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ナナに誓ったから、動物は飼わなかった。

友達の家に行き、どんな可愛い犬を見ても撫でたりしなかった。

触ると、その子が話しかけてくるのだ。

最初、友達がトイプードルを飼ったと言うので、会いに行った。

茶色い巻き毛の小さい小さいトイプードルは、ぬいぐるみのように可愛かった。

初めてトイプードルを見た私は、世の中にこんな可愛い生き物がいるんだと、感動した。

友達が抱っこしてみて、と言うので、恐る恐る手を伸ばした。

抱っこすると、温かみが伝わってきた。

可愛い、、、。

やっぱり動物って、可愛い。

私の腕の中で、トイプードルは震えてる。

何故、こんなに震えてるの?

不思議に思っていると、その家のソファーにトイプードルが現れた。

哀しそうな顔だ。

どうしたの?と問いかけると、その子は泣きながら、答えた。

『トイレが上手く出来なくて、皆んなが叩くの。』

そうなんだ、友達もお母さんもとても可愛がっているみたいなのに。

『本当なの?』

私は信じられなかったので、聞き返した。

『今、オシッコするから見ていて。』

私の腕からすり抜け、急に絨毯の上でオシッコをした。

友達はオシッコが終わらないのに、トイプードルを抱き上げ、小さなお尻を思いっきり叩いた。

キャイン、キャイン、キャイン

哀しそうな声が響く。

『止めて!』

私はトイプードルを奪い返した。

友達はビックリした顔をしている。

『駄目だよ、ぶったら。もっと優しく教えてあげて。』

友達は真っ赤な顔になり、あんたの犬じゃないでしょう!と吐き捨てるように言った。

友達の家を追い出された私は、トイプードルが心配でたまらなかった。

あんな怒り方しなくても、上手くトイレが出来たら餌をあげ、褒めてあげたら出来るようになるのに。

友達を恨んだ。

トイプードルは度々私の前に現れ泣いていたが、トイレが出来るようになって、怒られなくなったと嬉しそうに言いに来た。

友達とは2度と遊ぶ事は無かったけど、満足だった。

トイプードルが幸せで暮らしてるなら、それで良いのだ。
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