死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔物討伐試験

26話 脅威の影

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 初戦の小鬼ゴブリン戦後もアルムの班は何度か魔物と遭遇し、着実にポイントを獲得していた。

「ハアァ!」

 ラビスは森蛇ウルガルドの咬みつきを避けながら眼球にアルムの魔法で生成した長剣を突き刺す。

「シャアアアァ――――⁉」

 激しい痛みに絶叫しながら鞭のように体をしならせる。
 ただの剣士であれば近付くことが出来ない状況だが、彼女は魔法学園の生徒。

「【風魔弾ウィルショット】」

 突き出された右手から三つの風弾が森蛇の体躯たいくを抉り飛ばして絶命させた。

「動いている相手に全弾命中させるなんて流石だな」 

 離れた位置で見守っていたアルムはラビスの魔法制御力に感服した。

「魔力制御だけは昔から出来たから……」

 しかし彼女は自信な下げに答える。 

(連戦続きで疲れたんだろうな……)

「少し休憩しようか」

 素直に頷き、地面の上に座り込んだ。

「忙しくて聞けなかったけど、どうして南じゃなくて北に進んだの?」

「うーんそうだな。ラビスはこの試験で一番の障害は何だと思う?」

「えっと……」

 すぐに答えを教えてもらえると思っていたラビスは頭を抱える。

「何でもいいよ。思いつく事から口に出して」

「そうだね……魔物との力量差、とか?」

「フェルン先生が言っていた事だね、凄く大切だ。他には?」 

「班員との連携?」

「連携が出来なくちゃ勝てる相手にも勝てない、凄く大切だ。他には?」

「……魔物と遭遇すること?」
 
 頭を捻り出して何とか第三の回答を言い放つ。

「そもそもポイントを得られなかったら終わりだ。他にはある?」

「……うーんごめんね、これ以上は思い付かないや」

「いや、これだけ出れば十分だ。素直に教えなくて悪かったな」

 思考力の低さに落胆の表情を見せるもアルムは優しくフォローする。

「今言ってくれた事も凄く大切だが、そこまで気にすることじゃない。正確には、じゃないんだ」

「警戒する……魔物の取り合い!」

「その通り。この森一帯は沢山の魔物で溢れている。しかし40人の魔法師が一方向に集中してしまえば、あっという間に狩り尽されてしまう。評価に関わる以上、奪い合いになってしまうケースは非常に高い。リタイアの理由が、『クラスメイトの魔法』だなんて最悪も最悪だ」  

 そんな光景を容易に想像できたラビスは顔を青ざめた。

「だから魔物が多く集まっている南よりも、安全に魔物と戦える北方向こっちを選んだんだね。でもそんな作戦があったなら試験前に話してくれれば良かったのに……」

 目を細めて意地悪そうにアルムを見つめる。 

「済まないな、ラビスが可愛かったからつい……」

「かわ⁉ ってそれ、全然関係ないでしょ!」

「ここ森の中、声セーブしてェ」

 軽く茶化そうと思ったアルムは想像以上の怒り具合に小言で注意する。 

「もうっ! アルムの馬鹿」

「ごめん、許してラビス……」

 両手を合わせて謝罪するアルム、すると胸元に吊るされた翡翠色エメラルド宝石のネックレスに目が留まる。

「それ宝石だろ? こんな森の奥まで持って来て大丈夫か?」

「え、ああこれ……お守りみたいなモノだから持って来ているの。一応、無くさないよう気を付けるよ」

 真っ赤になっていた彼女はいつの間にか普段通りの顔色に落ち着いていた。

「それが良いと思う。それじゃ試験再開といたしますか――――」 

 立ち上がって体を伸縮させていたが、突然動きを止めて周囲に視線を向ける。

「……どうしかしたの?」

「いや、助けを求める声がしたような気がして……」

 ラビスも声を聞き取ろうと耳を澄ませる。

「――――こっちか! 行くぞラビス」

 薄暗い森の中で響く悲痛な叫びを聞き取ったアルムたちは声主の元へ駆ける。

「騎士団が歩き回ってるから大丈夫なんじゃないの?」

「確かにそうかもしれないが、聞かなかったフリをするのは流石の俺も良心が痛む。それに本当に危機的状況なら騎士団が駆けつける前に倒したほうが良い。学園生が苦戦するぐらいの強い魔物なら高得点ゲットのチャンスだ!」

「アルムらしいね……」

 もっともらしい言い訳を作るアルムに彼女は呆れた様子で追従し続ける。

(本当に、アルムらしいな……)

 変わらない彼の優しさに胸の奥が温かくなるのをラビスは感じ取った。

「誰か助けてくれェ!」

 森や茂みを駆け抜けると八体の人鬼オーガに囲まれた男子生徒を見つける。班員と思しき女子生徒は頭から血を流して気絶しており、男子生徒がその女子を抱えて凌いでいる様子だった。

「俺は人鬼オーガを引き付けておくから、その隙に彼らの救助を頼む!」

「分かった! 気を付けてね」

 アルムは人鬼の群れに直進し、ラビスは回り込むようにして茂みの中へ再び姿を隠す。

(怪我人が居なかったら黒棘ブラックパレスで一掃できたけど……)

「【黒器創成くろきそうせい】」

 両手に八本の短剣タガーを構えて人鬼たちに投擲とうてきする。

「「「グアァ⁉」」」

 足や腕など致命傷にならない部位に突き刺さるが、怒り狂った人鬼たちはアルムに狙いを変えて追いかける。

「もう安心して大丈夫だよ!」

 注意が逸れた内に茂みからラビスが顔を出す。

「助かった……」

 男子生徒は心の底から安心して膝から崩れ落ちる。

「気絶してるこの子は私が背負うから、一緒に設営地テントまで行こう」

「助けてくれて本当にありがとう……」

 ラビスは傷つけないよう慎重に背負って設営地まで歩き出す。
 そしてその背後で息を潜む魔の手が彼女らに接近しようと動き出していた。

人鬼オーガ一体で50点だと、八体で400点か。大収穫だな」

 一方、人鬼の群れを引き付けたアルムは既に黒棘で彼らの体躯を貫いていた。

「さて、手早く済ませてラビスと合流しますか……あれ?」

 好調な様子から一変いっぺんし、眼前に広がる人鬼の数を数える。

「――――五、六、七……あれ、一体足りない。どこ行った?」

 様々な考えが浮かび上がった末、人鬼の部位を切り取らずにその場を後にする。

(匂いで勘付かれたかクソ!)

「無事でいてくれよ、ラビス……」

 自身へ怒りをたぎらせながら彼女らの無事を静かに願った。  

 ***

 数十分前、設営地から離れた東方向の森――――。

 女子生徒は体をかがんで息を落ち着かせようと必死な様子だった。

「ハア、ハア、ハア――――人が……」

 瞳には薄っすら涙を浮かべる。

(人が、死んでる!)

 彼女の目と鼻の先には大きな血だまりを作り、息絶える騎士の亡骸が横たわっていた。
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