裏切られた英雄を救うのは俺な件

七曜

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57.「強風」※

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 風で揺れる木々の葉音やパチリと爆ぜる焚き火の音、鳴いている虫の声が以前より鮮明に聞こえるのは気の所為じゃないだろう。
 感覚が鋭敏になったと身を持って知ったのはマーレスに右手で腹を撫で挙げられ、胸を軽く弄られただけで反応し出す自分自身に気づいてからだ。
 思わず片手で目元を覆ってから唸り、溜息混じりに手を離すと不思議そうな双眼と視線が絡む。

「いや、勃っただけだ…。」

「ソル…。」

 度々、物言いが直接的だと言われていたなと思い出し、言い直そうと軽く咳払いをする。

「胸、弄られただけで気持ち良い。前より感じ易いかも…マーレスに呆れられねぇと良いんだが。」

 心配になると思ったせいか頭頂部の耳が少し下がった気がした。俺のそんな不安にマーレスは眉を寄せ、深く息を吐く。

「…呆れたりは勿論しないんだが、煽られてはいる。」

 困った様子で苦笑され、思わず瞬きを繰り返す。
 嬉しいのと可愛いのと擽ったい気持ちで状況を忘れて和んだんだが、服を捲られて左の突起を口に含まれた所で現状を思い出す。
 マーレスの舌がちろちろと乳首を舐め吸い付く様子は視覚的にもクるものがあって、途端に据わりが悪くなる。英雄に何をさせているんだという気持ちは無くは無いが、段々とそれがどうでも良くなる程度に気持ち良くなって来る。その頃には右胸も同時に指で弄られて、我慢できずに口からは声が漏れ、びくびくと体が小刻みに痙攣しているのが分かる。
 あっとある意味我に返ったのは軽くイってからだった…。

「っ…ンぁ…ハッ…」

 驚いていつの間にか閉じていた瞼を上げ、まだ胸を吸っているマーレスの頭頂部に視線を彷徨わせるも下着の中の惨事が無くなる訳じゃない。今更、男の矜持がと言うのは可笑しいかもしれないが、信じられないのも本音で。

「嘘だろ…。」

「ん…ソル?」

 顔を上げ、不思議そうな面持ちのマーレスと視線が絡む。黙っていると首を軽く傾げられてから何故かするりと背中から腰を撫でられて、ベルトに手が触れた。

「マーレス!?」

「物足りなかったかと思って…、下も触って良いか?」

「いや…物足りなくは無いし、別に良いけど…っ」

 ついつい、ぶっきらぼうになったのは許して欲しいとか思ってる内にベルトを外され、下衣と下着、序にブーツも脱がされる。まあ、脱がされる途中でマーレスにも何となく察せられたんだが、物凄く嬉しそうに微笑むのは狡いと思う。

「良かった。」

「んんっ…」

 思わず咳払いしてると何となく押し倒そうとするマーレスの動きに合わせて地面に倒れたのは良かったものの、何やら収納鞄マジックバッグをゴソゴソして取り出した洗浄の魔法薬アポスティロシの瓶に驚いた。確か、全部使い切ったんじゃと表情にも出たせいか何処かマーレスも気恥ずかしそうにしながら小さな声で…。

「ソルとまたしたくて、買い足しに行った…。」

「そうか、それは嬉しいな…。」

 互いに何ともな雰囲気を出しながらも最早、手慣れた動作で丸薬を後孔に入れられる。相変わらずの効力で腹の中が温まって濡れるんで本当に凄いなと思ってると俺の両脚を何故か肩に担ぐような体勢を取ったマーレスが上体を下げる。待てと声にする前にイったせいで濡れた性器を躊躇なく咥え込まれ、更に尻の中に中指を挿れられて喉が引き攣る。

「…っあ…ア!?」

「んっ…」

 マーレスがやりたい事は瞬時に理解出来たが敏感になってる方としては堪らない。舌で器用に性器を愛撫されながら、的確に指で感じる場所を刺激されると直ぐに快楽で頭の中が塗りつぶされる。待てと声に出したようで、実際は甘ったるい声が出るばかりだ。
 しかも、愛しい人から与えられるそれを拒む理由も無く。地面に爪を立てながら、只々、気持ち良さに身を委ねていれば二度目の限界が呆気なく来る訳で…。

「あっ…やっ…、また…ッくる…っっっ!」

「んぅ…っ、っ…」

 マーレスも少し驚いたのか瞬きを繰り返しながら、けれども吐き出した精液を零さないようにして口を離し、息の荒い俺と見つめ合ってからこくりと喉を鳴らして吐き出した物を飲み込んだ気配に余計に羞恥が煽られる。

 だから、早いし、律儀に飲まなくても…!

「わりっ…イった…みたい…。」

 沸騰しそうな気分に軽く涙目になりながらマーレスを見つめると自然と口から出たのは謝罪の言葉だった。
 情けなさに思わず謝ったものの、きょとんとした表情から直ぐに破顔される。

「構わない。寧ろ嬉しい…沢山、俺で気持ち良くなってくれ。」

「マーレス…。」

 思わず頭を抱えたくなった。全肯定されるのは正直嬉しいが、閨に関しては羞恥心が強過ぎる。体の興奮と精神的な動揺で息が荒くなっていると指を引き抜かれ、マーレスの顔が近付いて来る。ちゅっと頬に口付けられて囁く声は何処までも甘く優しくてー…。

「ソル、愛してる。」

「俺も…愛してる…っ、マーレス…。」

 いやもう、この状況でその言葉は狡い。思わず無茶苦茶にしてくれと願って呟いたのは仕方無かったし、それを聞いて最低限後ろを解して直ぐに挿入したマーレスを誰も責められないと思う。

「あっ…ぁ、はっ、マーレ…スっ…ん…ッ」

 両脚を深く折られて正面から揺さぶられる。マーレスに慣れ切った体は只々快感に酔うばかりで、気を抜けば背中に立てそうになる爪を何とか力を抜いてやり過ごすのが精一杯で、好きなように揺さぶられる度に全身を甘い痺れが駆け巡り、意識がゆらゆらと揺れる。

「ソル…っ、ソル…っ」

 その上、名前を呼ばれるとどうしようもなく腹に力が入ってマーレスを締め付け、余計に自分も追い詰める。もう良いかと思った時には何度目かの限界を迎え、それなのにマーレスが腰を動かすとまた体は高ぶってを繰り返す。
 何故か発情していないのは分かる。そして、中に出される度に心も体も満たされるのが分かる。

 ある意味、発情よりやばいのではと思った時には地面が視界に映り、何だと思う間に思い切り、しかも一際深く挿入されて声が詰まる。

「あっ…が…ッ?」

 既に置き去りにしていた思考が追い掛けて来て、どうやら伏せの体勢で抱かれている状況は理解したものの、無防備な状態で奥を奥をと求めるような動きで先端を押し付けられ、より深い部分を抉られて混乱する。

「まっ…ふ、か…っ…あンッ、マ゙ッ…ぃっ…あ、っ…アッ…イっ…ぁアッ、あ…あア!」

 やばいと直ぐに沸騰する頭に流石に待ったを掛けようとして、それよりも貪欲に求めるように腰を打ち付けられてイクのが早かった。
 あっあっと整わない声と呼吸のまま、目の前も星が飛んでいるような錯覚を見ている間に深い所でマーレスに射精されて陶酔感に訳が分からなくなってるってのに…!

「マー…レ…ンッ、ふ…っく…ぁ、ま…て…っ、やば…い、やばいって…ぁ、あ、揺さ…ぶ…ンッ…な、まっ…ぁあっ!」

 今度は緩やかに小刻みに中の良い所に当てられながら性器も扱かれ、骨抜きのような状態で更に立て続けの快楽を与えられておかしくなりそうだった。

「んっ…ンッ、な…ぁあっ!」

 始める前から少し様子がおかしいとは感じていたがと過った思考はマーレスに不意に噛みつかれた尻尾の痛みで霧散する。
 勿論、加減はしてくれているが、急所のような鋭敏な痛みに驚いてまた軽くイッてしまい、どろどろに溶けた矜持が最後の悲鳴を上げた気がしていると尻尾をあやすように撫で上げられ、そのまま外套も衣服も捲れ上がって剥き出しの背中を手の平全体で撫で上げられる。

「綺麗だ…。」

 何がと思い、背中にも広がっていると教えて貰った紋様だと思い至ったものの、また奥を深く突き上げられ始めて直ぐにどうでも良くなる。ぬぷぬぷと卑猥に抜き挿しを繰り返されながら、胸や性器を時折弄られて尻尾も甘噛みされるとその度に情けない声が零れる。

「ソルは…っ、そのままでも…素敵なのに…」

「マ…っ、ひぁっ、ま、な、っ…んぅ…!」

 もしかして、暴走気味なのではと気づいた時には腕を取られてまた体勢が変わる。今度はマーレスの上に座るような形なんだが、尻尾だけじゃなくて、耳にも手が届く。おまけに咥え込んだまま座ったせいで、最奥までマーレスが届いてて苦しいぐらいで…。

「あっ…耳、だめ…だってっ…!」

 左指でぐりぐりと弱い耳の付け根を指圧され、右手は乳首を弄って来る。
 逃げ腰になって浮かせた腰は直ぐに引き戻され、まるで我儘な子供を躾けるように腰を掴まれて上下させられた。

「やめ…っ、マーレ…ンッ、ん、っ…ハッ…ぁ」

 ぐらぐらに揺れる頭と視界に何とか止めようとした声は、顎を掴まれて振り向かされ、情熱的に塞がれた口付けに飲み込まれる。

 ああもう、勝てないなと今回は負けを認めたせいかマーレスが満足するまで抱かれ続けた。
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