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婚約破棄宣言
15.突き刺さる破片と寂寥感
しおりを挟む本人を置いてきぼりにヒートアップする家族に挨拶を残し、自室へ下がるローゼ。
今は、理不尽な扱いに対する抗議や、元婚約者に何らかの報復に燃えているからいいけれど(いいのか?)いずれ、新たな婚約を結ぶと言われるのだろう。
ローゼ的にはそちらのほうが気がかりだった。
──当分の間、誰とも婚約を結ぶ気にはなれない
愛情も、共に歩むべきパートナーとして絆も培う事なく、一方的に添ってきた相手ではあっても、否、無視されても嫌われていると判っていても尽くさねばならない相手だったからこそ、今までの扱いと此度の仕打ちには傷ついていた。
その傷の塞ぎ方もわからないうちに、また、家や国の為の婚姻を結ばねばならない身を、たまに怨めしく思う事もある。馬や家畜の種付け交配と変わらないのではないか。そう思うこともある。
それでも、領民の労働と税収で、(婚姻相手以外)何不自由なく暮らしていけるのだから、貴族の義務として、領地に益のある国家のための婚姻をする事に、納得してはいたのだ。
(それをあの方が、見事に打ち砕いてくださった)
己の無能さを補う為につけられた才女となるべく教育されてきた自分を遠ざけ、愛らしい恋人を傍に置き、こちらを貶め存在を否定する。そして決定的に、努力を無に帰し立ち位置を取り上げた。
それは、意に染まずとも国家のためと言い聞かせ尽し自分の中に積み上げてきた物を、粉々に砕く行為だ。
その破片は胸の奥に仕舞い込んだ感情に深く突き刺さり、血を流し続けている。
繰り返し考えても、あれに愛情はない。愛着心や家族のような温かな情もない。そういう意味では、あれの側にいる事に未練はない。
それでも、王妃達との妃教育や、社交上の情報収集と操作を兼ねた茶会の練習と称した交流は、ストレスが貯まるしかないあれのフォローの日常の葛藤を洗い流してくれる、楽しみの一つでもあったのだ。
それだけは残念であった。
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