死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔導大会四日目

闘争の幕開け

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『三回戦第四試合、魔導大会四日目最後の戦い。その雌雄を決する両選手がフィールドに入場しました!』

「待ってましたァ!」 
「三連覇の王者と最強の挑戦者の戦い!」
「全種目上位入賞なんて聞いたことがねェぞ!」
「こんな戦いが観れるなんて俺はツイているぜ!」

 エリアの宣言とともに会場全体から歓声の声が湧き上がる。

「ッ……⁉ すっげェな、おい……」

 地面が震動する程の歓声に気圧されながらも俺は歩みを進める。

『凄まじい歓声ですね。十年以上も務めてきましたがここまでのは初めてです』

『そうですね。それだけアルム選手とベレス選手の試合には強い期待がされているのでしょう』

「どっちが勝つんだよォ⁉」
「ベレスに決まってんだろ! 全種目上位入賞だろうと敵じゃねェ!」
「いやアルムなら無敵のベレスの攻略法を見つけられるはずだ!」

「……ったく、好き勝手言いやがって」

 しかし未知数であるベレスの魔法を解読しなければ勝利を収めるのは難しい。
 把握している情報は多いとは言えないがそれでも予想は立てられる。

「あとは戦いながら絞っていくしかないけどな」

 俺は数十メートル先に迫るベレスを見据える。

「おい、ベレスの腕に何か付けているぞ!」

 しかし彼の両腕には甲冑かっちゅうらしきものが取り付けられていた。

「あれってもしや……白鬼の前腕フロム・ガントレットじゃないか⁉」
「なに馬鹿なこと言ってんだ、偽物に決まってんだろ!」
「魔導大会とは言え、学生同士の試合に国宝を持ってくる奴がいてたまるかァ!」

 白鬼の前腕、最高硬度と謳われるエルベント・タイガーの歯牙しがで作られ、魔法的効果を付与された甲冑の手袋。

 大きさは指先から肘下まで覆えるほどで全体的に鋭く尖っている。
 そして真っ白な歯牙と細く描かれた水色の構築式はその特異さをより一層際立たせていた。
 
 数年前にベルモンド王国の国宝として正式に認定されたと王国新聞に掲載されていたと記憶しているが……。

「まさかな……」

「ベレス殿め、宮殿から勝手に盗みおって……!」

 主賓席で静かに激昂するベルモンド王国国王バリウス。

「大会連盟は何をしておったんだ⁉」

「ベレス様の威圧的な態度と偽造物の一点張りで許可を出したとの事です」

 バリオスの従者は実情をそれとなく伝える。

「まあ通ってしまったものは仕方ない。ベレス殿には何としても四連覇を成し遂げて貰わなければならないからな……」

 バリオスはワイングラスを片手に邪気に満ちた笑みを浮かべた。 

「これより第三回戦、第四試合を執り行います」

 審判役の彼は俺たちのあいだに入り、お互いの顔を見合わせた。 

 誰が何であろうと全力でベレスを打ち倒す!

「双方、恥じない戦いを……戦闘開始っ!」

 戦いの幕が開けると同時に俺たちは真っ直ぐに走り出した。

「【黒器創成くろきそうせい】」

 長槍を右手に作り出すと射程内に捉えたベレスに鋭い一突きを繰り出す。

 しかし同等以上の硬度を有するのか火花を散らしながら白鬼の前腕に似た手袋に防がれてしまう。

「国宝を持ち出すなんてずいぶん気合が入っているじゃないか?」

「見た目だけの偽物さ、そっちのほうが観客も湧くだろ」

 発破をかけてみたが偽物と断言するベレス、やはり本物という事はないか。

 俺は長槍のリーチを活かしながら突きと振りで攻め続け、ベレスを懐に入られないよう立ち回る。
 対するベレスは俺の攻撃を防ぎながら僅かな隙を突いて鋭利な爪で易々と間合いを踏み越えた。

「……今の俺の気持ちが理解できるか、アルム」

「あぁ⁉」

「四日も待たされたお前というご馳走、そして第一試合で見せた冷酷で容赦のない戦いぶり……心同じくする同志と巡り会えた俺の気持ちが理解できるかァ!」

 意味の分からない事を力強く訴えるベレスを余所に俺は足を振り上げる。
 素早く察知した彼は後ろに飛び跳ね、10メートルほど距離を取らせた。

「勝手にお前の思想を押し付けんな! 俺はお前じゃねェよ」

 確かに俺はこの男と同じ人間に成りかけた……。

 しかしラビスが俺を取り戻させてくれた、俺をこの舞台に立たせてくれた。

「俺はアルム=ライタード、凶暴な人間もどきに成り下がった覚えはないっ!」

「……そうか、あの女のせいか、あの女のせいでお前は……」

 ベレスは落ち込む様子を見せるが、すぐに両腕を大きく後ろに下げ肘を真上に向けた。

 俺は体表を魔力で覆い、防御姿勢でベレスの様子を伺う。

「――――おらよォ‼」

 重心を前に移動させながら両腕を一気に振り下ろし、手袋をすっぽ抜けさせた。

「はぁ⁉」

『なんとベレス選手⁉ 両腕の防具を自ら投げ飛ばすっ!』

 実況のサイベルすら正気とは思えない判断。
 故意か事故か分からない攻撃に戸惑いながら俺は向かって来る手袋を避け、間合いを詰めようと地面を蹴った。

「【引手スナッチ】!」

 接近する俺に構うことなく、ベレスは突き出した両拳を握り締める。

魔法抵抗レジストは既にやってんだよ!」

 そうだ、問題ない! 奴の魔法の影響下に置かれるのは自分以外の物体。

 しかし俺は魔法抵抗で無効化し、更地のフィールドに引き寄せられるものはない。

「そう何度も同じ手に――――」

『そうゆう事ですか……』

 エリアの声とともにベレスは悪魔のような笑みを浮かべた。

「ッ……⁉」

 悪寒が全身を駆け巡り、俺は眼前のベレスに構わず槍を後方に振り回す、が――――――――ほんの一瞬、判断が遅かった。

 左手の手袋を弾き損ね、血肉を潰すような音を立てて爪先が首下の付け根に突き刺さる。

「チィ!」

 こうなる事を見越したように嫌なタイミングで距離を詰めるベレス、俺は体勢を立て直そうと跳躍した。

「分かってねェようだから教えてやるよっ!」

 そう言ってベレスも飛び跳ね、再び拳を握り始める。

 まさか突き刺さった手袋に引力を……そんな言葉が思い浮かんだ次の瞬間には遥か頭上にベレスがいた。

「耐えろよアルムっ!」

 2度、3度と拳を握り締め、引力の勢いとともに急落下するベレス。
 体重を乗せた飛び蹴りは槍心をも砕き、貫通力が衰えないまま腹部に直撃する。

 凄まじい衝撃が内臓を突き抜け、地面に叩きつけられた。 
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