這いよれ!魔王さん!

レイルガン

文字の大きさ
1 / 1

世界の半分、イラナイカ?

しおりを挟む
夜のとばりが降りてどれほどの時間が経ったのだろうか。
時折隙間風に吹かれて点滅するロウソクの灯りと、雨音に混ざった雷鳴と共に窓から現れる青白い閃光が、
吸い込まれそうになるほど長く、広い廊下を照らしている。


俺の名はザイフリート。
魔王を討ち滅ぼさんとする人間界の希望――勇者である。

ここまで来るのに如何程の犠牲を払ってきたかわからない。
『城』に辿り着くまでに、仲間も皆失ってしまった。
戦士や魔法使いの死を無駄にしない為にも――頑張らなくてはならない。


不思議と、城に入ってからは一切の敵と鉢合わせしなかった。
永遠に続くかと思われるような廊下の、ちょうど中間辺りだろうか。
強大な魔力を感じるひときわ大きな扉の目の前に俺は立った。

「謁見の間」と書かれた扉は、俺を待ち構えていたかの如く、魔物の唸り声のような音を立てて開いた。

不気味な紫色の装飾……
遠過ぎるのか、暗くて視認できない部屋の奥と天井……
一歩一歩踏みしめるごとに、何度も反響して辺りに響く自分の足音……
そして歩みを進めるたびに色濃くなってくる強大な魔力が、俺に緊張と確信を与えた。

「(ここに……この奥に『奴』がいる!!)」




「よくぞ来た、ザイフリートよ!」


雷鳴と共に轟いた、高音も低音もゴチャマゼにしたようなおぞましい声に、俺は立ち止まり剣を抜いた。
次の瞬間、今まで暗闇に包まれていた奥が紫色に光輝き、高さ1フロア分はある広い階段と、その上の玉座が見えた。
その玉座には、黒紫のローブを身に纏い、悪鬼の髑髏の面をつけた、『強大な魔力の根源』がいた。


「お前が……お前が魔王なのか!」

「いかにも!わしが王のなかの王、魔王である。わしは待っておった。そなたのような若者があらわれることを!!」

男女とも区別がつかない「それ」は玉座から立ち上がると、ゆっくりと階段を降りてきた。
反響のせいもあるだろうが、只の足音にも凄まじい重圧感を感じる。
そして、俺の剣の切っ先から一尺もない距離まで来ると、俺を見下ろしながら魔王はこう言った。


「もしわしの味方になれば世界の半分をお前にやろう。どうじゃ?わしの味方になるか?」

「………………………………」




……マジっすか?

「え? くれるのか? 世界の半分?」 

「えぇ、えぇ、くれてやりますとも! 他ならぬ勇者の為ですもの!」

「……くれるってことは、俺は世界の半分で――」

「えぇえぇ! 億万長者奴隷三昧、酒池肉林の乱交パーリナィで存分にフィバってくださいな!!」

「おぉぉぉぉ! マジかよ!! なるなる、俺はあんたの味方だ魔王!!」

「流石勇者様、話がお早い!」


俺は即座に剣を納めた。
へっへっへ……勇者になって魔王とやらをぶっ殺せば、姫と結婚、王族就任、スピード出世でいい感じー!! な人生が待ってると思っていれば、こんな所に近道があったなんてなぁ!

戦士? 魔法使い? 知らねぇよwww名前も覚えとらんわヴァーカwwwww


「では勇者様、この魔王が勇者様の為に用意した選りすぐりの美人臣下達を紹介しましょう。後ろをご覧ください! 」


おぉ、早速か、魔王も用意がいいぜ、フヘヘ……

俺は気分を高揚させながら、魔王に背を向け、自分がもと来た方を振り返った。
また、先程の呻き声が反響して聞こえるが、扉の方は暗闇で全く見えない。

……それに、扉の音が消えた後に足音が聞こえる様子も無く、聞こえるのは遠方で聞こえる雷鳴だけだ。


「……なぁ、魔王、その臣下とやらは本と……グゥッ!?」
「悪いね、これ『俺』の仕事なんだ。それに……お前なんかに『俺の物』を半分もやるわけないじゃん?」

振り向こうとした刹那……俺は魔王に抱きしめられ、俺の腹からは、俺が閉まったはずの剣の切っ先が飛び出した。

「……この、ひ…………ひひ…………ひきょう、もグゴッ!! 」
「ヒキョーでケッコー、魔王だからね。……じゃあね、良い夢みろよっ☆」

魔王は、振り返った俺の口に拳銃を突っ込んで黙らせた。


――パァンッ!!


俺の意識は途絶えた。

あぁ? 教会で復活だぁ? ねぇよ、んなもん。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった

あめとおと
ファンタジー
異世界に転移した主人公が得たスキルは【地図作成】。 戦闘能力ゼロ、初期レベル1。 冒険者ギルドでは「外れスキル」と笑われ、 新人向けの雑用クエストしか回ってこない。 しかしそのスキルは、 ダンジョンの隠し通路、未踏破エリア、消えた古代文明の痕跡まで“地図に表示する” という、とんでもない能力だった。 生き残るために始めた地味な探索が、 やがて世界の秘密と、国家すら動かす大冒険へ――。 これは、 戦えない主人公が“冒険そのもの”で成り上がる物語。 同作品を「小説家になろう」で先行配信してます。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...