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第3話 『消えた出席番号2のナゾ……カギはオオカミ少年とラッパ?』
④
しおりを挟む「そ、そうだ! ミアは負けて、退場させられて、それで……獏に、食われたってことなのか?」
「……本来、獏は悪しき夢を喰べる妖怪だ。しかし人間の存在そのものを喰らうことに味をしめた個体が出現し、少しずつその力を増していった。そのやり口は非常に狡猾で、今では我々CCCの捜査網からも容易にすりぬけてしまうまでにいたった」
先生は腕組みし、椅子の背もたれにもたれかかった。
「私が君の持つカードを見て違和感をおぼえたのは、それがCCCのレポートにあった過去の事件で目撃されたものと似ていたからだ。だが、確信は持てなかった。呪いの気配が、まったく感じられなかったんだ……念のため、応急処置をほどこしておいたのは不幸中の幸いだったが」
「じゃあ、あのカードを捨てれば呪いはとけるってことか?!」
「残念ながら――ヤツの領域であるバクストマックへ足を踏み入れ、ゲームに参加表明した君たちは、既に呪いを魂に刻みこんでしまっている。家に帰って確認してみるといい、カードはどこにもないはずだ」
「そんな……!」
もう手遅れってことなのか……? ミアの、ことも……?
俺は悪い想像を振り切りたくて、必死にすがる。
「なあ、なんとかしてくれよ! CCCは呪いに対抗するための組織なんだろ? 俺もホマレも、それに、ミアのことも……助けてくれよ、先生!」
だけど先生はいつもみたいに、淡々と即答してくれなかった。
座るように促されて、俺は立ちっぱなしだったことに気づく。大人しく座ったけど、なんだか落ち着かない。焦れる俺に先生は、少し暗い声で訊ねた。
「……獏、いや、ジュースはこう言っていなかったか? 君たちが望まなければ、このゲームは成り立たないと」
「え? うん、言ってたけど……」
やはり――と言うように、先生は目を瞑った。
「呪いをかけるにあたって、契約はなにより重んずるべきものだ。特に、対価を通じて結ばれるものは強固で、外部からはどうすることもできない。そして君たちは、望んだ――なんでも願いの叶うゲームに参加することを」
「はぁ?! んなもん、バチクソゲーじゃねぇか! 俺たち、負けたら退場するだけとしか言われなかったんだぜ?」
「それこそが、ジュースの狡猾さだ。言い落したんだよ、退場が即ち自分に喰らわれるのを意味するのだということを」
ぐっ、と俺は言葉に詰まる。なにを隠そう、俺もよくやるからだ。自分に都合の悪いことは、言わないに限る――そうすれば、相手は勝手に勘ちがいしてくれる。それのどこが悪いんだ、とジュースの笑い声が聞こえてくるようだ。
「そして」先生はまぶたを上げ、夕日に染まった窓の向こうを見た。「敗者はおろか勝者ですら安全ではない。『なんでも願いが叶う』というのは、さしずめ……喰われたあとジュースの胃の中で、願いの叶った夢を見せてやる、といったところか」
「で、でも現実世界で叶うって……」
「食われたあとは、奴の胃の中が君たちの現実となる……これもまた言い落しだ」
「くっそ、あいつ……きったねーーー!!」
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