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🐾暗い陽の差さない地の底で🐾

👻6 神さまの名前

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〔あ、そうだ、忘れてた。君が起きたら、名前をつけてもらうんだった〕

「ああ、根性の入った名前だっけ?」

〔違うよ、今生の名前。今までのこの祭壇に封印されてたボクではない、君を依り代として現世に立ち戻った、新しいボクの名前。格好いいのか綺麗なのがいいな〕

「⋯⋯精霊や魔獣に名前をつけたらティムして使役獣になったって話も聞くけど、僕なんかが神さまに名前をつけても大丈夫なの?」

〔ボクの真名なまを知っている訳じゃないから大丈夫。
 さあ、このふわふわした消えそうな存在から、力ある立派な新しい神にしてくれよ?〕

 なんだか、不安になるような情報もあったような気もするけど、いつまでも君とか神さまとかじゃ、長くなる付き合いみたいだし寂しいよね。人前で神さま、なんて他人には見えない存在に話しかけたらおかしい人扱いされるかもだし。

 格好いいのか綺麗なの、かぁ。

 難しいな。

「その前に。なんの神さまなの?」
〔ん? なんの、とは? けっこう昔からいるよ?〕

 古代神なんて言われるくらいだもの、そうとう昔から存在するんだろうな。

「どっちともとれそうな姿だけど男なのおん⋯⋯」
〔これは、君の前に捧げられた少年の姿だよ〕

 聞かなきゃよかった。

「何を司る神さまなの?って事だけど。太陽神は光や熱、生命力を司る神さまでしょ?」
〔何でも? 君をはじめとした、ボクを信仰する人がボクを形作るんだ。太陽神は創造神が、ああいう神になるように造られたけど、ボクは人の信仰から生まれた神だから〕

 そうか。僕が思ったイメージのままの神さまになるのか。

 雫となって僕に降りそそいでいたのを思い出すと「プルウィア(雨)」「ロス(雫)」

 強い光で床を綺麗にしたのを思い出すと「ルーメン(光り)」「ルクス(光)」「ステラ(星)」「ラディウス(光線)」「クララ(明るい)」

 その辺を羅列していると、神さまが肩を揺らして反応していた。



「ノヴァ(新生)・ロス(雫)クラリス(美しい輝き)」

 適当にイメージのままならべると、金色の光る霊魂状態だった中性的な(少年のものらしいけど)姿の神さまは、一度眩しいほどに光った後、半透明なのは変わらないけど、より可愛らしい容姿の子供の姿になっていた。

新しいノヴァ・ボクの名前ロスクラリス。君がボクに抱いた印象──雫となって君に浸透する美しく輝く光。ありがとう。気に入ったよ〕

 今後、僕がロスクラリスに抱くイメージが、彼(?)彼女(?)の神としての力になっていくらしい。

「そう言えば、なんでこんな地下ダンジョンの最下層の、隠し部屋なんかに祀られていたの?」

〔それなんだけど、思い出せないんだよね。神としての、魔法の使い方や知識は覚えてるんだけど、その力は、実際に使えるのは昔の何分の1ってくらいの弱いものだし、なんでこんな所で祭壇に縛り付けられているのか、まったく思い出せないんだ〕

 僕は生贄として捧げられたからよく解らないけど、トゥグリが持って来た依頼クエストの、この隠し部屋にあったというお宝と関係あるのかな?

〔たぶんね。もしかしたら、その鷹族の鳥人の小娘の持ち去ったものと、ボクが長い間ここに閉じ込められていた事は、関係あるのかも〕

「たぶんと言うより、そうなんだろうね。僕が捧げられて、トゥグリが何か持ち出したから、ロスクラリスは僕と同化して、祭壇から離れられたんでしょ?」

 だとしたら、僕はなんとかしてここから出られたら、トゥグリを見つけ出して、ロスクラリスが神さまとして自由になる方法を探さないといけない。

 そして、家族同然に暮らしていた仲間だったはずの僕を、平然と生贄に差し出したアイツらに、目にものを見せてやるんだ。

 そのためにも、力や体力はすぐにはつかないけど、長い間封印していた魔力を解放して、魔法を習って、ここから出ないと!

〔うん、よろしくね。頼りにしてるよ〕

 元よりもより可愛らしくなったロスクラリスは、僕がつけた新しい名前の通り輝くような笑顔で、僕の肩を叩いた。



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