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第1章〜剣と魔法の世界〜

第5話~タピオカとの遭遇~

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 試しに近くの木に『狙撃』を使ってみる。

 あまり威力は出ず、矢が少しだけ刺さったぐらいだった。

 次はかなり遠くの方にある木に向かって打ってみる。矢は狙い通り真っすぐ飛んでいき、ポトッ。

 俺達と木の真ん中あたりで地面に落ちてしまった。

 俺が素の力が弱いのがバレちまった。

 次は情報の力を使い、自らの肉体の情報を書き換え、超強化する。

 そのまま次の矢を構え、世界にアクセスする。そして、角度と距離をはかり、渾身の矢を放つ。

 ドッカーンという音とともに矢に撃ち抜かれた木は大きな穴を開けて、倒れてしまった。

 「スキルってスゲー!!」

 スキル一つだけでここまで強くなれるのか。

 俺は興奮する心を抑え、歩き出す。

「アルンのへなちょこ弓矢が強くなったね」

 ヒルメがそんな心が痛くなるような言葉を言ってくる。

「スキル、私も覚えたい」

 ヨミは自分の水晶を見ながらつぶやく。

「モンスターに出会ったらそいつを倒してみればいいんじゃないか?」

「うん」

 そのまましばらく歩いていると、人の話し声のようなものが聞こえてきた。

 俺たちは近くの岩に隠れて様子をみる。

「あー、暇だなぁ。なんもすることねぇ」

 白くて丸いぷよぷよした生物が人の言葉を話している。

 そう、こいつらがタピオカだ。

 今のところ二匹しか見当たらないが、群れで行動するそうなので、ほかにも仲間がいるはずだ。

 というかこいつらタピオカよりも白玉団子なんだが、いやそんなことはどうでもいい。

「おい、なんか人間のにおいがしないか?」

 まずい、バレたか。

「そこにいるんだろ。出て来いよ」

 俺は世界にアクセスし、キーボードを取り出す。そして『透明化』と打った。

 すると、体が透明になって、周りから見えなくなった。

「あれ、いない。たしかに人間のにおいはするんだけどなぁ?」

 透明化した俺たちを見つけられず、戸惑うタピオカ。

 近くで見てみると、意外とかわいい顔をしている。

 確かこいつらの天敵はミルクティーだったはず。

 俺はキーボードに『ミルクティー』と打ち込む。すると、目の前にミルクティーが入った透明なカップが出現した。

「げっ、ミルクティーだ。みんな逃げろー!!」

 ミルクティーを見たタピオカはとんでもない速度で逃げていった。

 と、思っていたらタピオカたちが逃げていった方向に何やら普通のタピオカとは別格のオーラを放つタピオカを見つけた。

 そいつは大太刀を持っていて、透明化しているはずの俺達を真っすぐ見つめている。

 まさか、バレている?いや、そんなことは無いはずだ。俺の透明化を見抜けるのは俺と同等レベルの神や魔法使いぐらいしかいないのだから。

 いや待て、まさかあのタピオカはそんなにすごい魔法の使い手なのか?

 と、そのタピオカは大太刀を構えてこちらに向かって飛びかかってきた。

 俺は収納魔法を使い、異空間に収納しておいた刀を取り出し、大太刀を受け止める。

「っ!?」

 これは!!
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