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27.「距離感」
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「大好きだ、ソル。」
あどけなく、純粋に向けられた好意は心に響いて何の違和感もなく溶け込んでいった。
本人に深い意味は無くて、子供が親を思うように、弟が兄を思うように、空気のような自然な気持ちだったんだろう。安心したように眠ってしまったのがその証拠で、煩くなった心臓にこっちが戸惑うばっかりだ。
「ちょっと罪作りだぞ、マーレス…。」
淡く、花が開く前の蕾のような感情と、咲く筈も無い花に胸が痛んだ気もしたが、大した事じゃないと俺もそのまま目を閉じて、隣にずっとマーレスがいてくれんのは嬉しいなと、それだけは素直に喜べた。
人が動く気配に目を覚ますと、驚いた表情のマーレスと視線が合って一瞬寝ぼけたまま見つめ返し、寝る前の事を思い出すと何だかおかしくなってしまって笑いながら声を掛けた。
「おはよう、マーレス。」
「ああ…おはよう、ソル。と言っても、夕方だが…夕飯貰って来ようか?」
「そうだな、俺も一緒に行くわ。」
ふあっと欠伸をしてから起き上がると、マーレスもそれに合わせて起き上がったんだが、なんか雰囲気がよそよそしい。
どうしたんだとベッドに座ったまま首を傾げて、そう言えば返事をしていなかったと思い出す。
「俺もマーレスが好きだ。」
「…ソル?」
「いや、返事をしてなかっただろ?」
「確かに、そうだな…。」
「うん。でさ、一緒にいるのは嫌じゃないし、寧ろ今、目の前から消えられたら見つけ出すまで探す。夜の情報収集は必要じゃないのもあるが、マーレスが嫌ならそもそも行かない。嫌だったとは思って無かった、ごめんな。んで、他の人との子供だったか…どの道、旅が終わったら村で一人で過ごすつもりだったから心配ねぇよ。つか、今の状態のこの世界に子孫を残したくないってのもある、不幸にしちまいそうで…。マーレスがずっと一緒に旅がしたいって思ってくれるなら、俺も喜んで一緒に旅が…マーレス?」
旅がしたいと締め括ろうとしたんだが、その前に何故かマーレスがベッドに両手をついて項垂れた。気分でも悪くなったのかと思ったが、片手を上げて待ったの姿勢を取ったんで暫く待ってみる。
「すまない、嬉しくて…感情が…。」
「そうか…。」
「抱きしめても良いか?」
「え?ああ…別に良いけど。」
「ありがとう。」
顔を上げたマーレスにゆっくりと深く抱きしめられて、照れくささもあるが俺も嬉しくなって抱きしめ返すと短い唸り声が聞こえた。
大丈夫かとも思ったが特にその後は何も無く、解放されるまでマーレスの体温を感じていた。
数分間そうしていたのか、疲れが抜け切っていないせいで微睡みそうになっていると、マーレスが腕を離した後にそのまま俺を上手く寝かしつけて夕飯をさっさと取りに行ってしまった。
助かるが半時程してしっかりと目が覚めた後に、次は俺も行くからと前のめり気味で言うと少しだけ可笑しそうに笑われた。
夕飯は黒パンに肉と魚介多めのスープで、旨みがしっかりと出ていて疲れた体に染み渡った。これで湯船なんかに入ったら、最高に熟睡出来るだろうなと考え、脳内で地理を漁って見たが近場に都合良くは無い。
流石に聖国か、もっと都会に出れば湯屋があるんじゃねぇかと真剣に考えてたら悩み事があるのかとマーレスに心配された。
「いや、単純にお湯に浸かりたいだけだ。一人で旅してる時に何回か入ってと、マーレスも数回は入った事があるだろう?」
「ああ…確かに体が解れるな。」
「一緒には入れなかったから、今度は一緒に入ろう。果実水とかミルクとか入ってから飲むと美味いんだよな。」
「そうなのか。余り、そういう風には楽しんでなかったから、楽しみだ。」
「ああ、飲み物は用意するから是非、満喫してくれ。」
確かに風呂場では無防備だし、前の面子で風呂は楽しめなかったんだろう。俺も気まずかったから、遅い時間に一人でこっそり借りて入ったし。
風呂は一旦、置いとくとして明日は休養日に当てようって話になったんだが、海を見に行きたかった。散策がてらと情報収集…は、最早、癖だがマーレスも誘って昼に漁師とか町人相手なら問題無いだろう。
飯も食ったし、今夜は早く寝て早朝に海を見に行く約束をしたらマーレスが嬉しそうにしてて良かった。
夕飯の後片付けは俺がして、さて、本格的に眠るかと自分のベッドに転がり込むとマーレスが何故か毛布を持ってこっちに来て…。
「一緒に眠っても良いか…?」
少し緊張したように尋ねられて、珍しい行動に、お、おう。と、断る気にもなれずに了承した。
あどけなく、純粋に向けられた好意は心に響いて何の違和感もなく溶け込んでいった。
本人に深い意味は無くて、子供が親を思うように、弟が兄を思うように、空気のような自然な気持ちだったんだろう。安心したように眠ってしまったのがその証拠で、煩くなった心臓にこっちが戸惑うばっかりだ。
「ちょっと罪作りだぞ、マーレス…。」
淡く、花が開く前の蕾のような感情と、咲く筈も無い花に胸が痛んだ気もしたが、大した事じゃないと俺もそのまま目を閉じて、隣にずっとマーレスがいてくれんのは嬉しいなと、それだけは素直に喜べた。
人が動く気配に目を覚ますと、驚いた表情のマーレスと視線が合って一瞬寝ぼけたまま見つめ返し、寝る前の事を思い出すと何だかおかしくなってしまって笑いながら声を掛けた。
「おはよう、マーレス。」
「ああ…おはよう、ソル。と言っても、夕方だが…夕飯貰って来ようか?」
「そうだな、俺も一緒に行くわ。」
ふあっと欠伸をしてから起き上がると、マーレスもそれに合わせて起き上がったんだが、なんか雰囲気がよそよそしい。
どうしたんだとベッドに座ったまま首を傾げて、そう言えば返事をしていなかったと思い出す。
「俺もマーレスが好きだ。」
「…ソル?」
「いや、返事をしてなかっただろ?」
「確かに、そうだな…。」
「うん。でさ、一緒にいるのは嫌じゃないし、寧ろ今、目の前から消えられたら見つけ出すまで探す。夜の情報収集は必要じゃないのもあるが、マーレスが嫌ならそもそも行かない。嫌だったとは思って無かった、ごめんな。んで、他の人との子供だったか…どの道、旅が終わったら村で一人で過ごすつもりだったから心配ねぇよ。つか、今の状態のこの世界に子孫を残したくないってのもある、不幸にしちまいそうで…。マーレスがずっと一緒に旅がしたいって思ってくれるなら、俺も喜んで一緒に旅が…マーレス?」
旅がしたいと締め括ろうとしたんだが、その前に何故かマーレスがベッドに両手をついて項垂れた。気分でも悪くなったのかと思ったが、片手を上げて待ったの姿勢を取ったんで暫く待ってみる。
「すまない、嬉しくて…感情が…。」
「そうか…。」
「抱きしめても良いか?」
「え?ああ…別に良いけど。」
「ありがとう。」
顔を上げたマーレスにゆっくりと深く抱きしめられて、照れくささもあるが俺も嬉しくなって抱きしめ返すと短い唸り声が聞こえた。
大丈夫かとも思ったが特にその後は何も無く、解放されるまでマーレスの体温を感じていた。
数分間そうしていたのか、疲れが抜け切っていないせいで微睡みそうになっていると、マーレスが腕を離した後にそのまま俺を上手く寝かしつけて夕飯をさっさと取りに行ってしまった。
助かるが半時程してしっかりと目が覚めた後に、次は俺も行くからと前のめり気味で言うと少しだけ可笑しそうに笑われた。
夕飯は黒パンに肉と魚介多めのスープで、旨みがしっかりと出ていて疲れた体に染み渡った。これで湯船なんかに入ったら、最高に熟睡出来るだろうなと考え、脳内で地理を漁って見たが近場に都合良くは無い。
流石に聖国か、もっと都会に出れば湯屋があるんじゃねぇかと真剣に考えてたら悩み事があるのかとマーレスに心配された。
「いや、単純にお湯に浸かりたいだけだ。一人で旅してる時に何回か入ってと、マーレスも数回は入った事があるだろう?」
「ああ…確かに体が解れるな。」
「一緒には入れなかったから、今度は一緒に入ろう。果実水とかミルクとか入ってから飲むと美味いんだよな。」
「そうなのか。余り、そういう風には楽しんでなかったから、楽しみだ。」
「ああ、飲み物は用意するから是非、満喫してくれ。」
確かに風呂場では無防備だし、前の面子で風呂は楽しめなかったんだろう。俺も気まずかったから、遅い時間に一人でこっそり借りて入ったし。
風呂は一旦、置いとくとして明日は休養日に当てようって話になったんだが、海を見に行きたかった。散策がてらと情報収集…は、最早、癖だがマーレスも誘って昼に漁師とか町人相手なら問題無いだろう。
飯も食ったし、今夜は早く寝て早朝に海を見に行く約束をしたらマーレスが嬉しそうにしてて良かった。
夕飯の後片付けは俺がして、さて、本格的に眠るかと自分のベッドに転がり込むとマーレスが何故か毛布を持ってこっちに来て…。
「一緒に眠っても良いか…?」
少し緊張したように尋ねられて、珍しい行動に、お、おう。と、断る気にもなれずに了承した。
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