めも

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歳月は…

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生まれて初めて、男は手紙を書いた。

男は、文学は苦手だったためまとまらない文であったことに違いない。

しかし、それでも言葉以上の何かを伝えたくて手紙にした。結果は男が想像した通りだった。

それでも、男はまっすぐ気持ちを貫いたことで女の事を忘れる決意ができた。

お互いが別々の道を選び、出会ってから4年そこから月日は5年流れた。

男には4年付き合いもう結婚を考える相手が出来た。その相手はとても良い人だった。

しかし気になることがどうしてもあった。家柄の問題だった。相手の家ではどうやら何かを信じているらしくその事をずっと男は悩んでいた。

その話に触れることが、出来ない男の不甲斐なさを5年後女との再会が変える。

男はその5年間の間に仕事でいろんな場所に行き、5年後女と同じところに帰ってきた。元々、初めてのデートをする2年前までは同郷の二人。

男は結婚を前に女が今どうしてるか気になり連絡を取って食事に誘ったのだ。まぁ元々何もない二人だったので特に罪悪感もなかった。

ただ、そこには5年たっても変わらない女がいた。昔と同じで、大人しく天然、かと思うと意志が強い部分を併せ持つ深い魅力のある人だった。

男は、対照的な自分に切なくなった。この5年間、ただ流され幸せではあったが膨れるだけ膨れてしまったその容姿。男はかつてないほどの体重であることにその時気づいたのだ。

人は一度、何かから目を背けると他の何かもみえなくなってしまうのではないだろうか。

久しぶりにあった女の変わらずの対応がよけいに男には堪えた。このままで良いのかと。

手紙に書いた男が好きだった笑顔は5年たっても変わらずにそこにあるが、それを見る自分自身はあまりにも変容してしまっていた。

そして、昔の真っ直ぐな自分を取り戻したいと心から思った。
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