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起き上がらせて
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新進気鋭の新人俳優として、滝を上る勢いでメディアに露出する機会が増えた新崎迅人であったが、プライベートのある一面についてはまったくもって勢いを失っていた。
「俺はだめかもしれない……っ!」
恋人の部屋に訪れたはいいが、彼が入浴している間、顔を真っ青にしてうずくまっている情けない男、これが今やイケメン俳優だのと世間に騒がれている新崎迅人の本性であった。
彼をここまで悩ませているのは千尋崇彦。普段はしがないサラリーマンであるが、余暇を利用して舞台用などに脚本を仕上げている日曜脚本家だ。
最近はその仕事の幅も増えてきて、ゲームのシナリオや、アニメの筋の仕事もしているらしい。
新崎にとって千尋は自分が惚れた作品の脚本を書いた憧れの人物であるとともに、目標としている人物でもある。
しっかりとしたおとなでありながら、自由な発想ができて、何より作品の軸がぶれない。
俳優として仕事をしてはいるが、これが俺の演技だと胸を張っていえるような状態ではないと新崎は自分を評価しているため、ちゃんと自分にしかできない仕事をしている千尋がまぶしくてしかたがない。
そんな千尋であったが、今現在はプライベート・モードになっているため、ものすごく可愛い。
それが罪なのだと新崎は思う。
かっこいいと可愛いが同時にひとりの人間のなかに存在しているから、こっちがくらくらしてしまう。
「ああ! いや、俺がしっかりしなくては!!」
新崎の猛烈なアピールで付き合いだしたふたりであるが、まだ夜を迎えたことはなかった。
その原因は千尋になかなか手出しができない新崎にあるのだが。
「ああ~でも千尋さん、可愛すぎて、俺なんかが手を出したりしたら……」
謎の罪悪感。
それが、新崎が千尋に手を出せない理由だった。
「出たよ」
洗面所からゆったりとした仕草で千尋が歩いてくる。
「ひゃがっ!!」
新崎はその光景に心臓が飛び跳ね、体ごとぴょんと飛び跳ね、心と魂まで飛び出てどこかへ行ってしまいそうになってしまう。
「何それ。新崎くん、疲れてる?」
「あ、ええ、いや、千尋さん……!!」
「いい湯加減でした。新崎くん、入ってきなよ」
「え、あ、ああ、はいぃ!!」
千尋は湯上りでもきっちりとシャツを着こんでおり、美しい。けれど、ほのかに立ち上る蒸気に色気が醸し出されていて、新崎はどうしても直視できない。
「あっ!!」
慌てて風呂場へ向かおうとした新崎だったが、千尋の身体にぶつかってしまう。
「う!!」
がつんと衝撃がきて、新崎は千尋を押し倒すような格好で床に倒れていた。
「――って……」
背中をフローリングに打ち付けてうめく千尋に新崎は慌てる。
「ごめんなさい、大丈夫ですか――」
そして、自分の片腕がどこに置かれているのかに気が付いて、一気に体温が上昇した。
新崎の腕は、シャツの裾と千尋の腹の間に滑り込んでいて、あろうことか、そのシャツの裾をまくしあげており、新崎の眼球に千尋の白い腹がさらけ出されていた。
「~~ッ!!」
これには新崎迅人、無言で悲鳴を上げる。
「すすすすす、すみません、俺、本当にもう、死ねます。死んでもいいです!!」
挙動不審な動作を何度も繰り返しながら、新崎は千尋から距離を取った。
「新崎くん?」
「いっそ、千尋さん、俺をここで殺してください!!」
「いや、別に転んだだけでそこまで大げさに怒らないから。それより手を貸してくれないのかい?」
「……!!」
千尋は寝そべったまま、腕を上にあげた。
まるで、起こしてと甘えるように。
その光景に新崎は悶絶しつつも――、手を伸ばした。
(了)
「俺はだめかもしれない……っ!」
恋人の部屋に訪れたはいいが、彼が入浴している間、顔を真っ青にしてうずくまっている情けない男、これが今やイケメン俳優だのと世間に騒がれている新崎迅人の本性であった。
彼をここまで悩ませているのは千尋崇彦。普段はしがないサラリーマンであるが、余暇を利用して舞台用などに脚本を仕上げている日曜脚本家だ。
最近はその仕事の幅も増えてきて、ゲームのシナリオや、アニメの筋の仕事もしているらしい。
新崎にとって千尋は自分が惚れた作品の脚本を書いた憧れの人物であるとともに、目標としている人物でもある。
しっかりとしたおとなでありながら、自由な発想ができて、何より作品の軸がぶれない。
俳優として仕事をしてはいるが、これが俺の演技だと胸を張っていえるような状態ではないと新崎は自分を評価しているため、ちゃんと自分にしかできない仕事をしている千尋がまぶしくてしかたがない。
そんな千尋であったが、今現在はプライベート・モードになっているため、ものすごく可愛い。
それが罪なのだと新崎は思う。
かっこいいと可愛いが同時にひとりの人間のなかに存在しているから、こっちがくらくらしてしまう。
「ああ! いや、俺がしっかりしなくては!!」
新崎の猛烈なアピールで付き合いだしたふたりであるが、まだ夜を迎えたことはなかった。
その原因は千尋になかなか手出しができない新崎にあるのだが。
「ああ~でも千尋さん、可愛すぎて、俺なんかが手を出したりしたら……」
謎の罪悪感。
それが、新崎が千尋に手を出せない理由だった。
「出たよ」
洗面所からゆったりとした仕草で千尋が歩いてくる。
「ひゃがっ!!」
新崎はその光景に心臓が飛び跳ね、体ごとぴょんと飛び跳ね、心と魂まで飛び出てどこかへ行ってしまいそうになってしまう。
「何それ。新崎くん、疲れてる?」
「あ、ええ、いや、千尋さん……!!」
「いい湯加減でした。新崎くん、入ってきなよ」
「え、あ、ああ、はいぃ!!」
千尋は湯上りでもきっちりとシャツを着こんでおり、美しい。けれど、ほのかに立ち上る蒸気に色気が醸し出されていて、新崎はどうしても直視できない。
「あっ!!」
慌てて風呂場へ向かおうとした新崎だったが、千尋の身体にぶつかってしまう。
「う!!」
がつんと衝撃がきて、新崎は千尋を押し倒すような格好で床に倒れていた。
「――って……」
背中をフローリングに打ち付けてうめく千尋に新崎は慌てる。
「ごめんなさい、大丈夫ですか――」
そして、自分の片腕がどこに置かれているのかに気が付いて、一気に体温が上昇した。
新崎の腕は、シャツの裾と千尋の腹の間に滑り込んでいて、あろうことか、そのシャツの裾をまくしあげており、新崎の眼球に千尋の白い腹がさらけ出されていた。
「~~ッ!!」
これには新崎迅人、無言で悲鳴を上げる。
「すすすすす、すみません、俺、本当にもう、死ねます。死んでもいいです!!」
挙動不審な動作を何度も繰り返しながら、新崎は千尋から距離を取った。
「新崎くん?」
「いっそ、千尋さん、俺をここで殺してください!!」
「いや、別に転んだだけでそこまで大げさに怒らないから。それより手を貸してくれないのかい?」
「……!!」
千尋は寝そべったまま、腕を上にあげた。
まるで、起こしてと甘えるように。
その光景に新崎は悶絶しつつも――、手を伸ばした。
(了)
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