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◆寒いからあたためて
憧れは変化して
しおりを挟む「何笑ってんの、村岡くん」
彼――麻生大介にそう言われて初めて村岡涼一は初めて自分が笑みを作っていることに気が付いた。
「あ、すみません。ニヤニヤしていて気持ち悪かったですか?」
「いや、そうじゃなくて、なんか可愛いなって思って」
どひーっ。憧れの人の満面の笑みに、心臓が悲鳴をあげる。
そう、麻生大介は村岡涼一にとって雲の上の人のような、決して触れることが出来ないと思うほどの憧れの存在だったのだ。
「あ、麻生さん!!」
「わ~、照れてる、可愛い、可愛い」
「かっ、からかわないでくださいよ!!」
大げさに腕を組んで睨みつけてみるが、本気で怒っているわけではない。
こんな態度、昔では取れなかった。
「はいはい、ごめんごめん」
笑いで乱れる吐息にかき消されそうになりながら彼が言う。右手と左手を合掌させて謝罪のポーズだ。
あまりのわざとらしさに――いや、自分も随分とわざとらしいのだが、村岡はぷっと噴き出した。
また笑顔が二人の間で咲く。
雲の上の人、だった。
でも、そうじゃない。陸に降りてきてもらったわけでも、自分が雲の上にのぼったわけでもない。
ただ、お互いに好きなだけ。それで“ジュウブン”なのだ。
(了)
2020.01.18 1h
お題「雲の上の人」
お題は創作BL版ワンライ・ワンドロさまよりお借りしました。
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