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4章:腕前
自分自身と 1話
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――戦いの火蓋は切られた。
まさか、自分の人生の中で、そんな言葉がぴったりなときがくるとは、と架瑠は呆然としている。
だが、敵の手は止まってはくれない。架瑠に狙いを定め、襲いかかってくる触手を紬がザンッと音を立てて斬った。焔刃の炎に焼かれ、灰になっていく。
「ぼさっとするな、あいつの狙いはお前だろ?」
「うん、そうだね……」
紬がそう声をかけると、架瑠は苦笑を浮かべてゆっくりと深呼吸を繰り返す。
「みんな、お願いがあるんだ!」
すぅっと大きく息を吸ってから、大声を出した。
こんなに大きな声が出せるのか、と架瑠は自分にびっくりしたが、すぐに『架瑠』と両親の姿をしているモノに視線を移す。
「時間を稼いでほしい! おれが――決着をつける!」
叫ぶような声だった。
自身の決意を口にすると、紬たちがふっと表情を緩めたのがわかる。
「――あいつじゃないが……これは、お前の怪異だからな」
「ちゃぁんと、見せ場は作ってあげるわよ」
「こゆきもがんばるよっ!」
「るーくん、……強くなったね」
それぞれの答えを聞いて、架瑠も同じように表情を和らげた。
――そう、これは架瑠の怪異。
向き合わなければいけないことだ、と『架瑠』を睨む。
自分そっくりの『架瑠』の姿。だが、どこか歪に感じるのは怪異だからだろうか、と考えつつ、架瑠は前を見据えた。
『いつまで持つかな?』
歪に笑う『架瑠』。血の海から生まれたモノたちは、紬たちにも襲いかかり、斬られたり凍ったりしている。
架瑠は淡く光る紫苑の瞳を隠さず、歩き出した。
彼が向かうのは、両親の姿をしたモノの場所。
「るーくん!」
「……大丈夫、伊吹さん」
怪異に近付いていく架瑠に、伊吹が声をかける。彼女に聞こえるように言葉をこぼすと、両親の姿をしているモノの前で足を止めた。
架瑠の霊視で、両親の姿がはっきりと見えてくる。
あの日から見えなかった、両親の顔。
今は――はっきりと見える。
心配そうに架瑠を見ている、両親の姿が。
『おっと、それ以上近付かないほうがいいぜ?』
すっと両親の前に立ちはだかったのは、『架瑠』だった。
自分そっくりなのに、笑い方も口調もすべて違う。
……だけど、わかる。
あれも自分自身なのだと。これは、あの日から自分自身と向かい合わなかった架瑠の罪。
「もう、両親を解放してよ……」
きっと、両親はあの日――架瑠を狙った通り魔に刺されてから、怪異に取り込まれ成仏できていない。
そのことを思うと、胸が痛くなった。
ぐっと自分の胸元に拳を作り、強い意志を宿した瞳で『架瑠』を見つめる。
彼は『ハッ!』と鼻で笑った。
まさか、自分の人生の中で、そんな言葉がぴったりなときがくるとは、と架瑠は呆然としている。
だが、敵の手は止まってはくれない。架瑠に狙いを定め、襲いかかってくる触手を紬がザンッと音を立てて斬った。焔刃の炎に焼かれ、灰になっていく。
「ぼさっとするな、あいつの狙いはお前だろ?」
「うん、そうだね……」
紬がそう声をかけると、架瑠は苦笑を浮かべてゆっくりと深呼吸を繰り返す。
「みんな、お願いがあるんだ!」
すぅっと大きく息を吸ってから、大声を出した。
こんなに大きな声が出せるのか、と架瑠は自分にびっくりしたが、すぐに『架瑠』と両親の姿をしているモノに視線を移す。
「時間を稼いでほしい! おれが――決着をつける!」
叫ぶような声だった。
自身の決意を口にすると、紬たちがふっと表情を緩めたのがわかる。
「――あいつじゃないが……これは、お前の怪異だからな」
「ちゃぁんと、見せ場は作ってあげるわよ」
「こゆきもがんばるよっ!」
「るーくん、……強くなったね」
それぞれの答えを聞いて、架瑠も同じように表情を和らげた。
――そう、これは架瑠の怪異。
向き合わなければいけないことだ、と『架瑠』を睨む。
自分そっくりの『架瑠』の姿。だが、どこか歪に感じるのは怪異だからだろうか、と考えつつ、架瑠は前を見据えた。
『いつまで持つかな?』
歪に笑う『架瑠』。血の海から生まれたモノたちは、紬たちにも襲いかかり、斬られたり凍ったりしている。
架瑠は淡く光る紫苑の瞳を隠さず、歩き出した。
彼が向かうのは、両親の姿をしたモノの場所。
「るーくん!」
「……大丈夫、伊吹さん」
怪異に近付いていく架瑠に、伊吹が声をかける。彼女に聞こえるように言葉をこぼすと、両親の姿をしているモノの前で足を止めた。
架瑠の霊視で、両親の姿がはっきりと見えてくる。
あの日から見えなかった、両親の顔。
今は――はっきりと見える。
心配そうに架瑠を見ている、両親の姿が。
『おっと、それ以上近付かないほうがいいぜ?』
すっと両親の前に立ちはだかったのは、『架瑠』だった。
自分そっくりなのに、笑い方も口調もすべて違う。
……だけど、わかる。
あれも自分自身なのだと。これは、あの日から自分自身と向かい合わなかった架瑠の罪。
「もう、両親を解放してよ……」
きっと、両親はあの日――架瑠を狙った通り魔に刺されてから、怪異に取り込まれ成仏できていない。
そのことを思うと、胸が痛くなった。
ぐっと自分の胸元に拳を作り、強い意志を宿した瞳で『架瑠』を見つめる。
彼は『ハッ!』と鼻で笑った。
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