竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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1章:旅人として

船旅 ☆3☆

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 シュエたちに用意された客室は、とても広くて二人で使うにはもったいないほどの部屋だ。

 クラーケンを倒した英雄に、と船長自ら勧めてくれた。

 その部屋に入り、ベッドにぼふんと座るシュエ。

 向かい合うようにリーズも座った。表情は消えたままで少し威圧感がある。

「人を斬る予定が?」
「山賊やら盗賊やら海賊やらが襲ってくるかもしれんじゃろ。ほら、わらわ子どもに見えるし?」

 人間でいえば十歳くらいの少女に見えるが、実年齢は百歳だ。竜人族としては『子ども』に入るが、人間にとっては『年上』だ。

「姫さまは、人を斬らなくてよいのですよ。それは私の仕事ですから」

 護衛としてシュエを支えるリーズは、じっと彼女を見つめて言葉を紡ぐ。

 その言葉は、少し緊張が混じっているように声が震えていた。

 二百年生きているリーズは、人を斬ったことがある。

 成人前の旅に出たとき、自身の実力と人間のもろさと見誤ったことが原因だった。

 そのときの感触は、何年経っても覚えている。

「じゃが、リーズだって斬りたくはなかろう?」

 シュエが真っ直ぐに彼を見る。一点の曇りもない、翠色の瞳で見つめられてリーズは息をむ。

「当たりか。わらわもなかなかやるのぅ」

 自画自賛するように口角を上げ、胸元に手を置く彼女に、彼は小さく息を吐いた。

「人を斬りたい、なんて大抵の人は思いませんよ」
「大抵の人『は』?」
「世の中には変人もいるのです」

 しみじみと実感を持っていわれて、シュエは首を傾げる。

 リーズは表情を緩めて、静かに首を左右に振る。伝えるつもりはない、ということだ。

悪鬼あっきや魔物を倒すときの力では、強すぎるか?」
「ええ、まぁ、そうですね。姫さまは戦わないほうが良いかと」
「む。しかしそれではリーズにばかり負担がかかるじゃろう」

 きょとり、と目を丸くするリーズ。そしてなにかを思い付いたようにぽんと手を叩き、

「私の心配をしてくださったのですね!」

 と、目元を細めてにこにことシュエを見た。

「心配というか、二人旅じゃぞ。負担は二人でわけるべきじゃ」
「……姫さま。その心意気はとても素晴らしいのですが……」

 こほん、と一度咳払いをしてから、リーズは右手の人差し指を立て、目を閉じて言葉を紡ぐ。

「私は姫さまの護衛です。本来なら悪鬼や魔物と戦うのも止めるべきなのでしょうが……」
「そうなのか? 剣術を試すためではなかったのか?」
「悪鬼を見つけて嬉々として斬りつけるとは、正直思いませんでしたよ」

 目を開けてシュエから視線をそらすリーズに、彼女は唇を尖らせた。そして肩をすくめる。
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