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そんな事もあって、私は動物に触れないようにもなっていた。

その子が苦しいと、見えてしまう。

何故か喜んでいる時でなく、辛い時
が見えるのだ。

やるせ無くなる。

外で野良猫を見ても、知り合いの所にインコがいても、決して触らなくなった。


家族とは相変わらず上手くいっていなかった。

父母、双子は犬は好きで、ある時柴犬を飼った。

私は可愛いくて、可愛くて仕方なかったが、絶対触らなかった。

家族は私を犬嫌いと思ったくらいだ。



ゆず、と名付けられた柴犬は幸せそうだった。

皆から可愛がられていた。

私もほっとしていた。

このまま、ゆずが幸せであって欲しい。

幸せでいて、と毎晩祈った。

しかし、双子のせいで、ゆずは悲惨な最後を迎えた。


どんなに躾をした犬でも、盲導犬クラスにならなければリードを離して着いて来はしない事がある。

双子はリードを離して散歩をしたがった。

それは、この犬は自分達に従っているという事を故事したかったようだ。

私は散歩など、着いて行っていないから、そんな事をしているとは夢夢思っていなかった。

ある日、それは起きた。

うちから300メートル先に、大きな一軒家がある。

そこでは、シベリアンハスキーがつがいで飼われていた。

メスは出産直後で、気が立っていた。

その家はいつも門が開かれていた。

そこに、ゆずは入ってしまったのだ。

何も分からないゆずは、メスに向かって行く。

メスは子供を守るため、唸り声を上げていた。

ゆずは頭を噛まれた。

それは、頭蓋骨を壊す力だった。


双子は私に助けてを求めた。

自分達では、どうにも出来ないからだ。

急いで現場に駆けつけた。

ぐったりした、ゆずの下半身だけ見える。

バットを持ってきたので、ゆっくりゆっくり近づいた。

私にもハスキーのメスは唸り声をあげる。

お願い、静かにしていて。

心からハスキーに祈ると、大人しくなった。

そーっと、そーっと近づき、ゆずの足を掴んで犬小屋から引きずり出した。

ゆずの意識は無い。

持って来たバスタオルで、ゆずを包んだ。

急いで獣医に向かったが、腕の中でゆずの意識は無かった。

ごめん、ゆず。

そう言いながら、とにかく獣医に走った。

ゆずは私の幻想の中に出てくる事は無かった。

何故かは分からない。

他の家族に思いの他、愛されていたからだろうか?


しかしこの事件は、うちの家族にかなりの衝撃を与え、うちの家族は動物を飼わなくなった。
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