死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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死神転生

6話 怪しい男たち

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「シャアアア――――!」

 泥潜蛇グランド・サーペントは大きな口を開けてこちらに向かってくる。おれは跳躍して回避するが体を捻って軌道を修正し、再び向かって来た。

「【黒器創成くろきそうせい】」

 長槍を両手に構え、口先に目掛けて刺突する。金属器同士を打ち付けたような火花が散った。

「硬いな……」

 踏ん張りが利かない空中でも突き刺さると思ったが傷一つ付いていない。
 口先を利用して地中を掘り進める生態なため、他の部位より硬くなっているのは知っていたが……。
 とは言え傾斜な地形で戦っても雪のせいで力押しで勝つのは難しそうだ。

「攻めるなら内側からだな」

 槍に魔力を込めて形状を変化させ、着地と同時に泥潜蛇に向かって走る。泥潜蛇も反応して口を開けて襲いかかる。

「今だ!」

 タイミングを見計らって泥潜蛇の下顎に槍を突き刺す。更に口内に侵入し、地面に突き刺さるまで押し込んで固定する。
 しかし獲物が自ら口の中に入ってきたこの状況を静観するわけも無く、口を閉じて捕食しようとする――――が、上顎からも血が噴き出し、口を閉じることは出来なかった。
 
「食う前に持っていた武器ぐらい把握しておけ」

 おれは着地する前に黒器創成を発動し、槍から双薙刀そうなぎなたに変形させていたのだ。
 三年間の魔法習得の成果で生成した黒器創成の形状変化が出来るようになった。地味な成果ではあるものの、こんなふうに実用できるのであれば頑張った甲斐があったものだ。

「いま楽にしてやるから少し待っとけ」

 口の隙間から地上へ出ると雪をかき分け地面に触れ、構築式を展開する。

「【黒棘ブラックパレス】」

 触れた地面を中心に鋭い棘が迫り出し――――瞬く間に広がっていき、巨大な棘が泥潜蛇の体躯を貫く。真っ白な雪が血色に染められ、泥潜蛇は静かに瞼を閉じた。

 この魔法は黒器創成と同じ結晶魔法の特性を利用したものだ。
 違いは結晶化させるまでの過程にあり、黒器創成は武器の形状を明確にイメージして生成する。それに対して黒棘は地中で魔法を発動させるだけなのだ。

 メリットとして広範囲の魔法攻撃が可能になること。大地に流れる魔力循環に自身の魔力を運ばせ、任意のタイミングで発動させるだけなので戦闘中の牽制や罠のような使い方が出来る。
 デメリットは魔力の消費が半端ない。しかし下手に節約すれば強みである『広範囲攻撃』を失ってしまうため、使いどころが限られるが選択肢が多いに越したことは無いだろう。

「……さて、次はあんたらだ」

 俺は視線を向けている人間たちに意識を戻す。
 何か仕掛けてくるわけでも無くずっとこちらを見ているだけだったから、無害なのかもしれないが放っておくわけにはいかない。

「出てこないなら――――」

「私に敵意はありません!」

 威嚇して引っ張り出そうとした時、一人の男が姿を見せる。
 気味の悪い笑みを浮かべてながら両手を上げて、敵意が無いことを証明していた。
 雪景色の中で全身を黒いローブを包んでおり、真夜中でなければかなり不自然な格好だ。

「私の名前はゴンダと言います。先の戦いを隠れて見ていましたが、こんな可愛い子供があの魔物をこうも圧倒するとは、感激いたしました!」

 突然姿を見せたと思ったらペラペラと薄っぺらい言葉を次々と口にする。
 彼を対処するのは簡単だが少しくらい話しておこう。

「ありがとうございます。そちらの方の評価も聞きたいですね」

 ゴンダ同様に木に隠れるもう一人にも問いかける。

「申し訳ありません、そこの彼は少々人見知りでして……」

「それならば仕方ありません。質問ですが貴方がたは一体何者ですか?」

「……そうですね、私たちは俗に言う『裏社会』みたいなものです」

 裏社会、流通しない非合法の商品を扱ったり犯罪を請け負ったり……そんな感じか? 
 彼の言うことが真実か噓か、現段階では断定はできない。だが見た目は危ない人だし嘘は言っていないだろう。

「そんな裏社会の人間がこんな雪山で何を?」

「……今のあなたにお話しは出来ません」

 ここまで素直に話してくれたゴンダは口を閉じる。

「仲間になれば教えてくれますか?」

「ええ、こちら側に来ていただければ、お教えしましょう!」

「分かりました。じゃあ――――」

 最小限の動作で地面を蹴り、ゴンダの胸部に膝蹴りを叩き込む。衝撃で肋骨が折れ、数十メートルほど吹き飛んだ。

「アガアアアァァァ――――⁉」

 予想だにしなかった展開に絶叫する。

「無理やり聞くとするわ。仲良くしようぜ、オッサン」

「こ、このクソガキィ!」

 不気味な笑みは跡形も無く消え去り、不細工な泣き顔だけが残る。
 仲間になる気は無くても色々と情報を入手できただろうが、今日中に帰宅することは出来なかっただろう。それに裏社会の一員になったなんて知られたら両親が悲しむ。

「どうせ碌な事をしてないんだろう? 天罰を与えてやるから大人しくしていろ」

 隠れているもう一人に視線を向けようとした時、俺の顔に液体が伝う。

「ッ……⁉」

 そして拭うよりも早く頬に痛みが生じる。
 寒さで感覚が麻痺したのかと思ったが明らかに異なる感覚だ。

「雨?」

 真っ暗な空を見上げるが、大雪のせいで上手く視認できない。
 そもそも氷点下の気温で雨が降るわけがないか。

 空を見上げても意味が無いと考え、頬を伝った液体を観察すると拭った上着が溶けているのが分かった。

「酸性の液……毒か?」

 直後、離れた場所で雪を踏みつけたような音が聞こえる。遠目から覗くと相当量の赤い液体が降ってきた。

 まるで、水が入ったバケツを空から投げ捨てるように……。

 俺は再び目を凝らして空を見上げるとその液体の正体が判明する。

泥潜蛇グランド・サーペント⁉」

 自身の目を疑うが、黒棘が刺さっている姿を目の当たりにして現実であることを確信する。

「くそッ!」

 空から降って来る泥潜蛇の体液を避けつつその場から急いで離れる。

 状況理解が追いつかないが、今は安全が最優先! 

「――――オッサン!」

 重要な情報源を思い出し、助けようと振り返るも毒液で上半身が溶けていた。せめて遺体だけでも回収しようとしたが泥潜蛇の死体が落下し、積もっていた雪が勢い良く舞った。
 
「【黒器創成くろきそうせい】」

 自身の安全を確保しようと長剣を手に取り、ゴンダの仲間を警戒する。が、俺の心配を余所にその仲間が追撃することは無かった。
 雪が晴れてもなにもなく、泥潜蛇とダンテの肉片が散らばる凄惨な光景だけが広がっていた。
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