オカルト研究部員の非日常な日常

秋月一花

文字の大きさ
59 / 70
3章:探求

合宿 3話

しおりを挟む
「……この世界のトイレって、異界に通じているの?」

 銀華ぎんか怪訝けげんそうに眉を寄せて、黒板の文字を追う。

「そういうわけではないと思うけど……でも、確かにトイレの怪異って多いね」
「鍵のかかる個室、鏡が置いてある、無防備な場所……この条件が恐怖心と想像力を刺激するんじゃないか?」

 つむぎの言葉に納得したように銀華がうなずく。顎に指をかけて、ついと視線を茉莉まつりに移した。

「茉莉は、トイレで怖い思いをしたことがあるの?」
「うーん、怖い思いと言うか……心霊番組を見て、トイレやお風呂が怖くなったことはあるよ」

 苦笑を浮かべる茉莉に、架瑠かけるは幼い頃の彼女のことを思い出した。一時期、咲良さくらにべったりとくっついていた理由がそれだったな、と。

 懐かしむように目元を細めると、ぴょこんとこゆきが銀華の髪から現れて、机の上にぴょんと飛び乗る。

「ちなみに、氷華世界にはこういう怪談はあるのかい?」
「どちらかといえば、わたしたちが怪談側そっちじゃない?」

 ねぇ、こゆき? と銀華がこゆきに声をかけると、こくこくとうなずく姿が確認できた。首を動かすたびに、ちりんちりんと鈴のような音が部室に響く。

「こゆきたちの世界だと、怪異と戦えちゃうもんねっ」
「……そういえば、どうして銀華くんはこの学校にきたんだい?」

 佑心うみが興味深そうに銀華にたずねる。あの黒板の怪異のときに、架瑠たちを助けてくれた銀華。どうして彼女があの怪異のところに姿を現せたのか、聞いたことはなかった。

「ああ……それはね。おさから勧められたのよ。外の世界を見てきなさいって。どうせなら、助けてもらったあなたたちと過ごしたかった。そう思って氷華ひょうか世界からキミたちに繋がる道を歩いたら、なんか怪異に巻き込まれていたってわけ」

 ぎしっと音を立てて椅子に背を預ける銀華に、こゆきは机の上で自分の尻尾に頭を乗せて丸くなる。

「長から?」
「ええ。わたしの力が思った以上に強かったら、……まぁ、修行ってことね」
「銀華のサポートのために、こゆきも一緒なの!」

 こゆきは目をキラキラと輝かせた。そんなこゆきの頭を撫で、銀華は目を伏せてしみじみと言葉を紡ぐ。

「恋人ともしっかり別れたからね。……ああ、そうだ。あの大樹の下に埋まっていた骨なんだけど……」

 銀華は一度言葉を切り、全員を見渡した。

 氷華世界の大樹に埋まっていた骨を思い出し、架瑠は息をむ。

 実は、ずっと気になっていた。だが、あの世界の住民ではない自分が尋ねてもいいのだろうかと、ずっと悩んでいたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

処理中です...