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詠唱 : コード
しおりを挟む「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
小さな洞窟に一人の男の叫び声が鳴り響いた。誰の叫び声かって?当然俺の叫び声だ。
「いやいや本当。逆らってスンマセン。もう二度と顔を見せないんでどうかこのまま帰らせてください」
背中にサザンの冷ややかな視線を感じながらも、全力で頭を地面に顔を埋める。もはや俺のプライドなど遠い空の彼方だった。
ちなみに今の俺は右腕を無くしている。賊の住処に入った瞬間に消失……というか焼失した。
「ヒャハハハハハ!!兄貴に逆らうからこんなことになんだよバカがぁ!!!」
如何にも三下っぽい奴がそんなことを言ってくるが、ビックリするほど心に響かなかった。
「だいたいよぉ〜コード持ちに普通の人間が敵うわけねえだろ〜?」
その言葉に同じく三下風な奴らが大声で爆笑していた。
そこで初めて俺の腕を焼失させた、賊の頭領が口を開く。
「余所者に頼るとは全く馬鹿な連中だなオイ!しかもこんな雑魚に縋るとは!泣けちゃうねえ!」
そう言って賊の頭領が俺の頭を踏みつける。
「詠唱 炎 : 焼却」
男がそう言うと俺のもう片方の腕が勢いよく燃え上がった。
「う……ぐぁあ……あぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
あまりもと痛みにその場でのたうち回ってしまう。側からみれば滑稽なことこの上ないだろう。
実際に賊どもは手を叩いて笑っているし、俺を焼いている本人もそれはそれは楽しそうな笑みを浮かべていた。
そしてやがて炎が収まる。その時には俺は両腕を完全に失っていた。
「おいおいおいおい!!威勢良く乗り込んできてこの程度かよ!?ったくこのままじゃダルマになっちまうぜぇぇえ!?」
そう言って次に俺の足を燃やそうとする。しかしーー
「テメェ!!それ以上はやめろ!」
サザンが横から乱入してきた。
「お前……出てくるなって言っただろうが!」
「うるせぇ!例えなす術もなくゴミみたいにやられてようとも、見ず知らずの俺たちを助けてくれようと立ち上がった奴を見捨てられるかよ!!」
なんかちょっと毒含んでませんそのセリフ?
「俺だってコードは使えんが、戦うことぐらいはできる!」
そう言って懐からナイフを取り出す。そしてそのままサザンは炎を使う賊へと斬りかかる。
しかし、刃物を向けられた賊は、余裕の笑みで自分に向かってくるサザンを見つめていた。
「やめろ!!サザン!!」
「うるせえ!!俺は絶対にあいつらを取り返すんだ!!」
俺の言うことも聞かずにサザンは奴へと突進していく。そのナイフがもう少しで賊へ届こうとした時、賊の口元が思いきり歪んだ。
「馬鹿かぁ!!後ろの奴の二の舞になりな!!詠唱ファイ『第一の罪 :傲慢』
瞬間、一瞬にして賊の両腕が燃え始めた。
「ギャァァァァァァア!!なんだ!?腕が!俺の腕がぁぁぁぁぁぁあ!!!」
先程とは打って変わって今度は賊の方が地面をのたうちまわっていた。なるほど。やっぱり滑稽だ。
「一体何が……」
突然目の前で燃え出した賊を呆然と見つめながら、サザンがそんな言葉を吐いた。そしてまさかという顔をした後、ふと俺のほうを向いた。
「はぁ……結構ムカついてたからダルマにされてから逆にダルマにしてやろうと思ってたんだけどな……なんというか……黙っててごめんな。でもかっこよかったぜサザン」
「お前……腕は……」
そう言ってサザンの見つめる先には先程失ったはずの俺の両腕があった。
「ああこれか。実は俺もそこの目の前でのたうちまわってる奴みたいなことができるんだ。コードっていうのか?本当黙っててごめんな」
「……」
信じられないと言った様子で俺の腕を見つめるサザン。
しかし説明は後でするとして、まずは目の前で両腕を失っている賊の元へと向かう。
「よう。元気そうだな」
「お、お前……コード……」
「あぁ。やっぱさっきみたいな奴をコードって言うんだな。うん。ご察しの通り俺も使えるみたいだわ」
そう言って賊の髪の毛を鷲掴みにする。
「で?両腕を失った気分はどうだ?見た目的には超似合ってるぜ?」
俺がそう言うと、男が唇を震わせながら叫んだ。
「お前らぁ!見てないで俺を助けろぉ!!」
その声にいままで呆然と立ち尽くしていた賊たちが我に返る。そして各々武器を持ち俺に襲いかかってきた。
「危ねえ!!」
割り込んでこようとしたサザンをしかし片手を挙げて静止する。
そして俺は賊たちに腕を、足を、体を、顔を、首を滅多刺しにされる。その光景に奪われていた村の女たちが思わず顔を手で覆っていた。
しかし次の瞬間
「第一の罪 :傲慢」
その言葉と共に賊たちは身体中から血を吹き散らして倒れこむ。一方の俺は受けた傷を再生させコード使いの賊の髪の毛を鷲掴みにしていた。
「お、お前……一体なんなんだよぉ……」
震えた声でそう訊ねてくる賊に俺は特に言葉を返さず、掴んでいた髪の毛を離す。そして死んだ賊どもから武器を奪い、頭領の残った右足、左足、そして最後に首を切断する。賊は何か叫んでいたが俺の耳には入らなかった。
そしてサザンの方へと振り返る。
「これで、約束は完了だ」
俺がそういうとまだいろいろと納得できていない様子だったが、やがてサザンは真剣な眼差しで頭を下げてきた。
「何が起こったか俺にはまるで分からん。だがお前が俺たちを助けてくれたのは確かだ。本当に……本当に感謝する。ありがとう」
力強く放たれた感謝の声に、不思議と思わず泣きそうになってしまう。しかしその前に俺の後ろから一人の女性がサザンの元へと走っていく。
「あなた……!!!」
「カナリア!!!!よかった!!無事だったか!!」
どうやらサザンの奥さんのようだ。二人は幸せそうに泣きじゃくり、抱き合っていた。なんとも幸せそうな光景だ。リア充爆発しろ。
そうしてしばらく気まずい空気に晒されていると、サザンの奥さんがこちらへ歩いてきた。
「本当に……本当にありがとうございました!最初はなんて頼りないゴミクズなんて思ってすいません!あなたは私たちの英雄です!」
「…………」
なにこれ喧嘩売ってんの?感謝されてんの?いま俺が受けた心の痛み傲慢で反射しちゃうぞ?
「本当に俺からも、もう一度礼を言う。みんなもほらちゃんと礼を言え」
サザンがそう言うと攫われていた女性たちが集まってきて、全員から一斉に感謝された。
それはなんとも……なんとも心地の良い気分だった。
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