使える魔法はセーブとロードとリセットです。

ちさめす

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旅立ちの前日④

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口元を拭きながらニマは続ける。

「それで何?お願い事って?」
「そうだそうだ。ニマ、あの袋で落とし物を見つけて欲しいんだ」

「嫌だね」

即答してニマはパフェを食べ始めた。

「そっかーそれは残念だな。せっかくハルの為になることだったのに、仕方がないな」
「何?その落とし物ってハル様が探しているの?」

「そうだよ」
「ハル様!何を探されていらっしゃるのですか!」

スプーンを片手にこちらを向くニマの目はキラキラと輝いていた。

「えっと、あの、小さい玉のようなものを探していまして、ロイに聞くとニマさんなら見つけられるかもって」
「もちろんですとも!全身全霊を掛けて探しだします!探しつくします!」

ニマは椅子に掛けてあった茶色の四角いリュックをテーブルの上に置き、中から黒の巾着袋のようなものを取り出した。

「ぱんぱかぱーん!あ~ぶ~く~ろ~!」
「何をやってんだ?」

「雰囲気作りよ!それとロイは黙ってなさい」
「はあ」

ニマは取り出した黒い袋を裏返しにした。
袋は裏生地のピンクの色になった。

「この袋はね、二通りの使い方があって、落とし物を探す時はこっちの色で使うんだよね。さて、ハル様。落とし物を想像しながら袋に手を入れてみてくださいね」

そう言われた僕は栞の玉をイメージしながら袋に手を入れた。

すると、最初は空だったその袋の中で小さな物に触れた感触があり、僕はそれを取り出した。
それは、狼に襲われた時に無くした栞の玉だった。

「探し物はこれだよ!見つかって良かった。本当にありがとうニマさん!」
「いえいえ!これぐらいお安い御用ですわよ~」

ニマはにやにやと僕の顔を見ている。

(よっしゃ~!この調子でドンドンポイント貯めていくよ~!ビバ!玉の輿~!)

紅茶を飲みながらロイは企む顔を隠しきれていないニマに声を掛ける。

「いつ見ても便利な道具だよな。ニマのコアに反応して使用するものだから俺のものに出来ないのが唯一の不便なところだよ」
「べ~だ!ロイなんかに絶対にあげないよ~だ!」

ニマはロイをあしらうと僕に身体を向ける。

「ところでハル様、その玉は一体なんですか?」
「これは、・・・そうだな。お守りのようなものだよ。この玉で僕は記憶を失っちゃって、なんとなく持っていれば記憶が戻るんじゃないかなって思っているんだ」

僕は曖昧な返答をする。

(この世界の人に真実を語ることは混乱を招くだけだ。栞のことは言う必要がない)

「そうなんですね!見つかって良かったですねハル様」
「見つかって良かったな」

「ありがとう、ニマさん。ありがとう、ロイ」

僕は2人に感謝した。

(今回の物語はこれまでとは違う。またすぐに何かが起こるかもしれないし、早速だけどセーブしておこう)

僕は手に乗せた栞の玉に、念じる様に心で唱える。

(セーブ!)

すると、目の前が真っ暗になった。

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