使える魔法はセーブとロードとリセットです。

ちさめす

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父と子①

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町の北側には城がある。

白色の岩石を使ってレンガ調に建てられたその城は白城(はくじょう)と呼ばれ、その荘厳な風景に惹かれた町民はいつしかこの町を白城町(はくじょうちょう)と呼んだ。

白城町の周りには、町全体を取り囲むように白城と同じ岩石で城壁が建造されている。

包囲陣で魔除けの術式を展開をする為にその城壁を建造したことは全国的に評価されており、それから何百年と続く歴史の中で、治安、政治、観光、どれをとっても素晴らしい成果を上げてきた。

白城は3階建てで設計されており、僕たちは3階東側のハルの部屋から1階中央の大広間に向けてゆっくりと歩いていた。

移動中、僕はロイから父さんのことを聞いていた。

前のハルはよく父さんと反発していて、今朝僕がハルに転移した時も、父さんとの言い争いで家を飛び出したそうだ。

その後、町中を狼が襲撃していると報告を受けた父さんは大層ハルの身を案じていて、不安の中やっと息子が帰ってきたかと思えば、大怪我で気を失っているではないか。

追い打ちのようにロイから記憶喪失と聞いた時には、奥様共々膝から崩れ落ちたそうだ。

「お父上も奥様もハルの事を本当に大事に思っている。記憶を失っているとはいえ、お父上の胸中はお察しの通りだ。元気な顔を見せて安心させてやりなよ」

ロイは僕の背中を軽く叩いた。

「父さんの気持ちか・・・」

そう言って僕は黙り込んだ。

・・・

僕にも現実世界には父がいた。

母と3人で幸せに暮らしていた。

父はとても優しかった。

父の転勤もあり、僕が小学校に入学した当初、友達は居なかった。

父は毎日仕事で忙しいはずなのに、PTAでお菓子を配る許可まで取って、月に何度か友達を作るためのパーティを開いた。

クラスの子にも、親にも、先生にも、みんなにも父は尊敬されて、父のおかげですぐにたくさんの友達が出来た。

僕の為に父はいつも頑張ってくれた。

僕は、そんな父が大好きだった。

ところが、僕が小学校に入った年の夏、交通事故で死んでしまった。

夏休みの間にも関わらず、たくさんの人が参列してくれた。

急な出来事で理解が追い付いていないのか、葬式ではあまり涙は出なかった。

その日の夜、家で母が泣いているのを見た。

僕が後ろからそっと抱きしめると、母は振り返り僕のことを抱きしめ返して大声で泣いた。

その時、初めて父がいなくなったのだと理解して、僕はたくさん、たくさん泣いた。

母は言う。

父は幸せだったかな・・・一緒に暮らせて、幸せだったかな・・・。

僕は母の言葉に答えられなかった。

ただ、泣くだけだで、何も答えてあげることが出来なかった。

・・・

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