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雨後の筍
しおりを挟む(四月)
その日の夜。
私がこれまでに雨星から聞いたことをノートの一ページにまとめた。
『私が雨に濡れることで雨星の声が聞こえるようになる。だけど雨が弱いと声は聞こえるけど内容は聞き取れない』
『強い雨が降ると雨星は外に出てくる』
『雨星は「境界を跨いだ者」としか干渉できず、雨が止んだ時に私が側にいないと拠り所を失い死んでしまう』
『遠くを見渡せる高い山なら雨の境界線を発見しやすい』
『雨の世界では独り寂しく雨姫が雨星の帰りを待っている』
私はしばらくノートを見つめた。
「絶対に雨の境界線を見つけて帰してあげるからね!」
私は決意を表明するように二つの拳を作った。
◇
数日後。
学校の帰り道、私はいつものように梨花と歩いていた。雨は降っていた。
「この雨でも山に登るんだよね?」
「うん、登るよ。梨花も来る?」
「ん~やめとく! 来週は中間テストだし今日は勉強しようかな」
「そっか」
「うん! それじゃあまた明日ね!」
◇
梨花と別れた私は一度家に帰って濡れてもいい服に着替えた。そして今度は傘を持たずに家を出た。
「今日こそ『雨の境界』が見つかるとよいな!」
「そうだね!」
私は雨星と話しながらぬかるんだ山道を駆け上がった。
山頂に着いた。だけどどこを見渡しても雨の境界線を見つけることはできなかった。
「雨の境界線はなかったね……。もしかして普通の雨の日には出てこないのかな……」
「ありがとう一年暦。徒労に終わってはしまったが、私はここまで来てくれたことに感謝しているぞ」
雨星はニコっと笑った。
つられるように私も微笑む。その笑顔に私は救われた気がした。
◇
その日から一週間が過ぎた。
授業中にぼーっと窓の外を眺めると、急激に空が曇りはじめた。
何となくこの後に一雨くる予感がした。
――ああ~山に登りたい~! でも授業中~っ!
さすがに授業を抜け出すわけにはいかない。やがて強風が吹きはじめゴロゴロと雷が鳴る。どばっと降りはじめた豪雨を私は窓の外から眺めた。
――ああ……絶好の機会だったのに……。もう当分は来ないよねえ……。
◇
その予想はいい意味で裏切られた。
それから週に一回から二回のペースでゲリラ豪雨は突如として発生したのだ。
授業中はさすがに登れないけど放課後や休みの日に雨が降れば私は山に登った。
だけど、頂上に着く頃には雨があがっていたり雨の境界線がなかったりした日が続いた。
◇
六月に入り梅雨を迎えた。
雨の日は倍近くに増えた。
ある日の昼休み、教室でお弁当を食べながら私は梨花に雨の境界線が中々見つからないことを相談した。
「軽い雨は風で流されちゃうから、強い雨でないと拝めないんじゃない?」といわれ、確かにと思った。
そして理科の先生にも意見を求めた。
「雨の境界線は弱い雨でも遠くからなら斜線として見える場合がある」ということを教えてもらった。
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