傾国の美姫の『影』になりました 後宮の見習い侍女は、主人のために暗躍したい

秋月一花

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2章:新たな知識

梓豪の呪術教室 1話

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 シュヨウリンに昨夜のことを伝えると、彼女は真剣な表情で耳を傾けてくれた。その様子に安堵して朱亞の表情が綻ぶ。

「……薬草店の方、どうしてそんな知識を持っているのかしら」

 ぽつり、と桜綾が言葉をこぼしてから、軽く肩をすくめた。

(……陛下のお願いって、これのことだったのかしら)

 桜綾は頬に手を添え、心の中でつぶやく。

 朱亞からチュンヤンにちらりと視線を移す。寝台で細い息をしている彼女を眺めてから、ぽんぽん、と朱亞の肩を叩いた。

「朱亞、後宮の調査、わたくしも参加するわ」
「えっ? 危険かもしれませんよ!」
「それはあなたも同じでしょう? わたくしたちは狍鴞や殭屍から生き延びた、幸運の持ち主だもの。きっと大丈夫よ」

 凛とした桜綾の声に、朱亞は思わず言葉を呑む。

(――やっぱり強い人だなぁ、桜綾さん)

 そしてきっと、このままぐいぐいと前進していくのだろうと考え、朱亞は目を伏せて少しだけ口角を上げた。

「では、一緒に調査をしましょう」
「そうこなくっちゃ!」

 満足そうに笑顔を浮かべる桜綾を見て、朱亞も微笑みを返した。

 ◆◆◆

 朱亞と桜綾が作戦を練っている間に日が落ちた。

 今日はズーハオから呪術のことを教わる日なので、朱亞は宦官の服に着替えてあの場所へ足を運ぶ。

 梓豪はすでにきていたようで、朱亞に気づくと「朱亞さん」と柔らかく声をかけてきた。

「ごめんなさい、かなりお待たせしましたか?」
「いいえ、それほどでも。ですが、時間は限られているので、さっそく始めましょう」

 真剣な表情でうなずく朱亞。

 この前のおさらい、ということで、刀印を組み、早九字を切る。パチパチ、と梓豪が拍手を送った。

「お見事です」
「ありがとうございます」

 称賛の言葉を受け、朱亞は照れたようにはにかむ。

 そして、自分の手を見つめて、「これを使えば、彼女を救えるのかな」とぽつりとつぶやいた。

 朱亞の顔があまりにも思い詰めているように見えたからか、梓豪は「なにがあったのですか?」と尋ねる。

「今日のことなんですけれど……」

 自身の口から言葉が滑り落ちていたことに気づき、朱亞はちらりと梓豪に視線をやってきゅっと拳を握り、春燕のことを簡単に説明した。

 梓豪は真剣に彼女の話を聞いてくれた。朱亞が話し終わるまで、ずっと。桜綾も自分の話を真摯に聞いてくれたので、一つも残さず、すべてを伝えることができる。

「後宮でそんなことが……える人には、つらかったでしょうね」

 梓豪は顔を曇らせる。朱亞はなにも言えずにただ視線を落とした。
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