【完結】美人すぎて恋愛経験ゼロの私が、カレーうどん屋ではじめて恋をした話

谷川 雅

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プロローグ:女、美魔女、カレーに生きる。

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「……また出ちゃったわね、週刊フード業界誌の表紙」
開いたタブレットに映るのは、白衣姿の主人公・葛城紗季(かつらぎさき)。見目麗しい黒髪に、知性の宿る切れ長の瞳。手には、ゴロゴロ野菜のスープカレー。
『“美魔女”研究員、今年もヒット連発!』
「だからその呼び方、やめてって言ってるのに……」
職場は都心の一等地にある大手食品メーカー。入社以来、紗季はカレーの企画開発で数々のヒットを飛ばしてきた。グルテンフリーカレー、スパイス薬膳カレー、糖質オフキーマカレー、冷凍レトルトカレー革命……。名前を聞けば、コンビニの棚で見たことのある商品ばかり。
だが、名声とは裏腹に、彼女の「恋の棚」はずっと空っぽだった。
「……君ほどの美人がなぜ彼氏がいないのか、本当に謎だよ」
「お褒めに預かり光栄ですが、それ、褒めてませんよね?」
「いやいやいや、これは俺の正直な気持ち。俺なんてどう?ベンチャー3社上場させてるし」
「すみません、セロリ食べられない人は無理なんです」
笑顔で断る。さりげなく、きっぱりと。
言い寄ってくるのは、決まって【キラキラ系ハイスペナルシスト】か【オラオラ社長】。なぜか“こいつには俺がふさわしい”と確信してる男たちばかり。
一方で、彼女が魅かれるのは、古書店でレシピ本を立ち読みしていそうな、眼鏡の地味系男子。しかし、声をかければ
「すみません、ぼ、ぼく彼女いるんで!」
「これ……ドッキリじゃないですよね?カメラどこですか?」
「どこかの宗教か……スカウトですか?」
――恋の第一歩すら踏み出せないまま、36歳。周囲は「完璧すぎるがゆえに男が近寄れない女」と呼んだ。
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