男になった元悪役令嬢と召喚勇者

七曜

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95.「宵闇」side.シュヴァルト&ヘルマプロディートス神。※

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 無理をさせているのも、言葉で彼を縛り付ける己の浅ましさも理解はしていました。
 しかし、受け入れられ、言い表せない感情の波と意識的にも無意識的にも誘う言動に突き動かされて今では自制が全く効かない。
 何度か守護神が止める声も聞こえた気がしますが、結局は彼も私とさして変わらないー…。

 それをほんの少しだけ可笑しく思いながら、温かな内部を堪能するように腰を緩やかに打ち付けていると、愛しく健気な彼の体がビクビクと反応して揺れる。
 それだけでも自分の欲が膨らむのに、普段は意志の強さと優しさを感じさせる瞳は涙と快楽で酷く滲み、色付いた目元と相まって壮絶に色気を感じさせる。
 引き寄せられるように唇を啄むと逆に唇を吸い返されて、どうしようもない気持ちが溢れて胸が満たされ、体が熱くなるのは最早自然にも思えた。

 コウセイを心底溺れさせたいのは私の方なのに、実際に溺れているのは此方ばかりでー…。

 既に満杯を通り越して際限無く零れ続ける愛おしさのままに何度も口付け、彼が気に入っている奥を穿っていると、やがて小さい悲鳴が聞こえて中が急激に締まる。
 極めた際に力が入った内壁は中々緩まらず、少し不思議に思いながら半ば無視をしていた自分の欲望も吐き出そうと腰を引いた瞬間、勢い良く抱きつかれて固まった。

「…っ、……ぅ…シュ…ヴぁ…ぁ…は…っ」

「…コウセイ…?」

 動かないで欲しいのだろうとは理解し、また彼に抱かれるのを嬉しく思いながら暫く待っていると、何かを伝えようとして上手く喋れないままに小刻みに震える腕の力が強まり、そしてそれも限界を迎え脱力するように腕から力が抜けてソファーに落ちる。
 見下ろした先には頬を紅潮させ、荒く息を吐き出しながら、辛そうにも明らかに快感に溺れ切っている姿が見て取れた。
 ぞくりと体内に蠢く何かと、ざわざわと心を掻き乱す何かは、決して良い部類の感情では無いのでしょうが、何処かでそれを許容する自分がいるのも事実でー…。
 非常に愛らしい様子に無意識に近い形で腰を動かすと脱力したのも手伝ってか、とても素直に声を上げてくれる。

「あっ…あア、ぁぅ…く、あ、あ、あ、いっ…ぁ、ぁ…ぃ…っ…ぅあ…アぁ…ん…あ…!」

 余すところなくコウセイを見つめ続けていれば充足感に満たされ、数回動いただけで自分の高まった熱の開放感を覚えた。

「ンッ…ぅ…く…っ」

 己の快楽に重きを置こうとは思わずも、彼の中は酷く心地良くて、満たされる心と相まって深い感覚を奥底から呼び覚まされる…。
 余り本人には伝わっていないようにも思えますが、生来精神共に不感症に極めて近かった過去からすれば驚くばかりだと、今ではどうなっているのかと疑うばかりの尽きない欲望を注ぎ込むと濡れ切った愛しい人の顔が更に歪む。

「ぁ…ああっ!や…っ、ぁああ……ま、た…ぃ…ぅ…くっ…!」

 肉体的な限界、或いは彼の性質的な部分からの拒絶の声を上げながらも私を食らい込んで離さない、私を選んでくれたという現実に、暗い歓喜を覚える。
 喜びを抱えたまま、出さずに昇ってしまったせいか何処か焦点の合わないコウセイの唇に口付け、彼の心臓の上から腹部へと濡れた肌をゆっくり撫で下ろす。
 今のままでは彼を孕ませる事は出来ないが、もし許容してくれるのであれば…今直ぐにでもと…考えてしまう。
 選択肢は本人に委ねる気ではあるものの仄暗い想いが浮かんで消えてと、腕の中にコウセイを閉じ込めながら全く余裕の無い心境に苦笑した。







 シュヴァルトの苦笑に同調しながら、半ば失神している勇者の姿に頭を抱えたくなった。
 間違いなく共犯ではあるのだが、何度か止めはしたと誰かに言い訳をしたい気分だ。
 初体験に近しいのだからシュヴァルトと同様にある程度の手加減は必要だと最初は間違いなく思っていた。
 しかし、殆ど同化してしまった後では抗えない誘惑もあり、未だに抱き足りないと感じているのだから同罪だろう…。

「シュヴァルト…、気持ちは分かるし、私が言っても説得力はないだろうが…やり過ぎだ。」

「分かっています。」

 返答はあるものの、何処か上の空な返答と全く勇者から外れない視線に苦笑が止められない。
 合意で無ければ罪に問われるのではないかという惨状を多少は憂うと同時に、よくもまあ聖なる者、正しくは血統の者を汚し…半分は手に入れた充足感もある、が…。

「やはり足りないと感じさせるのは、勇者の魅力なのだろうか?本当に初心者かい?」

「初心者でなければ、相手の者を探し出さねばならない所でした。」

「協力は別にするけどさ、存在しなくて良かったと思う良心はあるな…。」

 余り、本人に聞かせられない部類の会話をしながら断って体の使用権を少しばかり拝借すると勇者の中から自身を引き抜く。
 体を借りていなくとも感覚はかなり共有されているのだが、自分で動くと自制が出来ない感覚をより実感しつつ、衣類を整えると勇者を抱き上げ湯殿へ向かって歩き出す。

「今は無いが、ある意味で避妊具が必要なんじゃないかと思うよ。」

「合流出来れば、リリーに聞いてみます。知識は豊富ですので。」

 シュヴァルトの返答にあの令嬢が歓喜する姿と、勇者が崩折れそうな未来が浮かんで少し笑えた。
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