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世界の半分、イラナイカ?
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夜のとばりが降りてどれほどの時間が経ったのだろうか。
時折隙間風に吹かれて点滅するロウソクの灯りと、雨音に混ざった雷鳴と共に窓から現れる青白い閃光が、
吸い込まれそうになるほど長く、広い廊下を照らしている。
俺の名はザイフリート。
魔王を討ち滅ぼさんとする人間界の希望――勇者である。
ここまで来るのに如何程の犠牲を払ってきたかわからない。
『城』に辿り着くまでに、仲間も皆失ってしまった。
戦士や魔法使いの死を無駄にしない為にも――頑張らなくてはならない。
不思議と、城に入ってからは一切の敵と鉢合わせしなかった。
永遠に続くかと思われるような廊下の、ちょうど中間辺りだろうか。
強大な魔力を感じるひときわ大きな扉の目の前に俺は立った。
「謁見の間」と書かれた扉は、俺を待ち構えていたかの如く、魔物の唸り声のような音を立てて開いた。
不気味な紫色の装飾……
遠過ぎるのか、暗くて視認できない部屋の奥と天井……
一歩一歩踏みしめるごとに、何度も反響して辺りに響く自分の足音……
そして歩みを進めるたびに色濃くなってくる強大な魔力が、俺に緊張と確信を与えた。
「(ここに……この奥に『奴』がいる!!)」
「よくぞ来た、ザイフリートよ!」
雷鳴と共に轟いた、高音も低音もゴチャマゼにしたようなおぞましい声に、俺は立ち止まり剣を抜いた。
次の瞬間、今まで暗闇に包まれていた奥が紫色に光輝き、高さ1フロア分はある広い階段と、その上の玉座が見えた。
その玉座には、黒紫のローブを身に纏い、悪鬼の髑髏の面をつけた、『強大な魔力の根源』がいた。
「お前が……お前が魔王なのか!」
「いかにも!わしが王のなかの王、魔王である。わしは待っておった。そなたのような若者があらわれることを!!」
男女とも区別がつかない「それ」は玉座から立ち上がると、ゆっくりと階段を降りてきた。
反響のせいもあるだろうが、只の足音にも凄まじい重圧感を感じる。
そして、俺の剣の切っ先から一尺もない距離まで来ると、俺を見下ろしながら魔王はこう言った。
「もしわしの味方になれば世界の半分をお前にやろう。どうじゃ?わしの味方になるか?」
「………………………………」
……マジっすか?
「え? くれるのか? 世界の半分?」
「えぇ、えぇ、くれてやりますとも! 他ならぬ勇者の為ですもの!」
「……くれるってことは、俺は世界の半分で――」
「えぇえぇ! 億万長者奴隷三昧、酒池肉林の乱交パーリナィで存分にフィバってくださいな!!」
「おぉぉぉぉ! マジかよ!! なるなる、俺はあんたの味方だ魔王!!」
「流石勇者様、話がお早い!」
俺は即座に剣を納めた。
へっへっへ……勇者になって魔王とやらをぶっ殺せば、姫と結婚、王族就任、スピード出世でいい感じー!! な人生が待ってると思っていれば、こんな所に近道があったなんてなぁ!
戦士? 魔法使い? 知らねぇよwww名前も覚えとらんわヴァーカwwwww
「では勇者様、この魔王が勇者様の為に用意した選りすぐりの美人臣下達を紹介しましょう。後ろをご覧ください! 」
おぉ、早速か、魔王も用意がいいぜ、フヘヘ……
俺は気分を高揚させながら、魔王に背を向け、自分がもと来た方を振り返った。
また、先程の呻き声が反響して聞こえるが、扉の方は暗闇で全く見えない。
……それに、扉の音が消えた後に足音が聞こえる様子も無く、聞こえるのは遠方で聞こえる雷鳴だけだ。
「……なぁ、魔王、その臣下とやらは本と……グゥッ!?」
「悪いね、これ『俺』の仕事なんだ。それに……お前なんかに『俺の物』を半分もやるわけないじゃん?」
振り向こうとした刹那……俺は魔王に抱きしめられ、俺の腹からは、俺が閉まったはずの剣の切っ先が飛び出した。
「……この、ひ…………ひひ…………ひきょう、もグゴッ!! 」
「ヒキョーでケッコー、魔王だからね。……じゃあね、良い夢みろよっ☆」
魔王は、振り返った俺の口に拳銃を突っ込んで黙らせた。
――パァンッ!!
俺の意識は途絶えた。
あぁ? 教会で復活だぁ? ねぇよ、んなもん。
時折隙間風に吹かれて点滅するロウソクの灯りと、雨音に混ざった雷鳴と共に窓から現れる青白い閃光が、
吸い込まれそうになるほど長く、広い廊下を照らしている。
俺の名はザイフリート。
魔王を討ち滅ぼさんとする人間界の希望――勇者である。
ここまで来るのに如何程の犠牲を払ってきたかわからない。
『城』に辿り着くまでに、仲間も皆失ってしまった。
戦士や魔法使いの死を無駄にしない為にも――頑張らなくてはならない。
不思議と、城に入ってからは一切の敵と鉢合わせしなかった。
永遠に続くかと思われるような廊下の、ちょうど中間辺りだろうか。
強大な魔力を感じるひときわ大きな扉の目の前に俺は立った。
「謁見の間」と書かれた扉は、俺を待ち構えていたかの如く、魔物の唸り声のような音を立てて開いた。
不気味な紫色の装飾……
遠過ぎるのか、暗くて視認できない部屋の奥と天井……
一歩一歩踏みしめるごとに、何度も反響して辺りに響く自分の足音……
そして歩みを進めるたびに色濃くなってくる強大な魔力が、俺に緊張と確信を与えた。
「(ここに……この奥に『奴』がいる!!)」
「よくぞ来た、ザイフリートよ!」
雷鳴と共に轟いた、高音も低音もゴチャマゼにしたようなおぞましい声に、俺は立ち止まり剣を抜いた。
次の瞬間、今まで暗闇に包まれていた奥が紫色に光輝き、高さ1フロア分はある広い階段と、その上の玉座が見えた。
その玉座には、黒紫のローブを身に纏い、悪鬼の髑髏の面をつけた、『強大な魔力の根源』がいた。
「お前が……お前が魔王なのか!」
「いかにも!わしが王のなかの王、魔王である。わしは待っておった。そなたのような若者があらわれることを!!」
男女とも区別がつかない「それ」は玉座から立ち上がると、ゆっくりと階段を降りてきた。
反響のせいもあるだろうが、只の足音にも凄まじい重圧感を感じる。
そして、俺の剣の切っ先から一尺もない距離まで来ると、俺を見下ろしながら魔王はこう言った。
「もしわしの味方になれば世界の半分をお前にやろう。どうじゃ?わしの味方になるか?」
「………………………………」
……マジっすか?
「え? くれるのか? 世界の半分?」
「えぇ、えぇ、くれてやりますとも! 他ならぬ勇者の為ですもの!」
「……くれるってことは、俺は世界の半分で――」
「えぇえぇ! 億万長者奴隷三昧、酒池肉林の乱交パーリナィで存分にフィバってくださいな!!」
「おぉぉぉぉ! マジかよ!! なるなる、俺はあんたの味方だ魔王!!」
「流石勇者様、話がお早い!」
俺は即座に剣を納めた。
へっへっへ……勇者になって魔王とやらをぶっ殺せば、姫と結婚、王族就任、スピード出世でいい感じー!! な人生が待ってると思っていれば、こんな所に近道があったなんてなぁ!
戦士? 魔法使い? 知らねぇよwww名前も覚えとらんわヴァーカwwwww
「では勇者様、この魔王が勇者様の為に用意した選りすぐりの美人臣下達を紹介しましょう。後ろをご覧ください! 」
おぉ、早速か、魔王も用意がいいぜ、フヘヘ……
俺は気分を高揚させながら、魔王に背を向け、自分がもと来た方を振り返った。
また、先程の呻き声が反響して聞こえるが、扉の方は暗闇で全く見えない。
……それに、扉の音が消えた後に足音が聞こえる様子も無く、聞こえるのは遠方で聞こえる雷鳴だけだ。
「……なぁ、魔王、その臣下とやらは本と……グゥッ!?」
「悪いね、これ『俺』の仕事なんだ。それに……お前なんかに『俺の物』を半分もやるわけないじゃん?」
振り向こうとした刹那……俺は魔王に抱きしめられ、俺の腹からは、俺が閉まったはずの剣の切っ先が飛び出した。
「……この、ひ…………ひひ…………ひきょう、もグゴッ!! 」
「ヒキョーでケッコー、魔王だからね。……じゃあね、良い夢みろよっ☆」
魔王は、振り返った俺の口に拳銃を突っ込んで黙らせた。
――パァンッ!!
俺の意識は途絶えた。
あぁ? 教会で復活だぁ? ねぇよ、んなもん。
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