ、怒ったみたいですね」
「なんでそんなに冷静なの、お二人さん!?」

 クラーケンの様子を見て、漁師が目をカッと見開いて二人を見る。

 怒ったクラーケンは船を攻撃しているが、薄い膜が弾く。

 透明な膜なのでベチベチと触手攻撃している様子がよく見え、漁師は「どうなってんだ、これ!」と頭を抱えてしゃがみ込んだ。

「お、ちょっと疲れたようじゃな」
「シュエ、一発で仕留めてくださいね」
「任せろ!」

 シュエは船から跳び上がり、薄い膜の外に出る。

 膜の上に座り、じっとクラーケンを見つめ、にっこりと笑みを浮かべるとクラーケンは少し怯んだように離れようとした。

 しかし、シュエのほうが素早かった。薄い膜から一直線にクラーケンに向かう。

「悪いが、眠れ!」

 クラーケンの頭を翠竜すいりゅう剣で薙ぎ払った。黒いもやが天に昇っていく。

「オレは、夢でも見ているのか……?」

 漁師が呆然とした声を出す。あまりにも一瞬でクラーケンを倒した少女に視線をやると――海の中にドボンと落ちた。

「お嬢ちゃん!」

 漁師が慌てたように海に飛び込もうとするのをリーズが止め、代わりに海に飛び込みシュエを助ける。

 海水がたっぷりと含んだ服は重い。

 しかしリーズはその重さを感じさせることなく、シュエを抱えて泳ぎ船まで戻ってきた。

「うへぇ、ぺっぺっ! 海水ってしょっぱいな!?」
「嬢ちゃん……泳げないのにクラーケンに挑んだのかい? 勇敢なんだか無謀なんだか……」

 呆れたような漁師の言葉に、シュエはきょとんとした表情を浮かべて首を傾げた。

「泳げなくともリーズがいるからの。なんとなると思ったんじゃ」

 なんとかなったじゃろ? と楽しそうに口角を上げるシュエに、リーズは肩をすくめ、漁師は一瞬目を丸くして豪快に笑った。
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