【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花

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3章:アシュリンと再会。

アシュリンとお兄ちゃん。 13話

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 休憩スペースで休むのは久しぶりだったので、ぐっすりと眠れた。気が付いたら朝で、アシュリンはびっくりして飛び起きる。

「もう朝!?」
「おはよう、気持ちよさそうに寝てたぞ」
「おはよう! あ、もう朝ごはんが用意してある!」

 ほかほかと湯気が見える。白いパン、目玉焼きにウインナー、サラダにコーンスープ。食欲を刺激しげきする香りに、アシュリンは「わぁ!」と声を上げた。

「おいしそう! ……って、あれ? たくさんあるね?」
「せっかくだから、みんなで食べようと思って」
「みんなで?」

 アシュリンは魔法で服を着替えてから、テーブルに近付く。椅子に座ってアンディを見上げると、彼は扉に向かって「もういいぞ」と声をかける。

 すると、ガチャっと扉が開き、ディータとラルフが姿を現した。

「おはよう、二人とも。よく眠れたかい?」
「おはようございます。……おはよう、アシュリン」
「おはようございますっ!」

 ディータとラルフはアシュリンとアンディに挨拶あいさつをしてから、小屋の中に入る。

 アンディはアシュリンのとなり、ラルフはアシュリンの真正面、ディータはアンディの真正面になるように座り、三人はじっとアンディを見つめた。

「――どうぞ、がれ」
「いただきます!」

 それぞれナイフとフォークを手にして、それぞれぱくりと食べ始める。

 アシュリンはまず、コーンスープに手を伸ばした。

 取っ手付きのおわんに入っていたので、取っ手を持ちふーふーと息を吹きかけて、口に入れる。とたんに広がるコーンの甘さに、彼女はぱぁっと目を輝かせてアンディを見る。

「うまいか?」

 こくりと飲み込んでから、何度もうなずいた。

「あ、これ……懐かしい味がする」
「ディータにはそうだろうな。ディータの故郷の名物だから」
「……なんでボクの故郷の名物を、アンディが?」
「おいしかったから、家族に食べてもらおうと思ってレシピもらった」

 ディータもコーンスープを飲んだようで、目を丸くしていてアンディを見る。その様子を眺めながら、アシュリンはウインナーをナイフとフォークで一口サイズに切り、口に運ぶ。

 パリッと焼かれたウインナーは、口の中で肉汁があふれる。すかさず白いパンを口に放り込むと、パンの甘みとうまみが重なってさらにおいしくなった。

 幸せそうに食べるアシュリンは、三人の目が自分に向いていることに気付いて、ごくんと飲み込んでから「どうしたの?」と首をかしげる。

「おいしそうに食べる子だなぁって。アンディに聞いていた通り」
「お兄ちゃんに?」
「そう。かわいがっていた妹たちのことを、よく自慢げに話していたんだよ」

 ディータはアンディが自分にどんなことを話していたのかを、アシュリンに教えた。アシュリンが生まれてから、ミルクを飲んだとき、ハイハイした日、初めて立った日などをずっと聞いていた――と。

「赤ちゃんの頃の話から!?」
「もう一人の妹であるエレノアちゃんのこともね……」

 遠くを見るディータに、アシュリンは呆れたような、ほんの少しだけうれしそうな表情を浮かべて、その顔を隠すように頬に両手を添える。
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