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🐾始まった魔法の特訓とまだ戻れない地上🐾
🐾9 立つ鳥、跡を
しおりを挟むそして、もうひとつの警告は、ここにあるものに、人間である僕にはよくない細菌や悪い精霊が憑いているという意味。
「そんなによくないの?」
ロスクラリスが焦って警告するほど?
〔盗賊鼠たちにはどうでもいいのかも知れないけど、その探索者タグには、自分の死に納得してない持ち主の恨みというか怨念みたいなものがこびりついてる。触ったら、鬱になったり精神が病んじゃうかも〕
ひとりでダンジョンにいたら、いずれ僕も病みそうだけど、ロスクラリスが居てくれるからなんとかなっている。
〔それに、普通に、ここは長い間閉ざされた空間だったから、空気に黴や細菌がいっぱいいるよ。
それから、その真珠のネックレス。海精類の娘の呪いがかかってる〕
触りたくないかも。
〔ボクが、海精の呪いは真珠の核の奥に閉じ込めてあげるよ〕
ロスクラリスが息を吹きかけると、真珠のネックレスが震えて、虹色の輝きが弱くなった。
〔海精達の涙が結晶化して出来る真珠は、魔法使い達の間で高値で取引されるようだね。それで捕まって、無理矢理泣かされ続けた海精の怨嗟の声が、聴く者の精神を狂わす呪いになってるみたい〕
お金のためにずいぶんと酷いことをするヒトもいるのが現実だ。
海精達は海に棲む妖精。上位種なら言葉も通じるのに、獣人達は、カレラを魔物扱いなのである。
精霊と違って物質的肉体もある、会話の出来る種族なんだから、魚類の獣相のある魚人だと思えばいいのに。
いつもは海の底に居てほぼ交流はないし、魚や貝、珊瑚などを乱獲する者を懲らしめるのに、船の舵を狂わせたり、時には沈めたりするから、ヒトにとって、彼らは魔物なのだ。
「いつか、海精の集落のある岬とかに行くことがあったら、返してあげたいな」
〔いいね。君なら出来るよ。可哀想だけど彼女の声は閉じ込めたから、ポケットにしまってももう大丈夫だよ〕
たくさんのガラクタに見える小物やマジックアイテムに、浄化能力に特化させた〘洗浄一閃〙をかけて、ありがたくポケットに納めさせてもらう。
いつか、何かに出来るかもしれないからね。
いつか、海に行くことがあったら、仲間に返してあげるね。
そう言い聞かせてから、ポケットに収納した。
*******
そんなこんなで、隠し部屋を開くたびに、曰く付きのアイテムが増えていったのである。
古い時代の刃毀れのある剣は、疑似生命の錬金術がかかっていて、一種の人工生命体である。
空中に放り投げると、襲いかかってくるので、剣を持った魔物を捌く訓練に使えるので持って来たのだ。
半年近くも居ると、感慨深いというか、愛着が涌くというか、この部屋を出るのも、ちょっと寂しかったりして。
この半年、この部屋は自分の部屋と言っても過言ではなかった。
大怪我をして寝込んだり、筋トレしたり、魔力操作の訓練をしたり、生きた古剣と体術や魔法の訓練もしたし。
持っていった方がいいもの、思い出のもの、換金性の高いアイテムや魔術や魔道具の触媒になる素材など、持てる物はすべてポケットに収納した。
ガランとした、冷たい空気の岩肌が剥き出しの隠し部屋。
発動後は消滅する咒紋を施した転移魔法陣を残し、部屋中にあった色んな効果の魔法陣は消去した。
僕は〘明光〙を解呪し〘転移の扉〙を発動させた。
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