31 / 294
Ⅰ.納得がいきません
29.目立たないって難しい⑭
しおりを挟む《何してるのかしら?》
《花を見てるみたい》
《私の花よ! やっぱり、私の花が1番綺麗なんだわ》
《まだ、私の花が咲いてる所まで来てないわ。見たら、私のが1番よ》
《何言ってるの? あの子はさっきから、薄藤色の花ばかり摘んでるわ! きっと蒼系の花が好きなのよ! あなたのは真っ赤じゃない》
騒がしいくらい、妖精さんのお喋りが聴こえる。
精霊は静かに、魔法を営んでいる。風が花粉を運び、湿気を運んだり集めて草木を湿らせたり、大地が水を抱いて地下を流れ、花は咲き乱れる。
光が燦々と花や草木の生長に力を分け与え、陰に涼しげな安らぎの闇を生む。
鈴が転がる音にも、陶器のようなだったり、硝子のようだったり金属製のようだったり。高い音低い音、透き通った音、くぐもった音。
みんな少しづつ違う。そして、耳から脳に到達すると、鈴の音ではなく少女や幼女のお喋り声に変わる。
妖精達は、みな自分の世話してる花が自慢のようだった。
私は、花を楽しむ方法として、適量摘んで、編むことにした。
笑顔が爽やかなカインハウザー様は蒼や藤色の、才女で優しいお姉さんなリリティスさんには、情熱的な赤を基本に可愛らしいピンクや黄色でお茶目な所も表現。
編み上がった花冠をふたつ抱え、2人の方へ駆け寄る。
「カインハウザー様、しゃがんでください」
意図は通じたのか、素直に膝に手をついて、頭に手が届くように、前傾姿勢になってくださる。
たとえまねごとでもまさか本当に出来る訳もないので、カインハウザー様の頰や額ではなく出来上がった花冠に口づけをして、恥ずかしくて直視できなかったけど、頭に載せる。
「光が恵みと成長を助けるように幸運を、花の美しさが心を豊かにするように、香りが心身を安らげるように、カインハウザー様の行く先が良いものでありますように」
祈りを捧げると、摘みたてとはいえ茎から根から切り離されて僅かにクタッとしていた花がシャンとして、淡く光り出した。
「あ、あれ? すこし光ってる?」
「シオリが祈ってくれたのが、ただの言葉だけじゃなく本気だったから、精霊達が祝福を分けてくれたんだね。きっと、これを身につけている間は、怪我をしにくく前向きに元気でいられて、他の人より少しだけ運がいいかも知れないね」
え? また、やっちゃった?
「まあ、悪い事じゃないからいいんじゃない?」
リリティスさんも微笑みながら、屈んでくれる。
「光が恵みを闇が安らぎを、花のように気高く美しく、匂い立つ才能と英知に幸運をもたらしますように」
「主とは、違う祈りなのね」
「……なんでしょう? 適当とは言いませんが、出来上がった花冠とリリティスさんのイメージで浮かんでくる言葉、なのかな。口をついて出て来るというか、自然に飛び出す言葉というか」
「あら、私、そんな感じなの?」
淡く光り出した、赤を基調にピンクや赤紫で可愛らしく、所々に黄色の差し色を織り込んだ花冠を頭に載せる。
「やはり、シオリは、意図しない時に力を発揮するんだね」
「自分の分はないの?」
「私は、いいです」
実は、花冠を編むのは好きだけど、いざ自分の頭に載せるのは恥ずかしい。……自分が恥ずかしいことを、他人にさせるのもどうかと思うけど。
「お二人とも似合いますね。とても素敵です」
「「ありがとう。シオリも仲間入りする?」といいよ」
にっこり微笑んだお二人に手をひかれ、お花畑の中に進む。
「さて、どうやって編むのかな?」
2人の微笑んでるけどどことなく威圧感ある雰囲気に押され、仕方なく、子供の頃初めてシロツメクサを編んだときの覚えた手順を教えていく。
「こう、なるべく茎を長めにとってください。短いと編めないので」
最初に2~3本揃えて持ち、摘んだ花をずらして重ね、茎を1周させて持ち直す。
これを繰り返して、頭の大きさに合わせて最後を束に押し込んで纏める。
手軽にブレスレットサイズに作って、お花に口づけて、リリティスさんの魔法の助けになりますように、と呟いて、リリティスさんの左手首に通す。
「あら、素敵。花も冠とお揃いで、ブレスレットとして見えるように、アクセントを持たせたデザインにしてくれたのね」
そう、花冠はどこでも正面に出来るよう、均等に花を盛り、数カ所アクセントになる大輪を飾ったけれど、ブレスレットは、手首につけるので、内側にゴワッとならないよう、全体を小振りな花で構成して、手首から手の甲に向かって、綺麗な花が飾りのようになるよう作ってみた。
「リリティスは2つも貰えていいなぁ」
そ、そんな事言われても……
青い花と薄紅色の花と、黄色の可愛らしい花とで小さめのコサージュを造り、同じく、カインハウザー様の助けになりますように、と呟いて胸ポケットに挿す。
「ふむ。リリティスのブレスレットは魔術の強化補助、わたしのは防御守護の加護がかかっているようだね」
「そうなんですか?」
「わたしは魔術は使えないけど、視る眼は持ってるからね」
魔術は使えない? 初めて会ったとき、真実の精霊を降ろしたって言ってたけど……?
でも、精霊に対しても誰に対しても、嘘は言わないと仰ってたので、そうなんだろう。
「ほら、シオリの分が出来たわ。シオリは、髪が殆ど黒に近い栗色で、濃い色の花より、明るい色が似合うわ」
リリティスさんの手に、黄色を基調に、淡いピンクや白の花が編まれた花冠がある。とろろどころ、桔梗のような形の薄蒼色の花が差し込まれていた。
「リリティスさんと、カインハウザー様も一緒にいるみたい」
「シオリが作ってくれたコサージュも、シオリとリリティスが寄り添ってくれてるようだよ」
綺麗にウインクして、リリティスさんの方に向き直り、花冠を受け取ると、私と同じように口づけて祈ってくれた。
「この先、シオリに幸せがたくさん訪れるだろう。君達も見守ってくれるんだろう?」
この『君達』は、この辺りにいる精霊達の事だろう。リリティスさんの作ってくれた花冠が淡く蛍火のように光り、所々チカチカと明滅していた。よく見るとそこには、小さな小さな、小指の爪に座れるくらいの女の子がいて、笑って手を振ってくれた。
「可愛い♡ 親指姫ならぬ小指姫ね」
これからは、ちょっとした感想でもひとり言でも、よく吟味して発言しよう……
だって、興味を持ったカインハウザー様に、親指姫から入って、かぐや姫や人魚姫など、お伽話のお姫さまのことを、知るかぎり、夕刻の鐘が聴こえるまで話させられたんだもん。
🔯🔯🔯 🔯🔯🔯 🔯🔯🔯 🔯🔯🔯
次回、Ⅰ.納得がいきません
30.ここはどこ? 目立たないって難しい⑮
52
あなたにおすすめの小説
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました
朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。
魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。
でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる