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6.「光」
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とても綺麗な水面が目の前にあった。
水の向こう側には晴れ渡った空と色とりどりの花が咲き、村の皆と両親、そして妹が幸せそうに笑っている。
俺もそちらに行きたいー…。
そう思うのだが、何故か全く動けない。
まるで、誰かに捕まっているようで、けれど、嫌な感じはせず、寧ろ心地良いぐらいだ…。
振り切る気にもなれずに遠ざかる水面を只々、穏やかな気持ちで眺めていたー…。
口の中に湿った感触があり、溢れそうになった液体を思わず飲み込む。
水だと分かった時には喉が酷く乾いている事にも気がついた。
体が求めるままに与えられた分を飲み干してしまい、もっとと…強請るように舌を動かすとビクつく気配がして、離れた。
「…ソ…ル…?」
「…ん……?…マー…レ、…ス…?」
「ソル!良かった…!」
視界ははっきりしないが、マーレスの黒い瞳と髪が赤黄色の光に照らされている。
パチリと火が爆ぜる音に焚き火でもしているのかと、今日の見張りの交代は何番目だったかと考えても思い出せない。
ここは何処だと視線が彷徨ったせいか安心させるように背中を軽く撫でられ、何となく座った状態で横抱きにされているのが分かった。
「大丈夫だ。何も心配いらないから眠ってくれ。」
「わ…り…、みず…」
温かい上に猛烈な眠気に意識は落ちそうな気配もあるが、まだ、喉が乾いている。
欲するままに口にすると水袋を差し出してくれたのだが、受け取ろうとして上手く体が動かせなかった。
不思議に思っていると、マーレスが逡巡を見せた後に水を煽り、口移してくれる。
止める間も無く顔が近付き、こんな事をさせて申し訳ない気持ちが無い訳じゃなかったが、正直、有難さと無意識の欲求のまま喉を鳴らして遠慮無く飲み干す。
何度かに分けて水を貰う内に漸く状況を思い出し、満足して目を閉じたー…。
「マー…レスが、いき…てて…よかった…。」
「っ…それは、俺もだ…!ソル!死ななくて良かった、助けてくれて…ありがとう…。」
嗚咽混じりの礼に心が温かくなる。
礼を言いたいのは此方もだが、反して意識が徐々に遠のいて行く。
ああ、生きてるなら、起きた時にまた言えば良いか…。
頭に浮かんだ考えに安心して、深い深い、人生で一番てぐらいの眠りに落ちて行った。
次に目覚めた時、見知らぬ天井が目に映り、横を向くと何故か直ぐ隣にマーレスがいた。
どうやら、同じベッドで眠っているようだが、毛布に包まれた俺はほぼ全裸だ。落ち着かないにも程がある。
あちこちに包帯を巻かれた感覚があるから、手当の都合で脱がせたんだろう。
熱が出てるのか少し寒気があって人肌は温かくて、この謎の状態も助かるっちゃ助かるが…マーレスはそこそこ人との距離感が広かったような気がする。
境遇的に人を踏み込ませない部分があったってか、まあ、色々あったし、眠れてる様子だから別に良いか…。
ぼんやりと納得しながら、間近の寝顔を見つめると起きてる時よりかは随分とあどけなく感じた。
年は確か十八だったか、その割には随分と大人びてしまった。やはり、浮かぶのは労いの気持ちで、まだ痛むが何とか動いた腕を伸ばして軽く頭を撫でてやると睫毛が揺れて口許が弧を描く。
緩んだ顔も珍しい。無表情が常駐みたいな所があったからな…。
「この先…どうなるか…わかんねーけど…少しでも幸せに…。」
本来ならば魔王を倒した後、村のあった場所へと帰り、村の皆を弔いながら余生を一人過ごそうと思っていた…。
だが、マーレスが幸せになるか、せめて落ち着ける場所が見つかるまでは一旦それは白紙に戻そう。でなければ、心配で何も手につかない気がする。
そして、考えなければならない事が増えた。魔王を倒し、満身創痍で考えるには難しい問題だが…テルスが言っていた言葉。今後のサルワトール帝国の動向だけは注意して置くべきだろう。
どうするかはまだ、決められないが…思ったよりも生きる理由があって、自然と笑っていた。
水の向こう側には晴れ渡った空と色とりどりの花が咲き、村の皆と両親、そして妹が幸せそうに笑っている。
俺もそちらに行きたいー…。
そう思うのだが、何故か全く動けない。
まるで、誰かに捕まっているようで、けれど、嫌な感じはせず、寧ろ心地良いぐらいだ…。
振り切る気にもなれずに遠ざかる水面を只々、穏やかな気持ちで眺めていたー…。
口の中に湿った感触があり、溢れそうになった液体を思わず飲み込む。
水だと分かった時には喉が酷く乾いている事にも気がついた。
体が求めるままに与えられた分を飲み干してしまい、もっとと…強請るように舌を動かすとビクつく気配がして、離れた。
「…ソ…ル…?」
「…ん……?…マー…レ、…ス…?」
「ソル!良かった…!」
視界ははっきりしないが、マーレスの黒い瞳と髪が赤黄色の光に照らされている。
パチリと火が爆ぜる音に焚き火でもしているのかと、今日の見張りの交代は何番目だったかと考えても思い出せない。
ここは何処だと視線が彷徨ったせいか安心させるように背中を軽く撫でられ、何となく座った状態で横抱きにされているのが分かった。
「大丈夫だ。何も心配いらないから眠ってくれ。」
「わ…り…、みず…」
温かい上に猛烈な眠気に意識は落ちそうな気配もあるが、まだ、喉が乾いている。
欲するままに口にすると水袋を差し出してくれたのだが、受け取ろうとして上手く体が動かせなかった。
不思議に思っていると、マーレスが逡巡を見せた後に水を煽り、口移してくれる。
止める間も無く顔が近付き、こんな事をさせて申し訳ない気持ちが無い訳じゃなかったが、正直、有難さと無意識の欲求のまま喉を鳴らして遠慮無く飲み干す。
何度かに分けて水を貰う内に漸く状況を思い出し、満足して目を閉じたー…。
「マー…レスが、いき…てて…よかった…。」
「っ…それは、俺もだ…!ソル!死ななくて良かった、助けてくれて…ありがとう…。」
嗚咽混じりの礼に心が温かくなる。
礼を言いたいのは此方もだが、反して意識が徐々に遠のいて行く。
ああ、生きてるなら、起きた時にまた言えば良いか…。
頭に浮かんだ考えに安心して、深い深い、人生で一番てぐらいの眠りに落ちて行った。
次に目覚めた時、見知らぬ天井が目に映り、横を向くと何故か直ぐ隣にマーレスがいた。
どうやら、同じベッドで眠っているようだが、毛布に包まれた俺はほぼ全裸だ。落ち着かないにも程がある。
あちこちに包帯を巻かれた感覚があるから、手当の都合で脱がせたんだろう。
熱が出てるのか少し寒気があって人肌は温かくて、この謎の状態も助かるっちゃ助かるが…マーレスはそこそこ人との距離感が広かったような気がする。
境遇的に人を踏み込ませない部分があったってか、まあ、色々あったし、眠れてる様子だから別に良いか…。
ぼんやりと納得しながら、間近の寝顔を見つめると起きてる時よりかは随分とあどけなく感じた。
年は確か十八だったか、その割には随分と大人びてしまった。やはり、浮かぶのは労いの気持ちで、まだ痛むが何とか動いた腕を伸ばして軽く頭を撫でてやると睫毛が揺れて口許が弧を描く。
緩んだ顔も珍しい。無表情が常駐みたいな所があったからな…。
「この先…どうなるか…わかんねーけど…少しでも幸せに…。」
本来ならば魔王を倒した後、村のあった場所へと帰り、村の皆を弔いながら余生を一人過ごそうと思っていた…。
だが、マーレスが幸せになるか、せめて落ち着ける場所が見つかるまでは一旦それは白紙に戻そう。でなければ、心配で何も手につかない気がする。
そして、考えなければならない事が増えた。魔王を倒し、満身創痍で考えるには難しい問題だが…テルスが言っていた言葉。今後のサルワトール帝国の動向だけは注意して置くべきだろう。
どうするかはまだ、決められないが…思ったよりも生きる理由があって、自然と笑っていた。
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