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魔導大会四日目
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「ラビスっ⁉ 何でここに……」
扉越しから彼女の声が聞こえた。
夢、いや俺の様子がおかしかったから宿舎まで来たと考えるのが普通か。
「なぁ――――……」
俺は用件を尋ねようとしたがすぐに口を閉じ、今更だが狸寝入りでその場を凌ぐ。
確かに話しかけて欲しいと言ったが、あれは……何かの間違いだ。
ただ彼女に声を掛けられたお陰でケツに火が付いた。少しでも寝て体を休めよう。
第一声から数十秒が経ち、声どころか音すら聞こえてこなかった。
「アルムは何で疲れているの?」
「ッ……⁉」
立ち上がろうとするが予期せぬ第二声に再び床に座り込む。
まだ居たのかよ、って言うかどんな質問?
頭の中で突っ込み入れてしまうが声は発さずその場に留まり続ける。
「連日で頑張ったから疲れてる? それとも慣れない寝具で眠れてないから? それともレイナさんのご飯が食べれていないから?」
どんな質問を投げ掛けられても俺は口を閉じ、彼女が去るのをひたすらに待った。
「アルム程じゃないけど私も百キロ走は疲れてたんだよ。今までにないくらい魔力を消耗して崖から飛び降りて……あんなに忙しかった日は無いって、そう思えるくらい」
彼女は俺が寝ていても起きないくらいの声量まで抑え、扉に向かって話し続けた。
「疲れた時は楽しかった時を思い出すと良いんだよ。私だったら百キロ走の練習とかアルムと過ごした学園生活かな。アルムはどんな時が楽しかった?」
「…………」
「答えてくれなくても聞いてくれなくても良いんだ。アルムがぐっすり眠れている事が一番だから。でも寝られなくてひとりが辛いなら私と一緒にお話ししよう」
「……――――」
扉を開けるまで話を止めないと確信した俺は静かに立ち上がり、ドアノブに手を掛ける。
「……アルムは――――」
「何だよ、ラビス」
俺は微笑みながら扉越しだった彼女と対面する。
「……ごめん、起こしちゃった?」
「ああ、良い意味で起こされた」
「本当にごめんね、出来るなら何かお詫びをさせて欲しいな」
「……なら二人で話そうぜ」
俺の提案に快く頷いた彼女は、お邪魔しますと言って部屋の中に足を踏み入れるとそのまま二人でベッドに腰掛けた。
「分かってたと思うけど本当は寝てなかった。だからラビスの話はずっと聞いてたけど、あれは何だったの?」
「あぁ……部屋に閉じ困っているアルムを見ていたら妹さんと上手く話せなかった時を思い出したんだ」
「つまりマインの懐柔手段が俺にも通用すると考えたってこと? 成功して良かったね」
申し訳なさそうな彼女に嫌味を交えて称賛の言葉を送った。
「起きていたなら私の質問にも答えてよ」
「最初の質問のことか?」
コクコクと首を縦に振るラビス。
なぜ疲れているのか? その問いに対する答えは多くあるが開示できる情報は指で数えられるほどしかない。
「……そりゃあ魔力を消耗し過ぎたからな」
「本当にそれだけ?」
「本当だよ、魔力が枯渇すれば疲れるのは知っているだろ」
眉をひそめムッと睨みつけてくる彼女を直視できず、目線を泳がせた。
「分かった! アルムがそう出るなら……」
「えっ⁉」
聞き返すよりも早く彼女の右手が俺の右耳に触れ、ぐっと彼女のほうへ引き寄せられる。
俺は抵抗せずにか弱い力に全てを委ねるとそのまま彼女の太ももに頭を預けた。
スカート越しだが左側頭部が柔らかい感触に包まれ、ほのかに石鹸のようないい香りもした。
「……ラビスさん、これはどういう――――」
しかしいつまでのこのような状態で良いわけが無い。
彼女のほうを振り向こうとしたが、赤く染まった顔を見てすぐさま姿勢を戻す。
「向き合ってると強がったり素直に話してくれないから、あとは少しでも横になって身体を休めて欲しかったから……だ、だから特別だよっ!」
彼女は震えた声で説明し、恥を忍んで俺を元気づけようとしているのが分かった。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺は首から頭までの力を抜き、先ほどの感触を取り戻す。
恥ずかしくないと言えば嘘になるが悪い気はしない、むしろ心地いい……。
「ホントはね、疲れてる理由が訊きたかったわけでも膝枕をしたかったわけでも無かったんだよ」
「……じゃあラビスは何しに来たんだよ?」
当然のように頭を撫でる彼女だが心地良かったため気にせずに話を続けた。
「アルムも誰かに頼って良い、ってそう伝えたかったんだ」
「……ちゃんと頼ってるよ」
直近で言えば黒玉の件でレイゼンに頼った? ことくらいか……。
「じゃあどうして試合に勝ったのにあんな悲しそうな顔をしてたの?」
「……? まあ気持ちのいい試合じゃなかったから、かな」
「いっぱい動いて、長い時間戦っていたら気持ちのいい試合だった?」
「まあ、そうかもね」
良い試合の表現としては不適切だが、さっきの試合よりは幾分かマシなはず。
「じゃあどうしてそうしなかったの?」
「それは、余裕が無くて……」
「心の余裕、だよね」
「ッ……⁉」
「意地悪な言い方でごめんね、でもアルムには知ってほしいんだ。どれだけ一人で背負い込んでいるのかって事を」
彼女に図星を突かれ、全身を硬直させるが髪をとかすように優しく頭を撫でる。
「アルムにとってこの大会が学園のみんなで力を合わせた楽しい思い出になってほしい。でも今のアルムは悩んで、苦しんで、悲しくなって、そんな嫌なことで頭がいっぱいなんじゃないのかなって、そう見えた」
「…………」
「ここに来る前はどうにかアルムの悩みを聞き出そうと思ってたけど、アルムが話そうとしないって事は私じゃ手伝えないってことだって、何となく気付いた」
「ちがっ――――……」
巻き込みたくない、お前とは無関係だ、そんな言い訳が脳裏に過ぎる。
しかし結局は言い方を変えただけで本質は同じだ。
「気にしないで、力になれないのは残念だけどアルムの邪魔だけはしたくないから」
軽い口調で話す彼女だが頭に触れていた手が僅かに止まる。
「……私は会長さんみたいに頭も良くなければ、テイバンさんみたいに実力も大したことない。地位や名誉もないからアルムの為に出来ることなんてほんの少し……」
「…………」
そんなことないっ! そう否定したいが彼女が欲している答えと異なることは考えるまでもない。
「だから頼ってくれた時は持てる全てを尽くしてアルムの力になるよ!」
「…………」
分からない……。
「それがアルムでも手に負えないような問題だとしてもわたしは、私だけは傍にいるから……!」
「……どうしてなんだ、どうしてそこまで俺を気に掛けてくれる?」
彼女と会ったその日からずっと分からない。
「……どうしてそこまで俺に優しくするんだ?」
俺は起き上がり、彼女の目を見ながら真意を尋ねる。
「……それはね、アル――――が――――から……」
彼女は口をパクパクさせた後に途切れながらも心の内を口にする。
「悪い、もう一度頼む……」
声として聞き取れなかった俺は彼女の口元に耳を近づけた。
「……アルムの事が、大好きだから!」
深緑色の瞳を潤ませ、顔全体を紅潮させながら自身の真意を口にする。
「――――好きって、俺の事が……⁉」
俺は予想していなかった言葉で思考が吹き飛び、理解するのに数秒の時間を要した。
「もうっ! アルムは寝てェ‼」
俺は言葉の意味を問いただそうとするが、無言の空気に耐えれなかったのか彼女の顔は火が出るほど真っ赤になっていた。
「うおォ⁉」
俺の頭を両手で掴み、力いっぱい自身の太ももに叩きつける。
痛みは全くないが驚きの連続で心の準備が……!
「アルムに伝えたかったことを伝えた! アルムの質問にも答えたっ! だからもう寝てっ! さっさと眠って!」
「わ、分かった! 寝る、寝るから……」
彼女の勢いに気圧され、とりあえず瞼を閉じる。
「…………」
あの言葉の意味が気になってとても眠れる気がしない!
彼女に影響されてか顔も熱いし、心臓の鼓動も早まっているし……!
しかし思いのほか彼女の膝枕の居心地がよく、数分と待たずに意識が遠のいた。
扉越しから彼女の声が聞こえた。
夢、いや俺の様子がおかしかったから宿舎まで来たと考えるのが普通か。
「なぁ――――……」
俺は用件を尋ねようとしたがすぐに口を閉じ、今更だが狸寝入りでその場を凌ぐ。
確かに話しかけて欲しいと言ったが、あれは……何かの間違いだ。
ただ彼女に声を掛けられたお陰でケツに火が付いた。少しでも寝て体を休めよう。
第一声から数十秒が経ち、声どころか音すら聞こえてこなかった。
「アルムは何で疲れているの?」
「ッ……⁉」
立ち上がろうとするが予期せぬ第二声に再び床に座り込む。
まだ居たのかよ、って言うかどんな質問?
頭の中で突っ込み入れてしまうが声は発さずその場に留まり続ける。
「連日で頑張ったから疲れてる? それとも慣れない寝具で眠れてないから? それともレイナさんのご飯が食べれていないから?」
どんな質問を投げ掛けられても俺は口を閉じ、彼女が去るのをひたすらに待った。
「アルム程じゃないけど私も百キロ走は疲れてたんだよ。今までにないくらい魔力を消耗して崖から飛び降りて……あんなに忙しかった日は無いって、そう思えるくらい」
彼女は俺が寝ていても起きないくらいの声量まで抑え、扉に向かって話し続けた。
「疲れた時は楽しかった時を思い出すと良いんだよ。私だったら百キロ走の練習とかアルムと過ごした学園生活かな。アルムはどんな時が楽しかった?」
「…………」
「答えてくれなくても聞いてくれなくても良いんだ。アルムがぐっすり眠れている事が一番だから。でも寝られなくてひとりが辛いなら私と一緒にお話ししよう」
「……――――」
扉を開けるまで話を止めないと確信した俺は静かに立ち上がり、ドアノブに手を掛ける。
「……アルムは――――」
「何だよ、ラビス」
俺は微笑みながら扉越しだった彼女と対面する。
「……ごめん、起こしちゃった?」
「ああ、良い意味で起こされた」
「本当にごめんね、出来るなら何かお詫びをさせて欲しいな」
「……なら二人で話そうぜ」
俺の提案に快く頷いた彼女は、お邪魔しますと言って部屋の中に足を踏み入れるとそのまま二人でベッドに腰掛けた。
「分かってたと思うけど本当は寝てなかった。だからラビスの話はずっと聞いてたけど、あれは何だったの?」
「あぁ……部屋に閉じ困っているアルムを見ていたら妹さんと上手く話せなかった時を思い出したんだ」
「つまりマインの懐柔手段が俺にも通用すると考えたってこと? 成功して良かったね」
申し訳なさそうな彼女に嫌味を交えて称賛の言葉を送った。
「起きていたなら私の質問にも答えてよ」
「最初の質問のことか?」
コクコクと首を縦に振るラビス。
なぜ疲れているのか? その問いに対する答えは多くあるが開示できる情報は指で数えられるほどしかない。
「……そりゃあ魔力を消耗し過ぎたからな」
「本当にそれだけ?」
「本当だよ、魔力が枯渇すれば疲れるのは知っているだろ」
眉をひそめムッと睨みつけてくる彼女を直視できず、目線を泳がせた。
「分かった! アルムがそう出るなら……」
「えっ⁉」
聞き返すよりも早く彼女の右手が俺の右耳に触れ、ぐっと彼女のほうへ引き寄せられる。
俺は抵抗せずにか弱い力に全てを委ねるとそのまま彼女の太ももに頭を預けた。
スカート越しだが左側頭部が柔らかい感触に包まれ、ほのかに石鹸のようないい香りもした。
「……ラビスさん、これはどういう――――」
しかしいつまでのこのような状態で良いわけが無い。
彼女のほうを振り向こうとしたが、赤く染まった顔を見てすぐさま姿勢を戻す。
「向き合ってると強がったり素直に話してくれないから、あとは少しでも横になって身体を休めて欲しかったから……だ、だから特別だよっ!」
彼女は震えた声で説明し、恥を忍んで俺を元気づけようとしているのが分かった。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺は首から頭までの力を抜き、先ほどの感触を取り戻す。
恥ずかしくないと言えば嘘になるが悪い気はしない、むしろ心地いい……。
「ホントはね、疲れてる理由が訊きたかったわけでも膝枕をしたかったわけでも無かったんだよ」
「……じゃあラビスは何しに来たんだよ?」
当然のように頭を撫でる彼女だが心地良かったため気にせずに話を続けた。
「アルムも誰かに頼って良い、ってそう伝えたかったんだ」
「……ちゃんと頼ってるよ」
直近で言えば黒玉の件でレイゼンに頼った? ことくらいか……。
「じゃあどうして試合に勝ったのにあんな悲しそうな顔をしてたの?」
「……? まあ気持ちのいい試合じゃなかったから、かな」
「いっぱい動いて、長い時間戦っていたら気持ちのいい試合だった?」
「まあ、そうかもね」
良い試合の表現としては不適切だが、さっきの試合よりは幾分かマシなはず。
「じゃあどうしてそうしなかったの?」
「それは、余裕が無くて……」
「心の余裕、だよね」
「ッ……⁉」
「意地悪な言い方でごめんね、でもアルムには知ってほしいんだ。どれだけ一人で背負い込んでいるのかって事を」
彼女に図星を突かれ、全身を硬直させるが髪をとかすように優しく頭を撫でる。
「アルムにとってこの大会が学園のみんなで力を合わせた楽しい思い出になってほしい。でも今のアルムは悩んで、苦しんで、悲しくなって、そんな嫌なことで頭がいっぱいなんじゃないのかなって、そう見えた」
「…………」
「ここに来る前はどうにかアルムの悩みを聞き出そうと思ってたけど、アルムが話そうとしないって事は私じゃ手伝えないってことだって、何となく気付いた」
「ちがっ――――……」
巻き込みたくない、お前とは無関係だ、そんな言い訳が脳裏に過ぎる。
しかし結局は言い方を変えただけで本質は同じだ。
「気にしないで、力になれないのは残念だけどアルムの邪魔だけはしたくないから」
軽い口調で話す彼女だが頭に触れていた手が僅かに止まる。
「……私は会長さんみたいに頭も良くなければ、テイバンさんみたいに実力も大したことない。地位や名誉もないからアルムの為に出来ることなんてほんの少し……」
「…………」
そんなことないっ! そう否定したいが彼女が欲している答えと異なることは考えるまでもない。
「だから頼ってくれた時は持てる全てを尽くしてアルムの力になるよ!」
「…………」
分からない……。
「それがアルムでも手に負えないような問題だとしてもわたしは、私だけは傍にいるから……!」
「……どうしてなんだ、どうしてそこまで俺を気に掛けてくれる?」
彼女と会ったその日からずっと分からない。
「……どうしてそこまで俺に優しくするんだ?」
俺は起き上がり、彼女の目を見ながら真意を尋ねる。
「……それはね、アル――――が――――から……」
彼女は口をパクパクさせた後に途切れながらも心の内を口にする。
「悪い、もう一度頼む……」
声として聞き取れなかった俺は彼女の口元に耳を近づけた。
「……アルムの事が、大好きだから!」
深緑色の瞳を潤ませ、顔全体を紅潮させながら自身の真意を口にする。
「――――好きって、俺の事が……⁉」
俺は予想していなかった言葉で思考が吹き飛び、理解するのに数秒の時間を要した。
「もうっ! アルムは寝てェ‼」
俺は言葉の意味を問いただそうとするが、無言の空気に耐えれなかったのか彼女の顔は火が出るほど真っ赤になっていた。
「うおォ⁉」
俺の頭を両手で掴み、力いっぱい自身の太ももに叩きつける。
痛みは全くないが驚きの連続で心の準備が……!
「アルムに伝えたかったことを伝えた! アルムの質問にも答えたっ! だからもう寝てっ! さっさと眠って!」
「わ、分かった! 寝る、寝るから……」
彼女の勢いに気圧され、とりあえず瞼を閉じる。
「…………」
あの言葉の意味が気になってとても眠れる気がしない!
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