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【囚勇03】青年主人を慰めたい従者のお話 -18~21歳
18歳勇者と29歳従者のある夜の会話【SS】
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「なあロッソ、その髪、触ってもいいか?」
ベッドにうつ伏せて長い間黙り込んでいたリンデルが、視線だけ上げてロッソの黒髪を見ている。
それを確認しながら、ロッソは静かに答えた。
「……かまいませんよ」
今日、勇者隊が討伐に駆け付けた村は、既にその一部を魔物に食い荒らされていた。
並べられた遺体の数と村人達の心無い言葉に、この真面目で優しくまだ年若い勇者は酷く傷付いていた。
それをロッソは痛いほど分かっていた。
だから、リンデルの突然の要求にも何も問わず快諾する事にした。
……内心多少の疑問はあったが。
「どうぞ、ご自由になさってください」
勇者の元へ歩み寄り、ベッドの脇で立ち止まる。
「ありがとう……」
小さく囁くような礼の言葉と共に、リンデルは長い指をロッソの艶やかな黒髪に割り入れた。
指の間を流れる、張りのある髪。
リンデルはサラサラとその感触を味わっていたが、ふとロッソを見上げる。
「ずっとそこで立ってるつもり?」
「勇者様にご満足いただけるまでは、こうしている所存ですが……」
相変わらずの真顔で答える生真面目なロッソに、リンデルは少し寂しそうに苦笑してベッドをそっと示した。
「ここに座ればいいだろ」
「……勇者様がそうおっしゃるのでしたら」
「俺になんか……遠慮しなくていいのに」
少しの自嘲を含んだリンデルの言葉に、ロッソが反論する。
「そうはまいりません。私は勇者様に仕えている身ですから」
言いながらも、そっとベッドに腰を下ろしたロッソの長い黒髪を、リンデルはベッドへ引き上げる。
黒髪の毛先を抱き込むようにしてリンデルが体を丸めて横になるのを、ロッソは黙って見ていた。
黒く艶やかな髪に、リンデルは頬を寄せている。
何度も何度も優しく髪を撫でられて、ロッソは自分が求められているのではないかと錯覚してしまいそうになる。
彼がもし自分を求めるのなら、いつだって応えるつもりでいる。
そのための側仕えだと思っているし、事実前の勇者様にもそうして仕えてきた。
勇者は国のシンボルマークだ。
その立場上、色恋に関わるわけにはいかない。
万が一の場合を考慮し、任期中は女性と肉体関係を持つ事も禁止されている。
しかし、この青年はそれに対して思う所が無いのか、そういった不満を口にした事はなかった。
連日の戦闘で疲れ果て、守るべき対象からは非難を浴び続け、さらにはそんな自分を責めて。
彼の心が軋み、悲鳴を上げている音は、ロッソにははっきりと聞こえていた。
けれど、ロッソにはそれをどうする事もできない。
せめて、この青年が私を求めてくれれば。
少しは慰めてやる事もできるだろうに……。
ロッソは、内心の葛藤を表に出さないよう十分に注意を払いつつ慎重に口を開いた。
「いつまでそうしているおつもりですか」
ロッソの言葉に、リンデルはチラと黒髪の持ち主を見上げる。
怒ってはいない様子を確認すると、小さな声で答える。
「……もう少しだけ……」
ロッソはわざとらしくため息をひとつ吐いた。
それを聞いて、リンデルが拗ねるように言う。
「満足するまでいいって言ったじゃないか」
「物事には限度というものがあります」
ロッソは部屋の置き時計を見ながら答える。
時計の針はもう半分ほど回ろうとしていた。
「……頼む……もう少しだけ……」
リンデルに懇願されて、ロッソはゆっくりと瞬きをする。
「では、こちらで書き仕事をさせていただいてもかまいませんか?」
尋ねられたリンデルは嬉しそうに「もちろん」と答えた。
結局、リンデルはロッソの髪を抱き締めたまま眠ってしまった。
ベッド脇に机を引き寄せ不自然な姿勢で仕事をしていたロッソだったが、リンデルの完全に寝付いた様子に、その手からそろりと自身の髪を抜き取ろうとする。
もうあと少しで全部抜けるというところで、不意にギュッと髪を握られて、ロッソは思わず動きを止める。
「いやだ……」
まだ起きていたのだろうか、いや、今の拍子に起きてしまったのか?
「いやだ、よ……。忘れたく、ない……」
それは寝言だった。
けれど、リンデルの閉じたままの瞼の隙間からは涙が溢れていた。
「勇者様……」
ロッソは、溢れてくるその雫を、取り出したハンカチで丁寧に拭う。
後から後からとめどなく零れる涙に、ロッソは己の無力を感じていた。
せめて……夢の中でくらい、幸せでいてほしかった。
夢の中だけでも彼が笑えるのなら、私の髪だって私自身だって、いくらでも差し出せるというのに……。
ベッドにうつ伏せて長い間黙り込んでいたリンデルが、視線だけ上げてロッソの黒髪を見ている。
それを確認しながら、ロッソは静かに答えた。
「……かまいませんよ」
今日、勇者隊が討伐に駆け付けた村は、既にその一部を魔物に食い荒らされていた。
並べられた遺体の数と村人達の心無い言葉に、この真面目で優しくまだ年若い勇者は酷く傷付いていた。
それをロッソは痛いほど分かっていた。
だから、リンデルの突然の要求にも何も問わず快諾する事にした。
……内心多少の疑問はあったが。
「どうぞ、ご自由になさってください」
勇者の元へ歩み寄り、ベッドの脇で立ち止まる。
「ありがとう……」
小さく囁くような礼の言葉と共に、リンデルは長い指をロッソの艶やかな黒髪に割り入れた。
指の間を流れる、張りのある髪。
リンデルはサラサラとその感触を味わっていたが、ふとロッソを見上げる。
「ずっとそこで立ってるつもり?」
「勇者様にご満足いただけるまでは、こうしている所存ですが……」
相変わらずの真顔で答える生真面目なロッソに、リンデルは少し寂しそうに苦笑してベッドをそっと示した。
「ここに座ればいいだろ」
「……勇者様がそうおっしゃるのでしたら」
「俺になんか……遠慮しなくていいのに」
少しの自嘲を含んだリンデルの言葉に、ロッソが反論する。
「そうはまいりません。私は勇者様に仕えている身ですから」
言いながらも、そっとベッドに腰を下ろしたロッソの長い黒髪を、リンデルはベッドへ引き上げる。
黒髪の毛先を抱き込むようにしてリンデルが体を丸めて横になるのを、ロッソは黙って見ていた。
黒く艶やかな髪に、リンデルは頬を寄せている。
何度も何度も優しく髪を撫でられて、ロッソは自分が求められているのではないかと錯覚してしまいそうになる。
彼がもし自分を求めるのなら、いつだって応えるつもりでいる。
そのための側仕えだと思っているし、事実前の勇者様にもそうして仕えてきた。
勇者は国のシンボルマークだ。
その立場上、色恋に関わるわけにはいかない。
万が一の場合を考慮し、任期中は女性と肉体関係を持つ事も禁止されている。
しかし、この青年はそれに対して思う所が無いのか、そういった不満を口にした事はなかった。
連日の戦闘で疲れ果て、守るべき対象からは非難を浴び続け、さらにはそんな自分を責めて。
彼の心が軋み、悲鳴を上げている音は、ロッソにははっきりと聞こえていた。
けれど、ロッソにはそれをどうする事もできない。
せめて、この青年が私を求めてくれれば。
少しは慰めてやる事もできるだろうに……。
ロッソは、内心の葛藤を表に出さないよう十分に注意を払いつつ慎重に口を開いた。
「いつまでそうしているおつもりですか」
ロッソの言葉に、リンデルはチラと黒髪の持ち主を見上げる。
怒ってはいない様子を確認すると、小さな声で答える。
「……もう少しだけ……」
ロッソはわざとらしくため息をひとつ吐いた。
それを聞いて、リンデルが拗ねるように言う。
「満足するまでいいって言ったじゃないか」
「物事には限度というものがあります」
ロッソは部屋の置き時計を見ながら答える。
時計の針はもう半分ほど回ろうとしていた。
「……頼む……もう少しだけ……」
リンデルに懇願されて、ロッソはゆっくりと瞬きをする。
「では、こちらで書き仕事をさせていただいてもかまいませんか?」
尋ねられたリンデルは嬉しそうに「もちろん」と答えた。
結局、リンデルはロッソの髪を抱き締めたまま眠ってしまった。
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もうあと少しで全部抜けるというところで、不意にギュッと髪を握られて、ロッソは思わず動きを止める。
「いやだ……」
まだ起きていたのだろうか、いや、今の拍子に起きてしまったのか?
「いやだ、よ……。忘れたく、ない……」
それは寝言だった。
けれど、リンデルの閉じたままの瞼の隙間からは涙が溢れていた。
「勇者様……」
ロッソは、溢れてくるその雫を、取り出したハンカチで丁寧に拭う。
後から後からとめどなく零れる涙に、ロッソは己の無力を感じていた。
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