継ぐマホウ 〜曇り所により片頭痛、気がついたら異世界〜

パキ・パキ

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来る征戦の騎士、明かされる聖剣の未知

40話 反撃開始

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 シャーリーと騎士の会話を聞いた七篠は王城を弾かれるようにして後にし、コウトを探して街を走っていた。

――じゃあ僕は先に帰ってる。適当に街を見ながら帰るから、僕のことは気にしないでいいよ。

 あのときのコウトの言葉が頭の中で繰り返される。

「コウト君ッ……」

 彼が心配だ。騎士は門を突破されたと言っていた。転移者を狙う“何者か”はすでにこの街に入り込み、自分たち転移者を探しているのかもしれない。

 もしコウトが侵入者と出会ってしまったとしたら。マナ知覚と風の魔法、それと納屋で見つけていた指輪のみで彼は戦えるだろうか?

 最悪な想像をかき消すように首を振り、夢中になってコウトを探す七篠。路地を抜け、門に続く大通りに出た彼女の目に奇妙な光景が飛び込んできた。

 制御者を失いパニックを起こし暴走したマナオオカミと、その暴走に巻き込まれ止めることができないでいる何人かの騎士たち。

 中でも特に異質なのは立ちつくすローブの人のようなもの。それらは皆、変な仮面をしている。あれは確かペストマスクといったか。

 七篠はハッとしてあたりを見渡すがそこにコウトの姿は見えない。とその時、爆風とともにペストマスクの怪人たちが吹き飛ばされてきた。

 足下に転がったそれらは黒いもやとなって霧散した。そこには何も残らない。

「もしかして、これ……」

 それを見た彼女はコールンでの夜にコウトが語ったことを思い出した。あの時、動けないでいたコウトの体から靄が表れ、その靄が怪人となって谷嶋を殺したと震える声で話してくれたのだ。
 闇の中で確かに感じた体温と震え、掻き抱いたときに手のひらで感じた背骨の凹凸おうとつ。今でもしっかりと憶えている。

 爆風に舞い上げられた怪人のうち1体に金色の髪をした男が迫る。その人物は怪人を剣で刺し貫き、ダァンッ、という大きい音を伴った強い踏み込みで空高く跳躍し、そのまま壁の外へと消えていった。

「今のはコウト君じゃない。でも、もしかしたら壁の外に……!」

 七篠は壁の外へと走り出す。自分に気づいて襲ってくるマナオオカミや騎士を躱し、退けようとするが人数差もあり埒が明かない。

「邪魔ッ!!」

 街なかで大技を使うわけにもいかず、手間取っていると、背後から飛んできた紫電がマナオオカミたちを刺し貫き無力化した。

「……」

 七篠は振り向かずに、少しバツの悪そうな顔を作る。彼女には紫電を放ったのが誰なのか振り向かずとも理解できていた。“彼”に助けられ、強い憧れと恋慕の眼差しを向ける人。自分と同じ人を想う、無視できない存在。

「急ごう。コウトが心配だ」

 白いレースアップブーツをコツコツと鳴らしながら歩いてきたのはこの国、ウォークの王女エウレナだった。

「……」

 この際呼び捨てなのは咎めない。2人は門へと急いだ。



――――――



 聖剣で地面に縫い付けられた怪人が靄へと戻り土煙に混ざる。

 聖剣を持つものは死ぬことができなくなる。受けた傷は死をトリガーに快癒し、体は活動を再開する。

 殺しても死ぬことがなかったレノンの姿を認めたコウト。彼のもとに怪人たちが戻り、レノンを見つめる。
 そしてコウトは再び怪人をけしかけようとした。頭に響く声のままに、濁った目で。

 ……しかし怪人たちは動かなかった。

「グッ――アァッ!」

 コウトが苦しみだしうずくまる。彼の脳内で大きくなる声はやがて限界に追い込み、その脳をスパークさせた。

 熱くなる体に、頭を砕かれるような激痛、吐き気。一瞬だったその痛苦つうくも彼には永遠に感じられた。

「ハァ、ハァ……地獄かよ……」

 苦しみの後、謎の声の支配から開放されたコウトは吐き捨てるようにそう言った。

「コウト!!」
「コウト君!!」
「!! エウレナさん、七篠さんまで……。よかった、時間は稼げたみたいだ」

 エウレナと七篠は膝をつくコウトを見つけて遠くから呼びかける。コウトはエウレナが駆けつけるまでの時間稼ぎという目的を達成できたことにひとまず胸をなでおろすが、だからといって戦うことをやめようとはしない。

「もういい、戻ってくれ! これ以上君に戦ってほしくないんだ!」

 コウトのところへ駆け寄ろうとするが、レノンの騎士に道を塞がれてしまう。

 そんなエウレナの声にコウトは心の中でつぶやく。

――とは言っても……いまのレノンあいつと対話なんてできそうにはないしな。

 レノンを見やると全身からマナが溢れ出し、そのマナに耐えきれずに感情が爆発している。コウトのみを見据えた目や、青筋を立てている様から彼自身冷静ではないようだった。

 最初に見たときから、レノンは常に自分の感情を持て余すかのようにただ爆発させている。コウトは彼の態度や言葉からそのことを色濃く感じ取った。
 これは魔法などを使わず、彼自身が掬い上げた小さな違和感だった。

「……聖剣が原因なのか?」

 そしてその理由を聖剣だと考えた。
 原理は分からないが、怪人たちが殺したはずの彼が復活してからそれはさらにひどくなっているようだった。

「ダンザブロー!? いつの間にここに、ってちょっと待って!」

 七篠のそんな声が聞こえたあと、コウトの体に衝撃が走り、吹き飛ばされる。
 同時に先程までコウトの体があった空間を光の刃が通っていった。レノンが放った斬撃だ。

「危なかった……ありがとうな」

 ダンザブローがコウトの位置をずらさなければ命中していたことだろう。ダンザブロウを撫でてやると彼は甲高い声で鳴いた。

 その時、コウトはあることを思い出した。不敵に笑ってみせ、立ち上がる。

「……よし、あいつはまだやる気みたいだ。ダンザブロー、少し付き合ってくれ」

 コウトはそう言うともう一度鳴いたダンザブローを抱え、ローブを羽織り直した。
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