死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔物討伐試験

40話 魔黒閃

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 数千本の木がぎゅうぎゅうに詰め込まれた『大樹塊たいじゅかい』が彼らの頭上から墜ちてくる。

「「「うわぁぁあああああ――――‼」」」

 山が墜ちてくると錯覚すら覚えるほどの大きさにアルムですら圧倒される中、生存本能が働いた騎士一人と生徒二人は絶叫しながら、一目散いちもくさんに逃げて行く。

「おい待て!」

 一見すれば早い判断を下す彼らに称賛の声を掛けたいところだろうが、彼らは黒槍を所持していなかった。
 大声で呼び止めるが気付く様子はない。アルムは諦めて黒槍の生成に集中した。

「どうして黒槍それを持ってからじゃないと逃げちゃいけないんだ?」

 言われた通り待機しながらマルクスが尋ねる。

「引力の発生源がこっちに近付いているってことは、それに比例して魔法影響力が強まってるってわけだ! だから――――」

「私たちの魔力だけじゃ魔法抵抗レジスト出来ないってことね!」

「そう言う事です! 先生」

 フェルンが説明を肩代わりする。黒槍生成に集中してもらおうのが半分、もう半分は賢い教師だとアピールするためだった。
 しかし当の本人は黒槍作りとこれからの動きを考えるのに精いっぱいでそれどころでは無い。

「じゃあ、あの三人は……」

 逃げ出した彼らに心配そうな視線を向ける――――が、明らかに地面から足が離れている様子だった。

「あれ⁉ 何でだ! 魔法抵抗レジストしているのに⁉」

「嫌だ、助けて!」

「死にたくない!」

 必死に体を動かして抵抗するも強さを増した引力によって為す術なく、大樹塊たいじゅかいに向かって引っ張られた。

「……⁉ は、早く作ってくれ!」

 その光景は彼らの焦りを助長させた。

「分かっている!」

(全員に黒槍を渡していたらどう考えても間に合わねぇ……ってなると大樹塊たいじゅかいをどうにかするしかねえな)

 アルムは黒槍生成に取り掛かりながらある覚悟を決めた。

 ***

「ほらよ、しっかり握っておけ」

「本当にありがとう、恩に着るよ!」

 男子生徒は黒槍を両手に握りしめて走り出す。
 生徒を最優先に渡していたため残りの生徒は二人。こんな状況でも騎士道精神を忘れていない点は尊敬に値する。
 あとはフェルンと騎士八人で、合計11人……今から黒槍を作って走らせても大樹塊あれに潰される可能性は高いし、これ以上は無理だな。

「ふぅ……」

 俺は少しでも体力を回復させようとその場に仰向けで倒れ込む。

「もう、魔力残っていないよね……」

「死ぬんだ、私たち……!」

 女子生徒二人がその場で泣き崩れるてしまう。

「お前はよくやったよ」

「自分を犠牲にしてまで……不甲斐ない先生でごめんなさい」

 一人の騎士は称賛の声を送り、フェルンは口元を押さえて涙を浮かべた。
 自分を犠牲にって言ってるけど、俺には影移動シャドウムーブがあるから潰される心配は無いんだけどな。
 まあそれを使うのはやる事を全部やった時だけだ!

「みんな何を勘違いしているんですか? 俺は魔力が尽きたわけでもありませんし、犠牲になるつもりもありませんよ」

「え……じゃあ、どうして作るのをやめたの?」

 顔を真っ赤にして女子生徒が当然の疑問を投げかける。
 
「それはな――――大樹塊あれを吹き飛ばすからだよ!」
   
 そう言って力強く立ち上がる。
 
「姿勢を低くとって固まっていてください」

 これから行使する魔法に巻き込まれかねないため、彼らから距離を置く。

「ここまで離れれば安全だとは思いますが、吹き飛ばされないよう踏ん張ってくださいね!」

「はいはい、分かったよ」

 騎士の一人が覇気のない声で返事が来る。
 油断して吹き飛ばされないか心配だが、それは自己責任ということにしよう。 

「さて、やるか」

 俺は息を吐きながら肩幅に足を開き、右手の人差し指を突き出すようにして両手を組み、大樹塊たいじゅかいの中心に照準しょうじゅんを合わせる。
 円球形状からして中心に魔法の核があることは間違いない。

 幾層に大木が詰め込まれていても全てぶち抜いてぶっ壊す!

「【魔黒閃ビルスター】‼」

 突き出した指先に構築式を展開し、黒い熱線を放出する。
 一直線に伸びて行くが右下に逸れ、大樹塊の端をえぐるよう焼き消した。
 
「――――はあぁ……!」

 放出時に呼吸を止めた俺は一気に新鮮な空気を取り込む。
 自身が放った魔法とは言え、生じた熱をどうこう出来るほど制御の練習していない。それに自分の身体を気遣うあまり魔法の制御がおろそかになってしまっては元も子もない。

 体が焼け焦げるような熱さも痛みも今は耐えろ!

「――――【魔黒閃ビルスター】」

 先の軌道を修正し、左上に向けて再び熱線を放出する。
 次はそのまま下に逸れて命中し、同じような結果を得ることになった。

「クソッ……!」

 やっぱり放出中の反動が原因か! 魔力制御を練習しておけば良かった。  
 だがいくら悔やんだところで大樹塊が止まってくれることはない。

 魔力制御を完全にこなすことが出来れば、反動の影響に関係なく自由自在に熱線を操作できるが、今の俺では出力方向を指先で指定して無理やり標準を合わせるしかない。

「気張れよ、俺ェ!」

 俺は撃つたびに微調整を加えながら限界ギリギリまで撃ち続ける。
 しかし俺の努力とは裏腹に当たるのは中心から離れた端っこばかりだった。むしろ悪戯いたずらに魔力と体力を消耗させて、立つことすら難しくなってしまう。

「はぁ、はぁ、はぁ――――」

 熱された空気を吸い込むたび肺が焼けるような激痛に襲われる。
 呼吸をしたくなくても疲弊した身体に酸素を送り込まなければならない。

「もう無理すんな! これ以上撃ったら魔力切でに死ぬぞ!」

 情けない俺を見兼ねて一人の騎士が声を掛ける。

「やらなくちゃいけねェだよ……」

 シャツの袖で顔の汗を拭き取り、真っ直ぐに立ち上がる。
 視界がぐちゃぐちゃでよく見えないが……大樹塊はもうすぐそこだ!

「おい、危ないぞ!」

 危険が迫っているのか俺に注意するが気にする余裕もなく、指先に魔力を集める。
 しかしほんの一瞬意識が途切れ、前から地面に倒れ込もうとする――――が、何故か地面にぶつからなかった。

「今度は私も戦うから……」

 背後から優しく抱きしめられながら耳元でそうささやかれた。
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