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アデーレの言ったこと 2-2
「ちょっと待って」
と、声を掛けてからノートを引き出しにしまい、鍵をかける。鍵をいつも入れている引き出しに入れてから、「どうぞ」と扉に向けて言うと、ガチャリと扉が開いた。
「レオンハルトさま!」
お父さまと話していたであろうレオンハルトさまが、私の部屋に……!? と目を丸くしていると、くすりと微笑む姿が見えた。ハッとして、私は一度深呼吸をしてから、胸元に手を置いた。
「すみません、お見苦しいところを……」
「そんなことはありませんよ。中へ入っても?」
「もちろんですわ」
部屋の中に招き入れて、メイドを呼ぶ。食事が待っているから、お茶だけお願いした。
メイドはすぐにお茶を用意してくれた。一礼してから出て行く姿を見送り、お茶を一口飲んでから微笑みかける。
「――今日は本当にお疲れさまでした」
「レオンハルトさまも」
緩やかに首を振るレオンハルトさま。彼はすぅっと目元を細めて、小さく眉を下げた。
「――父が、今の王家のことを心配していた理由が理解出来ました」
「まぁ」
思わず口元を指で覆ってしまう。――まぁ、あの様子のダニエル殿下を見たら、そう思うのも無理はない。
デイジーさまもいらっしゃるから、すぐにどうこうなるわけではないと信じたいところだけど……。
「フォルクヴァルツは辺境地ですから、王都のことを知るのは時間が掛かるのです。なので、こういう状況であることを知ったのは、恥ずかしながら王都についてからなのです」
レオンハルトさまは肩をすくめながら教えてくれた。そうだったんだ、と思った気持ちと――それじゃあ、レオンハルトさまはどうして私との縁談を断らなかったのだろう? と首を傾げた。
「父から、友人の愛娘が婚約破棄をされたから、と釣書を渡されました。見て、驚きましたよ。エリカ嬢だったので」
「……ですよね」
愛娘、かぁ。なんだか、ちょっと照れくさい。
それにしても、本当にこんな偶然ってあるのね。……お父さま、いつの間に私の釣書を送っていたのかしら?
「実際に会い、話すことで、余計にダニエル殿下がなぜあなたと婚約を破棄したのか理解出来ませんでした」
「……ダニエル殿下には、アデーレ嬢がいますから」
私じゃない人を選んだ。それだけの話……よね。ダニエル殿下はアデーレのことを……ヒロインのことを、本気で好きになったはずだから。実際聞いたことはないけれど、一年に一回だった浮気は学園にいる間はなかった――アデーレ一筋だったように見えた。私が見た範囲だから、なんとも言えないけれど。
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