死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔導大会四日目

もう一人の暴君

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 一対一の初戦から一時間半が経過、ライザ、テイバンともに難なく試合に勝利し、アルムの対戦まで試合が進んだ。
 アルムはフィールド入り口まで足を運ぶと監督者が呼び止める。

一対一ワオン・デュエルの競技規則を再度説明します。
その1、対戦相手を死に至らしめるような怪我を負わせないこと
その2、負けを認める発言、もしくは気絶など戦闘の続行が不可能と監督者が判断した時点で戦闘行為を中断すること
その3、試合で武器や防具を使用する際は事前に大会連盟に許可をもらうこと
 説明は以上になりますが質問はありますか?」

「……フィールドを覆う結界について――――」
「いよいよ試合が始まるな、アルム!」

「チッ、またお前かよ……」

 やや緊張した面持ちで尋ねようとしたアルムだが、ベレスの登場により不機嫌さを露わにする。

「ベレス選手、今は競技説明をしているのでお話はあとに――――」
「何か文句ある?」

「ッ……⁉」

「監督者さん、こいつに訊くので大丈夫です。説明ありがとうございました」  

 介入する監督者を邪魔そうに見つめるがアルムが手で制する。

「で、ではっ、失礼します……!」

 命拾いした彼は足早にその場を立ち去った。

「あれ、結界の……何だっけ?」

「お前に訊きたいのはそれじゃねェ。何の用だ?」

「……アルム、この大会が終わったらこの国に来いよ」

「来いって、つまりベルモンド王国に移住しろってことか?」

「そうだっ! うちの連中に聞いたんだけどよ、ライタード家って貴族の家系じゃないんだろ」

 藪から棒になんだ、そう言いたげな表情を浮かべるアルム。

「勘違いするなよ。別に見下したい訳じゃない、俺も平民の生まれだからな。でもお前ほどの実力者が金と権力しか取り柄のない貴族クソどもに従わなくちゃいけないなんておかしな話だと思わないか?」

「……まあ腹が立たないと言えば嘘になる」

「だろっ! この国は実力さえあれば金も権力も手に入る。それは俺の今までの言動を見ていれば理解できたはずだ」

 懇親会での暴力行為、そして昨夜の暴挙と他国の人間が巻き込まれたにもかかわらず、ベレスに対して制裁はおろか指摘すらされていない様子。

 自国民はそれが当たり前だと受け入れ、周辺諸国も直接的な被害がなければ目を瞑り触れようとしない。

「お前が頷いてくれればすぐに手配をしてやる。勿論、一家全員でも構わない。あとどうしてもって言うなら昨日絞めたあの女も連れて来てもいい」

「…………黙れ」

 話半分で聞いていた彼だがラビスの話題が上がると途端に冷ややかな視線を向けた。

「でもあんな鈍臭い女を連れて来るならお前好みのいい女を――――」
「黙れって言ってんだろォ‼」

 静寂の空間にアルムの怒声が廊下中に響き渡る。

「お前がラビスを語るんじゃねェ!」

「よっしゃ! 一回戦突破――――……」

 殺意が迸る空間に勝利をかみ締める選手がフィールドから戻って来るが、異様な雰囲気に高揚した感情は一瞬の内に鳴りを潜める。

「……悪かった、引っ越すならラビスって子も連れて来いよ」

「……し、失礼します」 

 ベレスは訂正し、巻き込まれた彼は腰を屈めながらその場を後にした。

「アルム選手、フィールドの改修が終わったので入場お願いします」

「……はい」

 審判補佐に呼ばれた湧き上がった怒りを収め、戦場の地に足を踏み入れた。

「頑張ってね、ガンド!」
「向こうは完全に油断しているはずだ!」
「その隙を突いて一発かましてやれよ!」

「うん! 行って来るよ、みんなっ!」

 家族や友人に見送られ、もう一方の入り口からアルムの対戦者が入場する。

『次の対戦選手たちを紹介します。エンドリアス学園一年アルム=ライタード選手とロードスト学園一年ガンド=クレイサー選手です』

『一年生でありながら選手として抜擢ばってきされたふたり! 肉弾戦を得意とするアルム選手に対し、ガンド選手は中遠距離からの戦闘を得意としています! 一体どのような試合を繰り広げるのでしょうか⁉』

 エリア、サイベルの軽い紹介を経て、彼らはお互いに向かい合った。

(影から離れて、指の向きから光線を読んで、地面からの結晶を避ける……この三つを抑えられれば勝機は見える!)

 圧倒的な実力差があろうともガンドの瞳には戦う意思が宿っていた。

「双方、恥じない戦いを……戦闘開始っ!」

 審判役の監督者の合図が聞こえると早々にガンドが動き出す。

「【天風の渦リレイブ・フロート】!」

 構築式を展開し、大きな渦を巻いた風がアルムに襲い掛かる。

「【黒棘ブラックパレス】」

 対するアルムは一歩も動かずに大規模な針状の黒結晶を展開し、暴風と正面から衝突した。

 結晶の破片がフィールド中に飛び散り、覆われた結界に激突する。

『開始から魔法のぶつかり合い、双方一歩も引きません!』

「くっ……!」

 しかし魔法出力に差がある以上勢いが拮抗するのもほんの僅か、徐々にガンドの風を押されつつあった。
 
(押し合いじゃまず勝てない。ここは一旦引いて立て直す!)

 分の悪い戦いだと早くも見切りをつけ、弧を描くように右方向へ走り出す。

「連戦を控えているなら魔法を連発出来ないはず――――なのに……⁉」

 ガンドの予想とは裏腹に同等以上の黒棘が軌道を変えて展開してきた。

「【旋風璧ウィルウォール】」

 彼は回避を諦めると両手を高く上げて自身を中心に竜巻を作らせる。

 黒棘は足を止めたガンドを囲い込むが、上へ吹き荒れる風が黒い結晶から身を守った。

「すげェぞガンドの奴……!」
「あのベレスと戦ったアルムと渡り合ってる……」
「そのまま耐えろォ!」

 魔撃墜決勝戦のような番狂わせを期待され、ロードスト学園の生徒たちから声援が送られた。

(俺の半径10メートル以内に、影はないな……)

「終わりだ」

 足元を見回して確認した彼はようやく一息吐くが、アルムは人差し指を正面に向けた。

「勝負はここからっしょ!」

「【魔黒閃ビルスター】」

 彼の指先から黒熱線が放出され、交差する黒結晶を溶解しながらガンドに向けて一直線に向かって行く。

「……無理だこ――――」

 敗北を確信したガンドは魔法を解かず、しかし立ち尽くしたまま熱線に呑み込まれる。

 ガルドの竜巻とアルムの熱線によって黒結晶はさっき以上に激しく飛び散り、間近で観ていた人たちに理不尽なまでの力の差を思い知らせた。

「アルム選手は攻撃を止めて下さい!」

 ガンドの安否を確認しようと監督者が駆け付ける。

(少しイライラしてたな……)

 魔法を展開できたことでアルムもようやく一息吐いた。

「担架を持って来てくれっ! ガンド選手はもう戦えない!」

「――――ガンド選手戦闘不能っ! 第一回戦はアルム選手の勝利です!」

 勝敗を言い渡されたアルムは淡々と入り口に戻って行く。

『……最後は高火力の魔法で制し、アルム選手第二回戦進出です!』 

「あんな火力出んのかよ⁉」
「肉弾戦が得意なんじゃなかったのか⁉」
「でもこの強さ……ベレスとの試合が待ち遠しいぜ!」

 遅れてサイベルが勝利宣言を皮切りに静まり返った会場が湧き上がった。

「アルム……!」

「…………」

 寂しそうな彼の様子にラビスとレイゼンは一抹の不安を覚える。

はそれで良いんだ、圧倒的な差を見せつけろ」

 対照的にベレスは自身と同類であることに安心を覚えた。
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