影人 異世界に住む美人

HAHAH-TeTu

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影になって生きる人々

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 古い歴史のあるこの町には
影になって生きている
人がいるそうです、

私達は三次元に姿を映して生きていますが

山陰鉄道の随分賑やかだった町では

影になって生きている人々がいるの言う事です、

二次元でも生きていけると思わない、

私達は何時も見過ごしてしまうのですが

僕の相談する占い師は会った事があると言うのです、

占い師によると僕達も星星の影だと言う方がいるのですが

二次元は今でも何処から映しているのか分からないのです

その話を聞いて同じ季節に何度か訪ねてやっと会えたのです

山陰の鉄道はまだ昭和の古い車両が

ガタン、ゴトンと音を立てて町と町を走っています

僕が会ったのは一昨年、

駅を降りて大通りの信号を右に
曲がって25分歩いた所にある、

コーヒーとミックスサンドの
ランチが人気の喫茶店、



コーヒーを口に入れてカップをおろす時に

初めて気が付いたんですが隣の席にはお客が座っていないのに

ゴムの木の所に人影が映っているのです、

影には耳がないので心で話すのですが

これができる人と出来ない人がいるそうです、

僕はコーヒーを飲みながら窓の外を眺めていたのですが

通りには誰も歩いていないのです、

日差しは強く電柱の下の草むらでは虫が

よく鳴いているのですが
車も人の気配もないのです

ないのです、

「随分、寂しい町だなぁ・・・」

と心の中で呟いたら

「昔は賑やかだったんですよ」

と誰かの声がしたのです、

眼を左右に動かして辺りを確認したのですが

マスターは洗い物をしているし

声の主がご見当たらないのです、

見当たらないのです、

それから

ゴムの木の方を見ると影がコーヒーカップを持って

啜っているのです、

さっきは確か肩肘をついている姿だったのに

今は口元にコーヒーカップが映っているのです、

影の世界と僕達の世界では少しずれていて

のんびりと生きている人としか会話が成り立たないのです

話かけてもすぐに答える事はありませんが

僕の呟きにちゃんと答えているのです、

少し開いた口元に当てたコーヒーカップの傾き、

細くしなやか指先に

長い髪が肩までかかり

細い首筋に柔らかいブラウスが透けて映っている姿は

とても美しいのです、


私は二次元の世界はどんな所ですかと聞いて見た所、

影の世界は自分の姿、形にとても気を使う所だと言う事です

人としての所作がちゃんとできるまでは
人前に出る事はないと言う事です

姿が美しくないと誰も気づいてはくれないので

一つ一つの所作には心がこもっていると言うのです、

僕は彼女の所作がとても美しく思い、もう三年も通っているのです

会話が成り立つ事は希な事なのですが

それがかなった時はとても嬉しく思うのです、

























    
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