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60.「待機」
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案の定、予想通りと言うかお偉いさんに取り次ぎに行ってくれた門番のにーちゃんも、詰め所に案内してくれた人にもめちゃくちゃ畏まられた。
いやまあ、勇者様が起こした国、つまりは実質、勇者様の血統は王族に分類される。
一般的な国とは違って、勇者様は魔王と戦いに行くんで政務なんかは部下に任せてたろうけど、地位的には王か女王な訳で…。
そんな身分の者が突然、門前に現れたら俺でも驚く。
悪いとは思いつつも、無断で聖都に侵入するには不都合が多すぎた。
不法侵入して関係者に発見されれば、余計な疑いを掛けられ兼ねない。それならば最初から話を通して、味方、ないしは中立な関係になって置いた方が遥かに良いだろう。万が一、敵対した場合は逃走するつもりでもあるが、これに関しては相当な事をしない限りは大丈夫だと思ってる。
マーレスが子を成せた場合もまた世継問題が発生しただろうけど、それも無い上に今代の魔王も倒し、聖剣も体内に保持していないとなればマーレスを国に奪われる可能性も限りなく低い。色々な事を上空移動の合間の休憩時間に話し合った結果、聖都への入街の際に話を通す事に二人で決めた。
まあ、本番はお偉いさんが来てからの話し合いに掛かっているが、今現在、捕らえられても無下にも扱われていない所を見ると上手くいく可能性は多分にあるだろう。
そう考えながら同じ黒の外套を纏って隣に座っているマーレスを見ると視線が合って、柔らかく微笑み掛けられたんで心音が跳ねる。
いや、どきどきしてる場合じゃないんだが詰め所の一室に通されて、席に促され茶を出された後は二人きりなもんでついつい気が抜ける。
監視は良いのかとも思ったが、部屋の外の扉の前に二人の兵が一応は立ってるみたいなんでそれで良いと判断されたんだろう。
たまに、『どういう事だよ。』とか、『勇者様なのか…?』とか、話し声が聞こえてくるが当然の疑問だなとも思う。
「やっぱり、困惑されるよな。」
「そうだな、俺が向こうの立場でも同じだと思う。」
「確かに。」
そもそも、行方不明の勇者様は女性だったと聞くし、勇者様のご遺体が盗まれた事も公になっていないと仮定すると、何者なんだってなるわな。
お偉いさんに伝でもあればあんまり騒ぎにもならなくて良かったんだがとか、取り留めのない事を考えながら詰め所に案内してくれた人がその後、何かと現れてお茶やら何処で調達したのか菓子やらを出してどう考えても場を繋ごうと頑張ってくれてんな、良い人だと思いながら余り気にしなくて大丈夫だと伝えての攻防を繰り広げてると思ったよりも早くに門番のにーちゃんが戻って来た。
「失礼します!お待たせ致しました…っ!」
部屋に入ってくるなりの言葉と息が上がりまくってるんで相当急いでくれたのが分かる。
何なら茶色の髪も紺色の兵の制服も乱れ捲くってる。
「いやもう、急いでくれてありがとうな。一旦、落ち着いてから話してくれたら良いから。」
マーレスも珍しくちょっと驚いてるなと横目で確認しつつ、肩で息をしてるにーちゃんを言葉で落ち着かせる事暫し、呼吸が整った所で結果を聞く前にまずは彼の名前を聞いた。一番迷惑を掛けたんで、後で礼をしようと思ってだ。
「大変失礼致しました。俺はトリウィと申しまして、聖都の警備や治安維持を主に行なっている衛兵です。権限がありませんでしたので、本部にいる隊長に取り次ぎまして、そこから更に上の者へと連絡しておりましてお待たせした次第です。つきましては、聖城の方へお越し頂きたく、馬車の手配を致しましたので、そちらが到着次第、移動をお願いしても宜しいでしょうか?」
「問題ない。そのつもりで此方も訪ねて来た。取り次いでくれて感謝している。」
「いえ、勿体無いお言葉でございます。説明の為に俺も騎馬でお供しますので、宜しくお願い致します。一旦、他の兵にも事情を説明したくありまして、暫く御前を失礼しますがそちらも宜しいでしょうか?」
「大丈夫だ。てか、そんなに畏まらなくても良いんで、何なら少し休憩してくると良い。」
「はっ!有難うございます。それでは、少し失礼致しますね。」
最後に少しだけトリウィが表情を緩めてくれたんでこちらもほっとする。あのまま行くと城に到着する前に倒れてしまいそうだ。
四半刻もしない内に結局は戻って来たんだが、馬車が到着したらしく、案内されて詰め所を出るとプロエリウ厶聖国の紋章である聖剣が赤で描かれた真っ白な馬車が俺達を出迎えた。
いやまあ、勇者様が起こした国、つまりは実質、勇者様の血統は王族に分類される。
一般的な国とは違って、勇者様は魔王と戦いに行くんで政務なんかは部下に任せてたろうけど、地位的には王か女王な訳で…。
そんな身分の者が突然、門前に現れたら俺でも驚く。
悪いとは思いつつも、無断で聖都に侵入するには不都合が多すぎた。
不法侵入して関係者に発見されれば、余計な疑いを掛けられ兼ねない。それならば最初から話を通して、味方、ないしは中立な関係になって置いた方が遥かに良いだろう。万が一、敵対した場合は逃走するつもりでもあるが、これに関しては相当な事をしない限りは大丈夫だと思ってる。
マーレスが子を成せた場合もまた世継問題が発生しただろうけど、それも無い上に今代の魔王も倒し、聖剣も体内に保持していないとなればマーレスを国に奪われる可能性も限りなく低い。色々な事を上空移動の合間の休憩時間に話し合った結果、聖都への入街の際に話を通す事に二人で決めた。
まあ、本番はお偉いさんが来てからの話し合いに掛かっているが、今現在、捕らえられても無下にも扱われていない所を見ると上手くいく可能性は多分にあるだろう。
そう考えながら同じ黒の外套を纏って隣に座っているマーレスを見ると視線が合って、柔らかく微笑み掛けられたんで心音が跳ねる。
いや、どきどきしてる場合じゃないんだが詰め所の一室に通されて、席に促され茶を出された後は二人きりなもんでついつい気が抜ける。
監視は良いのかとも思ったが、部屋の外の扉の前に二人の兵が一応は立ってるみたいなんでそれで良いと判断されたんだろう。
たまに、『どういう事だよ。』とか、『勇者様なのか…?』とか、話し声が聞こえてくるが当然の疑問だなとも思う。
「やっぱり、困惑されるよな。」
「そうだな、俺が向こうの立場でも同じだと思う。」
「確かに。」
そもそも、行方不明の勇者様は女性だったと聞くし、勇者様のご遺体が盗まれた事も公になっていないと仮定すると、何者なんだってなるわな。
お偉いさんに伝でもあればあんまり騒ぎにもならなくて良かったんだがとか、取り留めのない事を考えながら詰め所に案内してくれた人がその後、何かと現れてお茶やら何処で調達したのか菓子やらを出してどう考えても場を繋ごうと頑張ってくれてんな、良い人だと思いながら余り気にしなくて大丈夫だと伝えての攻防を繰り広げてると思ったよりも早くに門番のにーちゃんが戻って来た。
「失礼します!お待たせ致しました…っ!」
部屋に入ってくるなりの言葉と息が上がりまくってるんで相当急いでくれたのが分かる。
何なら茶色の髪も紺色の兵の制服も乱れ捲くってる。
「いやもう、急いでくれてありがとうな。一旦、落ち着いてから話してくれたら良いから。」
マーレスも珍しくちょっと驚いてるなと横目で確認しつつ、肩で息をしてるにーちゃんを言葉で落ち着かせる事暫し、呼吸が整った所で結果を聞く前にまずは彼の名前を聞いた。一番迷惑を掛けたんで、後で礼をしようと思ってだ。
「大変失礼致しました。俺はトリウィと申しまして、聖都の警備や治安維持を主に行なっている衛兵です。権限がありませんでしたので、本部にいる隊長に取り次ぎまして、そこから更に上の者へと連絡しておりましてお待たせした次第です。つきましては、聖城の方へお越し頂きたく、馬車の手配を致しましたので、そちらが到着次第、移動をお願いしても宜しいでしょうか?」
「問題ない。そのつもりで此方も訪ねて来た。取り次いでくれて感謝している。」
「いえ、勿体無いお言葉でございます。説明の為に俺も騎馬でお供しますので、宜しくお願い致します。一旦、他の兵にも事情を説明したくありまして、暫く御前を失礼しますがそちらも宜しいでしょうか?」
「大丈夫だ。てか、そんなに畏まらなくても良いんで、何なら少し休憩してくると良い。」
「はっ!有難うございます。それでは、少し失礼致しますね。」
最後に少しだけトリウィが表情を緩めてくれたんでこちらもほっとする。あのまま行くと城に到着する前に倒れてしまいそうだ。
四半刻もしない内に結局は戻って来たんだが、馬車が到着したらしく、案内されて詰め所を出るとプロエリウ厶聖国の紋章である聖剣が赤で描かれた真っ白な馬車が俺達を出迎えた。
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