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優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女
公爵邸 五日目──どうしたら、事態は進展するの?
しおりを挟むお風呂から出されて、髪も乾かされて。勿論そんなのよくわからなかった。だって、ルーティシアさんに抱き締められて、もにゅもにゅお胸に顔を埋めて泣いてたから。
ふりふりの寝巻きに着替えさせられていた。寝巻き──抱き締められていても着せやすいようにか、和服や古代ギリシャのキトン、ローマのトーガ、のように、体に巻き付けて肩で止めるだけの簡単なものだった。
体も楽だし次からは全部こんなのでもいいかな。と思ったのはもう少し後だけど、現代社会のようなラフな洋服は見ないので、こういうのか、いかにもお貴族様なゴテゴテ服しか無いのかもしれない。この数日でも、一度も機械を見ないからミシンも無いかも。
ルーティーシャさんに撫でられながら、ベッドに入れられ、朝まで添い寝してもらった。
完璧子供扱いだけど、心に余裕が無かったので朝まで抗議もせずべそべそしてしまった。
あと数年で50の大台に乗る中年女の行動じゃないけど、お仕事や家庭に責任を重きにおいて暮らしてこなかったお気楽さから、精神は未熟なままな部分と、知識だけは少しづつ蓄えてオバハンな所と、違和感なく両立して暮らしてきた。
その物心ついてからの数十年と、こちらに来てからの数日と、自分の行動の愚かさとに、一晩泣いてもスッキリしなかった。
泣いても進展しないから。
泣いて後悔しても成長しないから。
泣いて縋っても誰にも助けて貰えない事だから。
殆ど寝てないけど、起きた時は、目玉溶けそうなほど熱くて、目蓋開かないほど腫れてた。
ルーティーシアさんが、平手をそっと私の目に当てて、こしょこしょと呪文を唱え、段々熱がひいていく。
でも、今日は気恥ずかしさと、不安な気持ちと、夢見も良くなくて、ベッドから出たくない。
枕を抱えて、掛布の中に引っ込んで縮こまる。
「ヴァニラ、 ヴッフィアルヴ。 フィレオヒィドゥアレヴィオルマグル※※※(以下略)」
ルーティーシャさんが、優しく掛布をめくり、枕元に座って、私の頭を撫でる。
メイド頭さんと若いメイドさん2人がワゴンを押して近づいて来た。
ワゴンのカバーを取ると、ほかほか湯気の立つお粥と、液体に近いスクランブルエッグと、ベリーたっぷりのフルーツサラダ、ヨーグルトが載っていた。
どうやら、食堂まで行く元気がなくても、食事だけはしろって事らしい。
もそもそ起き上がると、ズレて肩が出てる寝間着を直し、ベッドの淵に、ルーティーシャさんと並んで座り直す。
寝起きは手に力が入らないので、ふるふるしながらスプーンを持つと、こぼすと思われたのか、横から背中の方に身を乗り出したメイドさんに、涎掛けみたいなのを前につけられる。
一晩中泣いたせいで、喉の奥が腫れてうまく口が開かない。それでも、温かいお粥は胃に染みて美味しかった。日本のお米とはちょっと違うみたいだけど。
サラダもヨーグルトをかけて、デザートとして食べた。
ルーティーシャさんは誉めるように微笑んで、頭を撫でてくれた。
いや、だから、本当は中年女なんだけど、漫画で説明するか、状況を利用するために黙ってるか、まだ迷ってる。
勿論、罪悪感はあるんだけど、言葉も通じなくてお金も無くて、身分証もない着替えもない、無い無い尽くしで放り出されたくない。
前掛けを外して、食器と一緒にワゴンでメイドさんが持ち去る。
今日は着替えなくてもいいらしい。
掛布の中に潜り込んで、枕を抱えて目を閉じる。
ルーシェさんが戻ってこない間に、放り出される事はないと思う。
収容所とやらで、ジュードさんが何処まで話すんだろうか。
──実は異世界人ですって? 本当はお子さまじゃないって? ジュードさんも、私の歳は自分より幾らか年上くらいにしか思ってないみたいだけど、そこはまあいいや。10歳くらいたいした問題じゃないよね?
言葉が正しく聴き取れないから、発音できないから覚えられないんだとしたら、この先も単語とカタコトくらいしか期待できないだろう。
それで生きていけるのか。
ジュードさんが会った人達は、日本に帰らず歳を重ねてるみたいだけど、帰った人は居ないのだろうか。
私は、もう日本に帰れないのかな。
仲良くしてた人や家族と会えないのは寂しいけど、引っ越すたびに前の街の人達と疎遠になるから、似たようなものだと思えば、まだ耐えられる。
むしろ、ちょっとした図書室なみの蔵書と会えないのが寂しい。死にそうになる。もう一週間以上、本を読んでない。
そう思ったら、死に物狂いでせめて文字を覚えるべきか。表音文字なのかな? 表意文字なのかな?
また、ジワッと滲んできた。
*** *** *** *** ***
今年、花粉キツいですね。雑草の花粉症患者のピコっぴですが、もしかしたら、杉檜もデビューしてしまったのかも知れません。
風邪の方がマシって感じで体力削がれてます。
皆さまも、蓄積花粉貯めないように、発症しないように、すでにデビューされてる方々は少しでも軽くなるように、世界に祈ります。
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