死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

文字の大きさ
16 / 120
魔法学園入学

16話 貴族たちの標的

しおりを挟む
 白シャツの上に長袖の黒ジャケットと黒ズボンを羽織り、紺色のネクタイで襟を締める。

「うん……悪くないな」

 朝食を食べた俺は制服に袖を通し、洗面所に設置された鏡の前で自身の制服姿を見ていた。

「どう、似合っている?」

 客観的な意見を求めて朝食を食べているロイドたちに見せつける。

「凄く似合っているわ!」

「ああ、男前だな」

 両親はいつも以上に嬉しそうな表情を見せる。
 普段着る機会がない正装を見れたこと、そして俺が魔法学園の制服を着れるようになるまで成長したことが感慨深いのだろう。

「ありがと、マインはどう思う?」

「……知らない!」

 ダメ元で聞いてはみたがやっぱり駄目だった。
 両親も間を取り持とうと手を貸してくれるが、未だ光明の糸口が見えてこない。 

「じゃあ学園に行って来るよ」

 革製の手提げバッグを手に取って玄関ドアを開ける。

「「いってらっしゃい」」

 二人に見送られて家を後にする。勿論マインの声は聞こえなかった。

 今まで喧嘩することはあっても有耶無耶なって仲直りするケースがほとんどだった。が、しかし今回は異常なまでにマインが意地を張っている。日常生活に影響は少ないとはいえ、良好な関係であることに越したことはない。

「お兄ちゃんは仲直りがしたいよ……」

 楽しみにしていた入学式までの道のりは全く関係ないことに悩まされ、新入生で一番暗い顔であったことに間違いないだろう。

 ***

 校門を通った俺は入試試験と同様に教師らの案内を受けて入学式の会場へ向かう。しかし張り詰めた空気は無く、温かく歓迎するような空気に変わっていた。そして呼応するように植えられていた木々も綺麗な花を咲かせていた。

「でかいな……」

 目の前の大きな会館に思わず声を漏らす。木材を中心に使われており入口の反対側には大きなステージが見える。
 入学式まで時間を余したため、他の新入生と交流を図りながら時間を潰した。

「これからエンドリアス魔法学園、入学式を執り行います」

 数十分後、新入生が揃ったことを確認した教師は進行を始める。
 会館内はそこまで騒がしくなかったため、魔法で拡声しなくてもよく聞こえた。レイゼン理事長や生徒会長から挨拶があったが、あまり楽しい話では無かったため欠伸を堪えることに注力することになった。

「では校舎移動に移ります。担任教師に従って下さい」

 合格通知表に配属クラスが記載されていたため、クラスごとに分かれて担任の後を追う。校舎昇降口から二階に上がり、『B組』と掲示された教室に入っていく。受験の時に使った教室ではないが内装に相違は無く、クラスメイトらは好きなところへ座っていく。

「1年B組の担任を務めるフェルン=リカードと言います。気軽に『フェルン先生』と呼んでくれたら嬉しいです。まずは自己紹介をして学園案内をしたいと思います! では貴方からお願いします」

 一番前の席に座っていた生徒から順番に自己紹介が行われていく。
 在籍する生徒の七割以上が貴族の家系であるため、このクラスにもそれらしい人間がチラホラ見受けられる。俺のような平民出身の人間は言葉遣いや態度に気を配らなければならないが、それさえ気を付けていれば普通に過ごすことは可能だ。
 貴族にとって平民と同じ空間で、同じ授業を受けることは良しとしない。しかし魔法学園の方針であれば否が応でも従うしかない。だからこそ『分を弁え』『立場の違い』を理解して接していれば、曲がりなりにも友好的に接してくれる。
 まあ、端から平民を見下しているような奴にはどうしようもないけどな――――。

「ジクセス公爵家長男、セロブロ=ジクセスだ! この教室は僕が支配してやる、光栄に思うと良い」

 自身に順番が回ると傲慢不遜な言動で自己紹介をはじめ教室内が静まり返る。
 前列の方にそれらしい人物が居たが気のせいだと見ないようにしていたが、やはりあの男だったか……。
 しかしいくら地位があっても糾弾されるだろう、そう思っていたもの束の間。

「……ジクセス様が支配してくれるなら安心ね」

「ジクセス様以外に相応しい奴はいねえよ!」

「ジクセス様と同じクラスになれて感激だわ」

 クラスメイトは糾弾するどころかその発言に同調すらしていた。
 正しく言えば貴族の連中だが、次第にクラス全体がセロブロを推すようになっていた。王族の次に高い地位とは言えこれ程の発言力を秘めているとは……納得は出来ないが敵対しない方が身のためだな。

「みんなありがとう! だが残念なことに僕の支配を拒んだ愚か者が居たんだ」

 両手を上げて制止させると後ろを振り向く。
 公爵に逆らうなんてとんでもない馬鹿が居たものだ、一体誰なんだ――――。

「アルム=ライタード! 彼は僕を愚弄し、あまつさえ気高きジクセス家を知らなかったのだ!」

「…………え?」

 彼は俺を名指しして、あることないことを吹聴する。対して俺は他人事だと思っていたため唖然としているだけだった。
 しかし何も話さなければ大変なことになると遅れて理解し、弁明をしようと試みるが既に遅かったようだ。クラスメイトから敵意や嫌悪感を含んだ視線を向けられている。
 これは、少しやばいかもしれない……。

「セロブロくん! 入学して早々喧嘩は駄目ですよ!」

 危うい空気を察知してフェルンは臆することなく止めに入る。

「……進行を妨げてしまい申し訳ありません」

 担任相手でも傲慢な態度を取ると思いきや、軽くお辞儀して席に座った。

「まったく……では自己紹介を続けてください」

 さきの問答が無かったかのように引き続き行われる。
 フェルンが権力に屈しない素晴らしい教師であったことは不幸中の幸いであるが、ほとんどの生徒には敵意を向けられ、数少ない生徒には悪印象を持たれてしまった。このままでは学園生活を一人で過ごす事になるどころか、イジメの対象になってしまう。
 自己紹介で少しでもイメージ回復に努めなくては……!

 隣の生徒がちょうど自己紹介を終えたようだ。俺は周りからの冷ややかな視線に気づきながらも堂々と立ち上がる。

「先程ジクセス様から指名されましたが改めて、アルム=ライタードと申します。魔法塾には通っていなかったので知り合いは居ませんが、仲良くしていただけると嬉しいです。よろしくお願いします」

 ゆっくりと、滑舌よく話し最後は深々と頭を下げる。
 挨拶はこれ以上ないほどに完璧だ。
 席に座ってクラスメイトたちの表情を伺うも挨拶の前後でほとんど変化は見られなかった。

「フッ、終わったな。俺の学園生活……」

 全てを諦めた俺は心の中でロイドたちに謝りながら続く自己紹介を聞き流していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々
ファンタジー
ソドムの少年から平安武士、さらに日本兵から二十一世紀の男子高校生へ。 一つ一つの人生は短かった。 しかし幸か不幸か、今まで自分がどんな人生を歩んできたのかは覚えている。 だからこそ今度こそは長生きして、生きている実感と、生きる希望を持ちたい。 そんな想いを胸に、青年は五度目の命にして今までの四回とは別の世界に転生した。 早死にの男が、今まで死んできた世界とは違う場所で、今度こそ生き方を見つける物語。 本作は、「小説家になろう」、「カクヨム」、にも投稿しております。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

『三度目の滅びを阻止せよ ―サラリーマン係長の異世界再建記―』

KAORUwithAI
ファンタジー
45歳、胃薬が手放せない大手総合商社営業部係長・佐藤悠真。 ある日、横断歩道で子供を助け、トラックに轢かれて死んでしまう。 目を覚ますと、目の前に現れたのは“おじさんっぽい神”。 「この世界を何とかしてほしい」と頼まれるが、悠真は「ただのサラリーマンに何ができる」と拒否。 しかし神は、「ならこの世界は三度目の滅びで終わりだな」と冷徹に突き放す。 結局、悠真は渋々承諾。 与えられたのは“現実知識”と“ワールドサーチ”――地球の知識すら検索できる探索魔法。 さらに肉体は20歳に若返り、滅びかけの異世界に送り込まれた。 衛生観念もなく、食糧も乏しく、二度の滅びで人々は絶望の淵にある。 だが、係長として培った経験と知識を武器に、悠真は人々をまとめ、再び世界を立て直そうと奮闘する。 ――これは、“三度目の滅び”を阻止するために挑む、ひとりの中年係長の異世界再建記である。

異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】

kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。 ※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。 『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。 ※表紙は生成AIで作ってみたイメージです。(シャルルが難しい…)

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

処理中です...