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1章:旅人として
海辺にて ☆6☆(1章・完)
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「よく眠っていたようですね」
「眠りすぎたわ!」
彼は口元に人差し指を立てる。真夜中に大きな声を出したように、と。シュエは慌てて口元を両手で覆う。
「それでは、姫さま。真夜中の海を見にいきましょうか」
シュエは目をぱちぱちと瞬かせて、大きく首を縦に動かす。
「あと、サンドウィッチを作ってもらいましたよ。海を見ながら食べましょう」
「やった!」
小声で喜ぶシュエを見て、リーズは優しく微笑んだ。
寝ている人たちを起こさないように、そっと窓を開ける。広がる夜空は星々できらめいている。
リーズが手を差し伸べ、シュエがしっかりとその手を握った。
辺りを見渡して寝静まった街を眺め、リーズがその姿を龍へと変える。
彼の胡桃色の髪と同じ色の龍だ。シュエを大事そうに抱えて空を飛ぶ。すぐに海辺についた。
ふわり、と海辺に降り立ち、夜の海を眺めた。リーズも龍の姿から人間の姿へ戻り、両手の親指と人差し指で輪を作り、ぽわりとほんのり明るくなったところに手を入れ、作ってもらったサンドウィッチを取り出す。
「夜に見る海もよいものじゃな」
ちょうど満月の日だったようで、真夜中の海に月の道ができていた。
「近いようで遠いのぅ」
「ええ。はい、どうぞ」
サンドウィッチを差し出すリーズに、シュエは「ありがとう」と微笑んでから手に取り、ぱくりと食べた。ハムとチーズのサンドウィッチで、チーズの濃厚さとハムの塩気がちょうどいい。
「パンに挟むだけで美味しいなんて……」
「片手で食べられて便利ですよね」
そんなわけで、綺麗な景色よりも食べ物のほうが好きなシュエであった。
そんな彼女を眺めつつ、自分もサンドウィッチを頬張るリーズ。幸せそうに食べているのを見るのは、なかなか楽しい。
「姫さまはなんでも美味しく食べますね」
「食べてみないと美味しいかどうかわからんじゃろ?」
二個目のサンドウィッチに手を伸ばす。今度はレタスとハムのサンドウィッチだった。シャキシャキのレタスがよい食感だ。
「リーズ。三日後の――……いや、二日後の冒険としての初仕事の件じゃが」
もぐもぐ、ごくんと飲み込んでから、冒険者ギルドで渡された依頼のことを思い出しながら、顔をリーズに向ける。
「はい、なにか不明点がありましたか?」
「あの少年――……隣国に帰るようじゃったな。護衛もいたが、わらわたちの手が必要か?」
「必要だと判断したから、依頼をしたのでは?」
こてんと小首を傾げるリーズ。彼の胡桃色の髪がさらりと流れた。
「そんなに隣国まで、悪鬼や悪魔がいるかのぅ?」
「盗賊や山賊がいるのかもしれませんよ。なにはともあれ、引き受けたのですから、仕事はしっかりしないと」
「それはしっかりやるから安心せぃ」
これからいったいどんな旅になるのだろうかと想像して、シュエはすっと目元を細める。
――どんな旅になっても、家族への土産話になるか、と考えてシュエは真夜中の海を満喫した。
海面に映る月の光。
とても幻想的な景色を眺めながら――シュエはサンドウィッチを美味しくいただいた。
――一章・完――
「眠りすぎたわ!」
彼は口元に人差し指を立てる。真夜中に大きな声を出したように、と。シュエは慌てて口元を両手で覆う。
「それでは、姫さま。真夜中の海を見にいきましょうか」
シュエは目をぱちぱちと瞬かせて、大きく首を縦に動かす。
「あと、サンドウィッチを作ってもらいましたよ。海を見ながら食べましょう」
「やった!」
小声で喜ぶシュエを見て、リーズは優しく微笑んだ。
寝ている人たちを起こさないように、そっと窓を開ける。広がる夜空は星々できらめいている。
リーズが手を差し伸べ、シュエがしっかりとその手を握った。
辺りを見渡して寝静まった街を眺め、リーズがその姿を龍へと変える。
彼の胡桃色の髪と同じ色の龍だ。シュエを大事そうに抱えて空を飛ぶ。すぐに海辺についた。
ふわり、と海辺に降り立ち、夜の海を眺めた。リーズも龍の姿から人間の姿へ戻り、両手の親指と人差し指で輪を作り、ぽわりとほんのり明るくなったところに手を入れ、作ってもらったサンドウィッチを取り出す。
「夜に見る海もよいものじゃな」
ちょうど満月の日だったようで、真夜中の海に月の道ができていた。
「近いようで遠いのぅ」
「ええ。はい、どうぞ」
サンドウィッチを差し出すリーズに、シュエは「ありがとう」と微笑んでから手に取り、ぱくりと食べた。ハムとチーズのサンドウィッチで、チーズの濃厚さとハムの塩気がちょうどいい。
「パンに挟むだけで美味しいなんて……」
「片手で食べられて便利ですよね」
そんなわけで、綺麗な景色よりも食べ物のほうが好きなシュエであった。
そんな彼女を眺めつつ、自分もサンドウィッチを頬張るリーズ。幸せそうに食べているのを見るのは、なかなか楽しい。
「姫さまはなんでも美味しく食べますね」
「食べてみないと美味しいかどうかわからんじゃろ?」
二個目のサンドウィッチに手を伸ばす。今度はレタスとハムのサンドウィッチだった。シャキシャキのレタスがよい食感だ。
「リーズ。三日後の――……いや、二日後の冒険としての初仕事の件じゃが」
もぐもぐ、ごくんと飲み込んでから、冒険者ギルドで渡された依頼のことを思い出しながら、顔をリーズに向ける。
「はい、なにか不明点がありましたか?」
「あの少年――……隣国に帰るようじゃったな。護衛もいたが、わらわたちの手が必要か?」
「必要だと判断したから、依頼をしたのでは?」
こてんと小首を傾げるリーズ。彼の胡桃色の髪がさらりと流れた。
「そんなに隣国まで、悪鬼や悪魔がいるかのぅ?」
「盗賊や山賊がいるのかもしれませんよ。なにはともあれ、引き受けたのですから、仕事はしっかりしないと」
「それはしっかりやるから安心せぃ」
これからいったいどんな旅になるのだろうかと想像して、シュエはすっと目元を細める。
――どんな旅になっても、家族への土産話になるか、と考えてシュエは真夜中の海を満喫した。
海面に映る月の光。
とても幻想的な景色を眺めながら――シュエはサンドウィッチを美味しくいただいた。
――一章・完――
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