死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔導大会三日目

108話 魔撃墜、決勝の七名

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 魔導大会三日目、選手番号一番のアルムは早速試合が行われていた。

『3、2、1――――試合終了ォ! またもや満点を叩き出したアルム選手! 一足先に決勝進出決定!』

「カッコいいぞアルム!」
「このまま優勝まで突き進めェ!」

 サイベルの声とともに会場が湧き上がる。

『昨日の一回戦と二回戦、そして先の三回戦で火力、精度、速射性の評価項目全てを無失点で迎えています。魔力を温存しても問題ないと思いましたが、彼の勝利への執念には敬意を評します』

 エリアは畏怖に近い感情をいだいてすらおり、頬に一滴の汗が伝わせる。

「くっそ……!」

 アルムの対戦選手は魔力を使い果たしたようで地面に座り込んだ。

「ふぅ……」

「お疲れ様です、先ほども素晴らしい試合でした」

 アルムは涼しそうな顔で足早に入口に移動するとカルティアが出迎えた。

「しかし少しくらい手を抜いて魔力を温存させたほうが良いのではないですか?」

「家族が観に来てくれたんですから半端な試合はしませんよ。それに逆転されて『賭け』に負けたくありませんから」

「覚えてくれてましたか」

「当り前ですよ、この大会に出場するきっかけですからね」

 両者の間に交わされた契約、それは『何でも一つだけ相手に命令を下せる』ものであった。

(魔導大会の個人総合ポイントで一位になれれば、彼女の思惑を聞き出すことが出来る。彼女の命令内容ははっきりしていないが、俺が勝ち続ければ問題は無い……) 

「選手番号12番のカルティア=エンドリアス選手、試合が始まりますのでフィールド内に来てください」

「すぐに行きます。ではアルム君、決勝戦で会いましょうね」

 彼女はそう言い残してアルムの横を通り過ぎる。

「俺も応援するとしますかね」

「悪いけど少し付き合ってもらえないかしら?」

「……⁉ あんたは……」

 彼も歩き出そうとすると柱の影から同じく三回戦を控えているタリオナが姿を見せた。

「貴方の試合はまだ先だから……決勝進出のお祝いを言いに来てくれたんですか?」

「……ええ、でもこの場は人目に付きます。場所を移動しましょう」

 嘘つけ、と心の中で思いながらも彼女の誘いに大人しく乗った。

 ***

 アルムは彼女の案内で使われていない小さな部屋に移動した。

「それで二人きりの密室でどんなお褒めの言葉を頂けるんですか?」

「……まずは先に言っておきます。私は貴方が好きではありません」

「さ、左様ですか……」

 褒められると思っていなかった彼だが、流石に嫌われているとは思っていなかったようで僅かに動揺を見せる。

「先生は友好的に接しようとしているのに、どうしてそんな横柄な態度が取れるのか疑問でなりません」

「横柄って……それはレイゼンが敵で、信用できない人物だからです」

「それは先生が裏社会スタンドルの一員だからですか?」

「そうですよ! 死滅大陸から魔物を持ってきたり、罪のない人々を犠牲に竜種を召喚するやから徒党ととうを組む人間を信用できるわけが無い!」

 アルムは彼女たちとの関係をかんがみて、言葉を選びながら返答を続ける。

「確かに情報を提供してくれたり、介入してくれることに多少の感謝……いや助かっている面はあります。ですが、くまで向こうの利益になるから手を貸しているだけ。俺とレイゼンの関係はお互いの利害の一致、それ以上でもそれ以下でもない!」

「…………」

(少し言い過ぎたか……)

 俯いて黙ったままの彼女にアルムは困惑した様子を見せる。

「……どうして」

 しかし次の瞬間に彼女はゆっくりと口を開いた。

「どうして、そんな冷たいことを言うの……」

 だが普段の理知的な様子とは異なり、寂しげな少女の顔をしていた。

「冷たいって言われても、そういう関係なんだから仕方ないじゃないですか。きっと向こうも同じことを――――」

「なんで向き合ってあげないの! なんでも理解しようとしないのォ! なんで、その優しさを……先生にも向けようとしないのよ……」

「タリオナ……」

 目じりに涙を浮かべ、取り乱した様子にアルムは声が詰まってしまう。

「――――付き合ってくれてありがと、決勝の舞台で戦いましょう」

「待て、まだ聞きたい事が――――」

 丸眼鏡を掛けたまま適当に涙を拭くとアルムの言葉を待たずに部屋から出て行った。
 タリオナが大声で訴えていたせいか、部屋の中に静寂せいじゃくが訪れたようにすら感じられる。

「……ったく、訳わかんねェよ……!」

(けど考えるのは後でいい、今は午後の決勝戦に集中しねえとな……)

 意図の読めない発言に戸惑いつつも、気持ちを切り替えて彼も部屋を後にする。

「ミリエラの試合も終わったかもな」

 タリオナとの密談は10分程度だったが、第三回戦の試合は七回しかないため悠長ゆうちょうに構える時間はなかった。

「あっ!」

 観客席へ続く階段を上ろうとすると上階からカルティアと出くわす。

「アルム君、今までどこに居たんですか! 私やミリエラさんの試合も応援しないで……」

「少し野暮用で、試合はどうでしたか?」

「私は勝ちました、決勝戦で会おうと言ったではありませんか」

「そう言えばそうでしたね、私は……? ミリエラ先輩の試合はどうだったんですか?」

「いけませんっ! 私は彼女を迎えに行くのでした! ではまた後ほど」

 彼女は思い出したかのように手を合わせるとアルムの質問に答えず、階段を下って行った。

「……負けたって事なのか?」

 ミリエラが決勝に進出すると踏んでいた彼は驚きつつも階段を上がる。

「ッ……ふっ――――⁉」

 フィールドを見下ろした直後、凄まじい悪寒おかんが彼の体を駆け巡らせる。

「……この感覚、間違いねェ!」

 アルムは冷や汗をかきながら大きな確信を得た。
 正確にはフィールド内に立っているミリエラの相手選手に視線を向け、拒絶反応をみせていた。

 その後、セロブロ、エルビィス、タリオナ、ベレスが勝利を収め、決勝戦進出の七名が確定した。
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