46 / 89
第一章 目覚めた記憶
第46話 そろそろ試してみましょうか
しおりを挟む「その間にそろそろこちらも、精霊契約を試してみませんか?」
「いいですわね……って、ああぁぁぁぁぁっ!?」
マズいことを思い出しましたわ……いえ、思い出さなかったらそれはそれでマズいので思い出してよかったのですけれど……。
「ど、どうしたんです!?」
突然、淑女らしからぬ奇声をあげてしまったせいで、フレデリック様を驚かせてしまいました。
申し訳ないですが、でもちょうどいいですわ。例の件が、冒険者ギルドの初依頼を受けた馬車の中で断り損ねた時から、全く進展がないということをお伝えしませんとっ。
「あの、実はですね……まだシリル様の転校を阻止できておりませんの」
「あぁ、なんだ。うん、もう無理だと思いますよ?」
それを聞いたフレデリックはあっさりと言い切った。
「……え?」
「いや、あれだけヴィヴィアン嬢がその話を切りだそうとする度に、邪魔をしている彼をみたら分かりますって。シリル様は絶対諦めないと僕は思います」
「……そう、でしょうか?」
「ええ。ここは潔く覚悟を決めませんか」
「……と言いますと?」
「つまり、シリル様に頭が変だと思われてもいいですから、今からでもこちら事情を一部分だけ説明して、協力してもらいましょう」
「ううっ……もう、それしかないですわよね」
「はい。むしろこの一ヶ月間、よく頑張ったと思いますよ?」
「わ、分かりました。私も覚悟を決めますわっ」
「頑張ってっ。僕も援護射撃をしますから。とりあえず、前世を覚えているとかこの世界が乙女ゲームに類似しているとか情報は無しの方向でいきましょう。予知夢を視た、ということにすればまだセーフですよね」
「ええ。そうして偶然、二人共に同じ予知夢を視たと気づいて保身の為に転校した……ということにすれば?」
「いいと思います。僕もそれで影を説得できましたし」
「私もアリス達にそうやって説明しましたわ。シリル様相手でも、たぶん大丈夫ですわよね?」
「うん。この世界は魔法もあるし、神託とかもあるし……占いで未来視とかも普通にするから、後は僕達が挙動不審にならずにスマートに説明できれば、ちょっと変人扱いされるだけで乗り越えられる……んじゃないかなぁ?」
「変人扱い……」
グサグサと心にダメージが入るが命には変えられないし、多少のリスクは仕方ないと割りきることにした。
「そうですわね。素直に納得してはいただけないでしょうし難しいと思いますけれど、それが一番いいですわね……」
「……やっぱり、彼の追及に答えられるように練習しときましょうか?」
「……そうしましょう。彼相手にぶっつけ本番は危険ですわ」
「ですよね。では、いつシリル様に突っ込んで聞かれてもいいように準備しておいて、近々、頃合いを見て話すと言うことで……」
「賛成ですわ」
と言うわけで、少し未来を視ただけだよ、嘘ついてないよ本当だよ……ということが真実に見えるような練習もしておくことにした。
シリルへの説得は正直なところ手詰まり感が半端なかったし、騙し通すには覚悟が足りずに良心がチクチク痛かった。こうして一部とは言え、真実を打ち明けざる状況になってしまったことに、どこかホッとしたヴィヴィアンだった。
0
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?
藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。
目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。
前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。
前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない!
そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる