死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔法学園入学

16話 貴族たちの標的

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 白シャツの上に長袖の黒ジャケットと黒ズボンを羽織り、紺色のネクタイで襟を締める。

「うん……悪くないな」

 朝食を食べた俺は制服に袖を通し、洗面所に設置された鏡の前で自身の制服姿を見ていた。

「どう、似合っている?」

 客観的な意見を求めて朝食を食べているロイドたちに見せつける。

「凄く似合っているわ!」

「ああ、男前だな」

 両親はいつも以上に嬉しそうな表情を見せる。
 普段着る機会がない正装を見れたこと、そして俺が魔法学園の制服を着れるようになるまで成長したことが感慨深いのだろう。

「ありがと、マインはどう思う?」

「……知らない!」

 ダメ元で聞いてはみたがやっぱり駄目だった。
 両親も間を取り持とうと手を貸してくれるが、未だ光明の糸口が見えてこない。 

「じゃあ学園に行って来るよ」

 革製の手提げバッグを手に取って玄関ドアを開ける。

「「いってらっしゃい」」

 二人に見送られて家を後にする。勿論マインの声は聞こえなかった。

 今まで喧嘩することはあっても有耶無耶なって仲直りするケースがほとんどだった。が、しかし今回は異常なまでにマインが意地を張っている。日常生活に影響は少ないとはいえ、良好な関係であることに越したことはない。

「お兄ちゃんは仲直りがしたいよ……」

 楽しみにしていた入学式までの道のりは全く関係ないことに悩まされ、新入生で一番暗い顔であったことに間違いないだろう。

 ***

 校門を通った俺は入試試験と同様に教師らの案内を受けて入学式の会場へ向かう。しかし張り詰めた空気は無く、温かく歓迎するような空気に変わっていた。そして呼応するように植えられていた木々も綺麗な花を咲かせていた。

「でかいな……」

 目の前の大きな会館に思わず声を漏らす。木材を中心に使われており入口の反対側には大きなステージが見える。
 入学式まで時間を余したため、他の新入生と交流を図りながら時間を潰した。

「これからエンドリアス魔法学園、入学式を執り行います」

 数十分後、新入生が揃ったことを確認した教師は進行を始める。
 会館内はそこまで騒がしくなかったため、魔法で拡声しなくてもよく聞こえた。レイゼン理事長や生徒会長から挨拶があったが、あまり楽しい話では無かったため欠伸を堪えることに注力することになった。

「では校舎移動に移ります。担任教師に従って下さい」

 合格通知表に配属クラスが記載されていたため、クラスごとに分かれて担任の後を追う。校舎昇降口から二階に上がり、『B組』と掲示された教室に入っていく。受験の時に使った教室ではないが内装に相違は無く、クラスメイトらは好きなところへ座っていく。

「1年B組の担任を務めるフェルン=リカードと言います。気軽に『フェルン先生』と呼んでくれたら嬉しいです。まずは自己紹介をして学園案内をしたいと思います! では貴方からお願いします」

 一番前の席に座っていた生徒から順番に自己紹介が行われていく。
 在籍する生徒の七割以上が貴族の家系であるため、このクラスにもそれらしい人間がチラホラ見受けられる。俺のような平民出身の人間は言葉遣いや態度に気を配らなければならないが、それさえ気を付けていれば普通に過ごすことは可能だ。
 貴族にとって平民と同じ空間で、同じ授業を受けることは良しとしない。しかし魔法学園の方針であれば否が応でも従うしかない。だからこそ『分を弁え』『立場の違い』を理解して接していれば、曲がりなりにも友好的に接してくれる。
 まあ、端から平民を見下しているような奴にはどうしようもないけどな――――。

「ジクセス公爵家長男、セロブロ=ジクセスだ! この教室は僕が支配してやる、光栄に思うと良い」

 自身に順番が回ると傲慢不遜な言動で自己紹介をはじめ教室内が静まり返る。
 前列の方にそれらしい人物が居たが気のせいだと見ないようにしていたが、やはりあの男だったか……。
 しかしいくら地位があっても糾弾されるだろう、そう思っていたもの束の間。

「……ジクセス様が支配してくれるなら安心ね」

「ジクセス様以外に相応しい奴はいねえよ!」

「ジクセス様と同じクラスになれて感激だわ」

 クラスメイトは糾弾するどころかその発言に同調すらしていた。
 正しく言えば貴族の連中だが、次第にクラス全体がセロブロを推すようになっていた。王族の次に高い地位とは言えこれ程の発言力を秘めているとは……納得は出来ないが敵対しない方が身のためだな。

「みんなありがとう! だが残念なことに僕の支配を拒んだ愚か者が居たんだ」

 両手を上げて制止させると後ろを振り向く。
 公爵に逆らうなんてとんでもない馬鹿が居たものだ、一体誰なんだ――――。

「アルム=ライタード! 彼は僕を愚弄し、あまつさえ気高きジクセス家を知らなかったのだ!」

「…………え?」

 彼は俺を名指しして、あることないことを吹聴する。対して俺は他人事だと思っていたため唖然としているだけだった。
 しかし何も話さなければ大変なことになると遅れて理解し、弁明をしようと試みるが既に遅かったようだ。クラスメイトから敵意や嫌悪感を含んだ視線を向けられている。
 これは、少しやばいかもしれない……。

「セロブロくん! 入学して早々喧嘩は駄目ですよ!」

 危うい空気を察知してフェルンは臆することなく止めに入る。

「……進行を妨げてしまい申し訳ありません」

 担任相手でも傲慢な態度を取ると思いきや、軽くお辞儀して席に座った。

「まったく……では自己紹介を続けてください」

 さきの問答が無かったかのように引き続き行われる。
 フェルンが権力に屈しない素晴らしい教師であったことは不幸中の幸いであるが、ほとんどの生徒には敵意を向けられ、数少ない生徒には悪印象を持たれてしまった。このままでは学園生活を一人で過ごす事になるどころか、イジメの対象になってしまう。
 自己紹介で少しでもイメージ回復に努めなくては……!

 隣の生徒がちょうど自己紹介を終えたようだ。俺は周りからの冷ややかな視線に気づきながらも堂々と立ち上がる。

「先程ジクセス様から指名されましたが改めて、アルム=ライタードと申します。魔法塾には通っていなかったので知り合いは居ませんが、仲良くしていただけると嬉しいです。よろしくお願いします」

 ゆっくりと、滑舌よく話し最後は深々と頭を下げる。
 挨拶はこれ以上ないほどに完璧だ。
 席に座ってクラスメイトたちの表情を伺うも挨拶の前後でほとんど変化は見られなかった。

「フッ、終わったな。俺の学園生活……」

 全てを諦めた俺は心の中でロイドたちに謝りながら続く自己紹介を聞き流していた。
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